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コミュニティバスカバー率100%導入への道のり

こんにちは。総長と、ばくちくです。
2人ともナビタイムジャパンで、バスデータの開発を担当しています。

2021年3月2日(火)、ナビタイムジャパンは全国のコミュニティバスカバー率100%を達成しました。

2018年1月の路線バスカバー率100%に続いての達成です。これまではバスデータがなく徒歩経路でしか案内ができていなかった場所も、最適な案内が可能となりました。

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そこで今回は、コミュニティバスの100%導入までに、我々がどのようなことを行ってきたのかをお話します。

コミュニティバス100%導入のはじまり

2018年1月に路線バスカバー率100%導入を達成し、全国のバス経路を提供することができるようになりました。しかしながら、社内のバス路線有識者が「バスだけで移動する全国縦断マップ」を作成しようと試みたところ、ところどころ経路が繋がらない箇所がありました。
そこを埋めることができるのが、コミュニティバスでした。

コミュニティバスは、バス事業者が自立運営する路線バスとは異なり、市区町村などの自治体が公的資金に支えられながら運営しているところが大多数です。多くは、路線バスを補完するような運行を行っています。そのため、人気観光地へのアクセスや、地域住民の生活の足(例えば、病院や市役所等へ行くための交通手段)となるような経路を運行しているものが大半です。

地域住民の方が必要とする経路を案内できるようになることで、よりよいサービスを提供できるようになるのではと考えました。

コミュニティバスカバー率100%に向けた動き

まずは調査から

路線バスデータを導入した時は、国土交通省提供の一覧データを母数としました。今回のコミュニティバスは、国土交通省提供のコミュニティバス一覧データと総務省が提供している、全国市区町村リストを参考に、各自治体が運営・管理するコミュニティバスの有無を調査しました。

全国の自治体のHPをひとつひとつ確認し、バスについての記載がない場合は自治体に直接電話をかけて調査を行いました。

100%とするためには、まず母数を知る必要があったのです。

データを集める

コミュニティバスの存在が分かっただけでは、まだ始まりません。
何よりもまず、バスのデータが必要です。そのために、各自治体と契約を結び、主に下記の3つの方法でデータを集めました。

1. HPに掲載されている時刻・運賃データを利用
2. 各自治体が管理しているエクセル等の時刻表データを利用
3. オープンデータを利用

我々エンジニアだけではなく、弊社の営業担当からも粘り強く自治体にお願いすることもありました。その結果、県単位でデータをご提供いただけたこともありました。

ー集めたあとも…

データは日々変化します。
初回に提供いただいたデータや、チェックしたHPも、ダイヤの改正やイベント・工事などによる迂回運行、臨時ダイヤなどで、常に変化する可能性があります。

そのため、日々、各自治体のHPをチェックして、更新を検知できるようにしています。

また、ダイヤに大きな変更が発生しやすい4月、10月改正、お盆・年末年始の時期に近づくと、全国約1600社にダイヤ改正有無について一斉アンケートをお願いしています。それにより、なるべく事前に対応できるようにしています。

ー最後の1年では

本取り組みを始めた際に、コミュニティバスの運行状況に対する調査を完了していましたが、2020年に再度、一斉調査を行いました。対象は初回調査の際に『コミュニティバス運行なし』とした自治体です。

最初に調査を行ったのは2018年。
2年経ったことで、新たにコミュニティバスが運行開始された自治体の存在を確認する必要がありました。カバー率100%達成した今でも、定期的にコミュニティバス運行有無の調査は続けています。

データ作成は容易ではない

バスデータは、全国の自治体から様々なファイル形式で届きます。Excel、PDF、CSV…。さらにExcelと言っても、時刻の記載や、運行日の表現方法など、フォーマットも各自治体で異なります。

ですのでこれら多種多様なフォーマットを、ナビタイムジャパン独自のフォーマットに変換する対応を行っています。
現在、自治体が1,170市町村、路線バス515社とお取引がありますが、全てとはいかないまでもこれだけのフォーマットの種類が存在しています。

近頃では、公共交通機関データのオープンフォーマットであるGTFSといった共通フォーマットが広まってきており、従来のエクセル等の形式からGTFSに切り替える自治体も増えてきています。
共通化されることで運用は少しずつ楽にはなっていきますが、全体数から見るとまだまだ独自フォーマットが大半を占めています。

ダイヤ改正対応の際は、何十社、何百社のダイヤ改正がある場合もあります。弊社では担当を決めているわけではなく、誰でもどのデータの取り扱いができるような仕組みにしています。

とはいえ、メンバーによってはデータの取り扱いに慣れている会社があったり、改正日までに日数が少ない場合は経験の深いメンバーが対応したり、フレキシブルに対応できるようにしています。

逆に経験の浅いメンバーには規模の小さい改正対応をお願いするなど、都度改正日に応じた最適な優先度付けや最適なメンバーへの割り振りを行う必要があります。しかし、先程お話した通り自治体が1,170市町村、路線バス515社の数があるので、担当者が全てを把握するのはとても難しいです…。

ではこの課題をどのようにして乗り切ったかのでしょうか。(この話はとても長くなりますので、また別の記事で紹介します。お楽しみに!)

様々な運行パターン

また、バスの運行パターンも各自治体で異なります。
例えば運行ダイヤに関しては、

・全日同じダイヤで運行する路線
・平日/土曜/休日の3パターンに分かれている路線
・月水金曜/火木土曜/休日の3パターンに分かれている路線
・ある施設の開館/休館日に合わせて運行する路線

など、様々なパターンがあります。
ダイヤ改正日前後で、このパターンが変更になる場合もあるため、期間ごとに正確なダイヤパターンを把握しておく必要があります。

時刻表の表示方法も、毎度毎度、試行錯誤しています。
別の路線同士でも【同じ経路を運行している区間】については、1つの時刻表に表示した方が分かりやすいのか…、【同じ停留所でも異なる方面へ向かうもの】は分けた方がいいのか…、【経由違いの系統】はどの停留所を、経由地として表示するのが適切か…。

データに、それら情報が含まれている場合には問題ないのですが、ない場合には各自治体のサイトを参考にして検討します。

検証もしっかり!

ナビタイムジャパンでは鉄道のデータも扱っていますが、鉄道は商用の電子データがあり、全国分一括で購入することができます。ですが、バスは全国分のまとまった商用データは存在しません。

『データを集める』でも少し触れましたが、バスのデータは基本的に全国のバス事業者、自治体の皆様と契約を結び、ご提供いただいたデータを利用しています。しかし、元は商用データではないものをサービス化する為、念入りな検証が必要です。

検証時やデータ作成時に、気になる点が出てきた際はメール、電話で各自治体や企業に問い合わせを行い、確認しています。

どんなときに確認を行うかというと、例えば『新設されるバス停の、詳細な位置』が不明な場合です。

直接、バス停位置情報の資料を頂くこともあれば、弊社であたりを付けた地図の画像に、自治体にご確認いただきプロットしていただくこともあります。

より良いサービスを提供するために、バス事業者や自治体と相互協力・連携を行っています。

おわりに..

コミュニティバスカバー率100%を達成しましたが、これで終わりではありません。高速バスやフェリー等、その他交通機関の網羅率も上げ、より便利で、より迅速に最新の情報提供ができるサービスを目指します。

私たちはこれからも、バス事業者様、自治体様と相互協力・連携し、ナビタイムにしかできない現実に即したユーザー体験を実現出来るように引き続き精進して参ります!