母が亡くなって(打ち合わせ終わり)

 義父の唯一の希望は、たくさんの花を入れてあげたいという事だった。

 生前母は花が大好きで、実家の庭はガーデニング雑誌に出てきてもおかしくないぐらい、季節によって色とりどりの花が咲いている。

 それを晩年は義父と二人で世話をしてた。

 スーパーに買い物に行くと、おかずを買うのを一品我慢してでも花を買いたがるとよく義父が話していた。

 だから棺には埋め尽くすように花を入れてあげたいと。

 そうしたら担当者が四カゴ用意しますね。それで大体一杯になると思いますからと話した。

 それでいいの?うちの庭で育てた花をいれてあげなくていいの?と私が思っていたら注意事項として担当者が

「お花の持ち込みはご遠慮願っているので、こちらで用意したものになりますがご了承下さいね」

 と言った。

 ああ、あれか、『カラオケボックスとかで食べ物の持ち込みを禁止する』アレみたいなものかと想像し、まぁ仕方ないかと納得した。


 式という式はしないが、火葬場へ向かう前に葬儀社に来て一通りのお別れを済ませるのが明日の12時30分という事になった。

 そのために11時までに来てくださいね、と言われる。

 亡くなった人は、法律で24時間は火葬出来ない事になっている。

 そのためその時間が、これから考えて最短になるのだった。

 後、手続きには印鑑が必要だというが、そんなものいつもいつも持ち歩いているわけでは無いのでこれもこの後、取りに戻って持ってこないといけない。


 今まで話し合ったところで、総合計がいくらになるか出してもらったところ23万だと言う。

 うおい!予算オーバーだよ。

 義父はそれで良いと言う。

 まぁ義父が良いというならいいか。

 これで一通りの打ち合わせは終わったので、この後は急いで帰って写真と印鑑を持ってきて、お金も用意しておかなければいけない。

 やはり私たちは足がないので、タクシーで葬儀社から帰った。


 その後遺影にする写真を探すために、アルバムを探る。

 意外に『顔のサイズは親指大以上』をクリアするものが少ない。

 そして晩年の写真がとても少ない。

 旅行にでも行く生活をしたのなら多少はあるだろうが、日々の生活に追われていたのだから何にも無いのに写真を撮るなんて無かったのかもしれない。

 その中からもう15年以上前になるものだが、まぁ写りが良さそうだなと思える写真を見つける。

 その写真はピースサインをしていたが、ネットで調べるとピースサインをしていても遺影として問題無いそうで、気になるならば消してくれる加工もしてくれるはずだとあった。

 ならば問題無いなと、その写真に決めたのだった。

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