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ナビタイムジャパン社員が住みやすい駅を分析してみた

はじめに

こんにちは、とうきびです。
ナビタイムジャパンで地点検索システムの研究開発を担当しています。

私は、検索チームとして「どのような地点が、どこに存在しているか」を示すデータ(地点データ)に日々触れてきました。
地点データとは、名称や住所、また緯度経度などを含む地点の詳細情報です。
この地点データを集計・活用することで「地域ごとの特色」を表すことができるのではと考え「生活指標データ」というものを作ってみました。

今回、「生活指標データ」を活用して、ナビタイムジャパンの社員が住みやすい駅を分析してみた結果、社内でまだ話題に上がっていない魅力的な駅をたくさん発掘することが出来ました。

生活指標データから「生活しやすさスコア」を算出する

「生活指標データ」は、主に駅を基準にして、コンビニや飲食店といった生活に欠かせないお店などの「周辺施設」、駅周辺の平均賃料や平均徒歩分数といった「物件特徴」、また駅の列車情報や始発有無などの公共交通情報などを数値化しました。

その上で「生活指標データ」に勤務地までの所要時間や乗換回数などの「通勤通学」を加味した情報を、「生活しやすさスコア」としました。

所要時間や乗換回数などの移動コストの計算は、ナビタイムジャパンがもつ経路探索技術で得意とするものです。
単にその地域の特徴に絞って住む街を選ぶよりも、実際の最寄り駅から職場や学校への移動をうまく予想に組み込んだ推測ができると予想できます。

「周辺施設」においては、利用者の好みに合わせて算出できるように自由度を持たせることで、より一人一人の主観的な感覚に沿った「生活しやすさスコア」を作成できるようにしました。

なお、駅周辺の「物件特徴」は、株式会社LIFULL様のLIFULL HOME'S PRESS調べ(2023年8月掲載)のデータを利用して、「生活しやすさスコア」に加味しております。

生活しやすさスコアの仕組み

このようにして、生活しやすいとは何かを分解し、様々な角度から街を数値化して比較をすることで、「生活しやすさスコア」として要望にあった街を可視化できるのではないかと考えました。

ナビタイムジャパン社員が住みやすい駅を分析

今回は例として、 ナビタイムジャパンの社員がどの駅に住めば、生活や通勤に適しているかを分析してみます。

ナビタイムジャパンのオフィスは、現在東京メトロの3路線が通る表参道駅と外苑前駅の間にあります。

ナビタイムジャパンの所在地

当社社員の通勤状況を見てみると、東京メトロと直通していて表参道駅に乗換無しで到達可能な、東急田園都市線や小田急小田原線の利用者が特に多い印象があります。
利用するユーザー像は、当社に新しく入社する社員を想定しました。実際、先輩社員にどこに住めばいいか相談している姿を毎年見かけています。

今回調査をする上で、軸を以下のように設定しました。

調査するための軸

  • 人属性

    • 20代

    • 1人暮らし

  • 出勤

    • 通勤時間は30分~60分

    • 乗換回数は1回まで

    • 最寄り駅までの平均徒歩時間が徒歩5分まで

  • 家賃

    • 1人暮らし向けの部屋で6万円~10万円

  • オーダー

    • 最寄り駅に、複数のスーパー・コンビニがある

この軸を「生活しやすさスコア」に落とし込んで分析を行います。

「通勤通学」については、各駅から表参道駅までの通勤時間帯の経路探索情報を参照します。
そこにLIFULL HOME'S PRESS調べ(2023年8月掲載)から取得した、各駅の平均家賃情報と平均徒歩時間も加えた4つの要素に対して、それぞれ5段階評価をつけて合計点数を算出しました。
また、周辺のスーパー・コンビニの条件においては、各駅からの周辺探索の結果をもとに加点を行いました。

この結果から、調査する軸の条件に該当する駅を抽出して、ランキングに落とし込みました。

分析結果

分析した結果、トップ10は以下のようになりました。

  1. 中井駅(西武新宿線・都営大江戸線)

  2. 新板橋駅(都営三田線)

  3. 赤土小学校前駅(日暮里舎人ライナー)

  4. 新桜台駅(西武有楽町線)

  5. 東海神駅(東葉高速鉄道)

  6. 落合駅(東京メトロ東西線)

  7. 戸越駅(都営浅草線)

  8. 青物横丁駅(京急本線)

  9. 緑が丘駅(東急大井町線)

  10. 新三河島駅(京成本線)

一見すると、あまり知名度が高くない駅が多いかもしれません。
いずれも「物件特徴」の観点である平均家賃や通勤通学の観点である会社までの所要時間においては、東海神駅の所要時間を除いて大きな差はありませんでした。
しかし、物件が最寄り駅まで近い駅を条件にしたことで、「物件情報」の平均徒歩時間が短い、住宅街に接した駅がランクインしたと考えられます。
必ずしも接続はしていませんが、徒歩圏内に他の駅が存在することも、共通点としてあります。これが「周辺情報」のスコアを押し上げているようです。
その上で、トップ3の赤土小学校前駅、新板橋駅、中井駅について、街の特徴を確認するとともにランクインした理由について考察したいと思います。

トップ3から表参道駅までの経路

3位 赤土小学校前駅(日暮里舎人ライナー)

赤土小学校前駅は、新交通日暮里舎人ライナーにある駅で、JR山手線西日暮里駅から1駅のところにあります。
ナビタイムジャパンまでは、日暮里舎人ライナーから1駅で西日暮里駅で乗り換え、東京メトロ千代田線で約30分の通勤が可能です。

赤土小学校前駅のある荒川区東尾久は、隅田川の南側に位置する起伏の少ない平地です。
駅前は尾久橋通りという幹線道路が整備されていますが、高層ビルは少なく、路地を入ったところには全長300mの尾久銀座商店街があります。都心に近く閑静な住宅街であることが特徴です。

2位 新板橋駅(都営三田線)

新板橋駅は、都営三田線にある板橋区の駅です。
ナビタイムジャパンまでは、神保町で半蔵門線に乗り換えることで、こちらも約30分で通勤が可能です。
JR埼京線板橋駅が近くにあり、三田線に運行状況がある場合の代替移動手段として通勤することも可能です。
東京駅や羽田空港駅方面へは三田線、池袋駅や渋谷駅へも埼京線で1本で移動できます。

新板橋駅周辺は、かつては中山道第一宿の板橋宿があり、現在も旧中仙道沿いは商店街として形を残したまま栄えています。そのためスーパーや飲食店も多く、買い物には困らない点が魅力です。
駅北側には桜並木のある石神井川が流れており、公園も多くお散歩にも適しています。

1位 中井駅(西武新宿線・都営大江戸線)

1位は都営大江戸線と西武新宿線の2路線が通る中井駅でした。
ナビタイムジャパンまでは、都営大江戸線で青山一丁目で乗り換えて、銀座線で外苑前または半蔵門線で表参道まで移動ができます。約25分の通勤が可能です。
また、西武新宿線を使うと高田馬場駅まで各駅停車で2駅、新宿にも10分で移動可能です。

中井駅は新宿区の北西部にあります。駅の真上には山手通りという幹線道路が整備されている一方、一本奥に入ると昔ながらの町並みが形成されています。
駅の南側には商店街がありコンビニや小規模のお店が軒を連ねています。
北側は高台になっており、かつては高級住宅地として分譲されていた地域になります。現在は緑が多く沿線の発展と共に宅地化されたエリアになっています。
都心に近くも駅を中心に賑わいと静けさが揃う街であることが、1位になった理由かもしれません。

まとめ

分析をしてみて、データの新たな活用方法を見出すことが出来ました。
調査する軸を変えるだけでも異なる駅を結果として表示することができて、首都圏の街が多種多様であること、異なる地域の街でも共通点があることがわかりました。

この情報を用いることで、身近なところでは引っ越し先の検討や週末のお出かけ先、更に細かくすると新規出店先の参考情報やまちづくりの戦略組みといったところまで活用できるのではないかと考えています。
今回は考慮する情報をかなり絞って分析していましたが、列車の混雑情報や車移動など、ニーズに合わせた付加価値を考慮することで、より住みやすい街を分析できると実感しました。

引き続き、生活しやすさをより豊かに表現できるように、研究を進めていきたいと考えています。

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