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文トレDAY47 15-どんな・どんな・どんな

T社で2年が経過していた。風の噂でTEが倒産したことを知る。
台電社は、TEの取引先だったので、辞めてから顔は出していなかったが、台電社の浜友さんから連絡があった。
「ちょっと相談に乗って欲しい案件があるんやけど・・・」
打ち合わせは、設計事務所で行われた。
「カラオケができるステージとちょっとした舞台照明があるパブのような・・・」
なんとなく的を得ていない。
 「ステージでショーみたいなことはするのですか」と私。
「カラオケを歌われる方のためのちょっとした演出照明と考えてプランします」

台電社は、一般照明のメーカーである。一般照明は、使われる箇所が一般的に認知されている箇所に設置されるので「一般」照明というのはないだろう?ふと、話をしていてそう思った。

その照明器具を使う箇所が、店舗の陳列ケースを照らすのか?レストランのテーブルに置く料理を照らすのか?
建築事務所から来る平面図や立面図、パースなどを見れば、おおよその用途の判断はつく。
こういった使われる用途が「一般的」なものを取り扱っていると、平面図と立面図と建築パースがあれば、説明の必要がない。見れば明らかだ。それで照明計画ができてしまう。

少々乱暴かもしれないが、一般照明の計画の基本は、図面から読み取ることができると思う。

舞台照明は、その感覚では全く通用しない。
箱(ホール)があっても、ショー(演目)の内容によって違ってくる。
どこに演者が立って、どんな衣装を着てどんな演技をするのか?
そのシーンは、どんなシーンで・・・どんな、どんな、どんな。
たくさんの「どんな」が見えないことには照明のデザインができない。

当時の私は、そこまで一般照明と舞台照明にこれだけのデザインするための情報の差があることに気づいていなかった。少し気づいていたとしてもおそらく言語化することができなかったであろう。(これも、タイムマシンがあれば、私は当時の私に伝えに行きたい。)

仕事が欲しい時、人間はどうなるか? 相手の気持ちを害さなように、丁寧に対応する。多少まちがっているなぁと思われる意見でもリスクが回避できるのであれば受け入れる。うだうだ書いたがイエスマン化してしまうのだ。

この時期、T社の大阪営業所は、売上を上げないいけないという社内的な雰囲気のあり、あまり突っ込んだ質問は控えた。

プランを書くには書いた。がしかし、
「これやー!」
みたいなお客様を強烈に惹きつける力を正直私は感じなかった。

「これやー!」の補足
お客様は、だいたい、やりたいことを明確に言ったり、絵に書いたりするのが苦手であることが多い。オリエンテーションで成果物をいただいたとしても、その物を望んでいない場合もある。
そのもやもやっとしたなかでお客様が望んでいることは「これかなぁ?」とことがつかめないと、プレゼンにならない。
「これかなぁ?」がわかればそれを解決する。
「これかなぁ?」の見つけ方は、お客様を観察するところから始まる、これもどんな、どんな、どんなのオンパレードだ。どんな服を着て、どんな店舗を運営して、どんな世界観をもっていて。・・・・どんなが多いほど。
「お客様に相応しいものは何かが想定できるようになる」

これかなぁ?という答えはお客様にとってふさわしいものの中にある。

「これが望んでいたものだ」
とクライアントが思えるようなものを提案するのが
プレゼンだと思う。


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