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時間という調味料 アーモンドの塩炒り

煮込んだり、漬け込んだり、日干ししたり。時間や手間のかかる調理法で遊んでいる。おうち時間が長くなるとちょくちょく様子を見にいくことができ、焦れったい半面、愛着がわくし面白い。そういえば、時間がかかるといえばこれも、と手を出したのが塩炒り調理。

用意する材料はお好みのナッツを好きなだけ。
ピーナッツ、 ヘーゼルナッツ、 カシューナッツ、マカダミアナッツ。
クルミは形が複雑だし、油分多めで焦げやすいので難易度高め。でもその分、炒った香ばしさが格段に美味しいから悩ましい。今回はアーモンドをチョイスした。

用意する道具はフライパン。もしかき混ぜたければ木べらか菜箸。軽くゆするだけでも十分間に合う。
十数分は台所に缶詰めになるので、椅子があると疲れず良い。飽きないように音楽をかけてもいいかもしれない。

準備も整い、鼻歌なんか歌いながらいざ調理開始、の段で注意がある。
ザザザッ!などと ナッツの袋をフライパンに逆さに開けるような乱暴は、絶対してはいけない。

一つ、ナッツの皮やくずはなるべく入れないほうがいい。
焦げて炭の粉になってしまうので、指先で軽くより分けるようにフライパンに並べる優しさが大切。

一つ、一度に炒るのは鍋肌が8割埋まる程度まで。
熱が均一に伝わるよう、コントロールしやすい分量を意識する。

まんべんなく全体に広げられたら弱火にかけて、あとはただただ、にらめっこ。
ちちち・・・とかすかなコンロの音に混じるチリチリ・・・という音に耳を澄ませ、焦げないようにじいっと見張りながら、五分から十分近く、ひたすらお鍋を揺するだけ。途中でパラりと塩を振り、ほんのり色づいたらお皿で冷ます。

調理、というにはシンプルすぎるくらいシンプルなのだけど、侮るなかれ、目の離せない繊細な作業で結構大変。すすす、すすす、火の当たりを変えながら、ころころと鍋肌を転がしていく。火が強過ぎればたちめんに焦げる。弱すぎてはムラになる。

見た目によらない困難と苦難を乗り越え、粗熱が取れれば幸せの味が待っている。
一度食べると癖になる。なにせ、カリッ!感が全然違う。歯を立てるとパリンッと弾けるように硬質に砕け、カリカリと軽やかに割れていく。水分を飛ばしたことで甘さが濃くなり、口に広がる香ばしさもアップする。おやつにも、おつまみにも、手が止まらない御馳走だ。

炒る(いる)とはなんてポテンシャルを秘めた調理法だろう、ボリボリナッツを貪りながらしみじみしていると、ふと「炒る」か「煎る」か漢字が分からなくなった。
炒る。
煎る。
「あぶる」であれば
炙る。炙りチャーシュー、炙りシメサバ。
焙る。これは「あぶる」、より「ほうじる」のほうが一般的かな。お茶を焙(ほう)じる、コーヒー豆を焙煎(ばいせん)する。

鍋などに入れた食材を火にかけて水分をとばしたり、ごまや豆などの乾燥品を熱してカリッとさせること。「炒る」と「煎る」に大きな違いはありませんが、「煎る」にはより熱して焦がす、の意味合いが含まれることがあります。

ほう、ほう。言葉にはちゃんといろんな意味がある。
ナッツを香ばしくさせるのであれば「炒る」で一般的なようだ。もちろんナッツ以外にも、銀杏やほうじ茶や、炒ると美味しさがアップするものはたくさんある。
ここぞとばかり、時間という調味料をふんだんに使っておうち時間を楽しまれてはいかがでしょう。

(ちなみに、手っ取り早く作りたければオーブンで焼くのも一つの手段ですが、たった10秒の違いで大惨事になってしまったのでもっぱらフライパン式を採用している経緯があります)

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