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文トレDAY68 39-セミナー編(4)PEEK STATE

その10時間前。

私は、コンベンションホールの中にいた。さ、寒い! 外はTシャツでもOKだったが、中はダウンが必要な感じだ。轟音のロックが流れている。ステージにはアンソニーロビンスのボランティアスタッフ数名がダンスを踊ってる。それに合わせて、観客席にいる参加も総立ちで同じような動きをしている。「SUPER HIGH TENSION」唐突にこの言葉が頭に浮かぶ。

昔、ディスコの照明の仕事はしたことはあったが、客としてお店に行ったことはほとんどない、ほとんどの参加者が踊っている中で一人だけぽつんと直立不動でいると返って目立つかなぁ?壊れたロボットのようなぎこちなさで音楽に合わせてステップを踏む。誰かに見られるとカッコ悪いという羞恥心がそうさせるのだが、今だから言えるが踊っている人は、他の人のことは全く見えてない。仮にそこで水着になったとしても気づく人はいないだろう。

延々とこの「ダンスタイム」がある。ここでさっきの「寒い」理由がわかった、ダンスを延々すると、体が熱くなり汗をかく、その状態でも「ここちよく」ダンスができるように、場内の気温を下げているのだ。会場のバックヤードには、冷房装置を搭載した専用の車とその電源を供給する電源車があった。後で聞いたのだが、講義中「寝ない」ようにするためと「集中」するために場内の気温を下げているのだそうだ。それにしても日本人にはこの気温は寒かった、温度計が場内になかったので正確にはわからないが、20度を割っていたと思われる。

音楽が体に心地よい刺激を与えてくれる。30分もしないうちに、私の体はアメーバーのように順応しつつある。体の一つ一つの細胞が音楽に反応しているようだ、場内に入って1時間が経過していたが、それを「長い」と感じなかった。これから何が起こるのだろう?
「きっと何かが自分を変えさせてくれるに違いない。」そのとき、私はそう確信した。

「きっと何かが自分を変えさせてくれるに違いない。」とは、まだよくわかっていない時の私の発想なのだ。

でも、ここに来たことで私は、少なくとも、多くのことを学んだと思う。
ここまで書いて学んだという言葉に違和感を感じた。

学んだっていうのは、正直どうでもいい! 知識をつけるだけの体験であったなら、私はこの時払ったお金の価値の10パーセントしか持ち返っていなかったことになる。
今私がこの文章を書かなかったら、「UPWに行ったことがある」という体験の話として、この当時一緒にファイヤーウォークをした仲間と「昔話」の1ページとしての話題になるだけだ。
「ハワイのマウイ島に行ったことがある」と言うのとなんら代わりがないレベルの話になってしまう。
それでいいのだろか?

話をもどす。

アンソニーロビンスが登場した。ホールはあちこちから聞こえる歓声が轟音となり、鼓膜を刺激した。

自分にとって新しい出来事が数多くあるとき、その刺激の多さで脳が疲労し、本当に必要な情報を見極める力が損なわれてしまう。

これは、いま即席で浮かんだ「名言?」だ。そう言えば初めての海外でイギリスに行った時もこの感覚だった。

慣れない海外。英語。新しい環境。香り。音。気温。外人。外人。外人。ハイテンション。

2日前の日本にいる環境と同じこと言えば、重力ぐらいだ。
私は情報(刺激)の洪水の中にいた。

ステージはフロアーから1メートルぐらいの高さの位置にあり、参加者は、皆同じフロアーにいる。私がいる場所からステージまでは、20メートルぐらい離れていたが、アンソニーロビンスは巨大だった。事前情報が彼を大きく見せたのかも知れないが、ほんとに巨大。この後私は、合計4回海外に行きアンソニーロビンスのセミナーを受けるのだが、その時握手する機会があった。その手は野球のグローブのようだった。

登場していきなり講義がはじまるのか?と期待したが、違った。
アンソニーロビンスが踊っている。

長いダンスタイムが一旦終わりアンソニーロビンスが喋り始めた。
いままでとは全く異なる静寂な空間、咳払いをするのも憚れるほどだ。参加者の気持ちは、アンソニーロビンスの言葉にフォーカスした。

英語はよくわからないが、言葉にキレがあり、わかりやすい表現と、凄まじい熱意を感じる。意味は分からないが、凄まじいエネルギーを感じる。アンソニーロビンスのトークはリアルタイムに日本語に翻訳され、ワイヤレスのヘッドセットから聞こえてくるが、直接この英語を理解できるようになりたいと思った。

このセミナーのスタートが午後2時。それから午後11時までの9時間ほど、アンソニーロビンスは一切休憩の時間とらない。自身のピークステイト「PEEK STATE」の状態を維持するためであると言う。並外れた体力とパッションの持ち主であることを再認識する。こんな人がこの地球上にいたなんて、それも同じ空間で同じ空気を吸っている。なんかその状況に感動した。

壇上に恐怖を克服できず、死の選択からのがれた中年男が肩を落とし。アンソニーロビンスの公開セッションを受けている。見るのも辛い。
セッションをすること、わずか10分の間にその人の顔がみるみる変わっていくのがわかる。まるで魔法をかけられて閉じ込められていた檻の中にいたその人のピュアーな心を檻を破って解放したように見えた。

すごい!すごすぎて、他の言葉がみつからない、感動で涙がでる。

講義、ワークショップ、ダンス、ハグタイム、ダンス、講義、時々セッション。筋書きなしのノンストップ。

DAY1のメインコンテンツは恐怖の克服だった。

わずか、9時間の間にアンソニーロビンスは数千人の参加者全員にPEEK STATEの状態を体得させる。

そして、FIRE WALK。

この物語は、今から、数十年前に、UPWに行ったことを思い起こしながらできる限り忠実に書き起こしたものだ。
そうすると、不思議なもので、書き進めるうちに忘れ去られていた当時の感動や感覚が鮮明に脳裏に甦ってきた。それを頭や心から消えないうちに丁寧に丁寧に味合いながら見ながら書いていくことができた。

過去をこんな形で顧みることは、私自身の心の旅のようである。

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