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降りられない

 海の上のピアニスト(1999/アメリカ=イタリア)
  監督:ジョゼッペ・トルナトーレ 
  出演:ティム・ロス ブルット・テイラー・ヴィンス

豪華客船で生まれ、そのまま置き去りにされた主人公。その後彼は船員たちに育てられ、船から一歩も外に出ないで成長していく。

舞台が「山頂に建てられた山小屋」でなく「広大な海に浮かぶ船」というところが、我々のお伽噺心を刺激する。海は動いているので、彼のいる場所は閉鎖的だが流動的。彼はその場を動かないのに、彼を取り巻く人や風景は移り変わるのが面白い。

「海+ピアノ」という組み合わせもロマンチックで、このタイトルにソソられた観客も多かったと思う。

しかし、私はここで言いたい。

船の中とピアノしか知らないで育つというウブな役をティム・ロスが演じるというのは、いかがなものか。

人生の酸いも甘いも知っているような苦労顔。トレンチコート姿が刑事みたいなティム・ロス。

もうちょっとポワー~ンとした表情の世間知らずな坊ちゃん風俳優がよかったのでは?

笑顔が無邪気でキラキラしている人。ティム・ロスが笑っても、なんだかワケありに見えてしまうんだよねえ。

じゃあ例えば誰?と言われても思いつかないが…ユアン・マクレガーもちょっと違うし(ピアノが下手そう)。う~ん。無名のイタリア人俳優でもよかったかも。

俳優のイメージってコワイですね。つくづくそう思った作品でした。

 弓(2005/韓国)
  監督:キム・ギドク 
  出演:チョン・ソンファン ハン・ヨルム 

何を隠そう、私はギドクのファンである。なので作品は全部見ているが、その中で本当に面白かったものは少ない。

でも、見続けている。それがファンというものである。

その私が言うのだけど、この作品だけはどうフォローしてよいのやら。

粗末な釣船に誘拐してきた少女を軟禁し、彼女が17歳になったら結婚するとカレンダーに×印をつけている老人。

たまに嫉妬に狂ってその印をごまかす姿が、哀れで滑稽で、これのどこが「最後まで弓のように凛とした生き方」なのか私にはさっぱり…大袈裟な仕掛けをしたって結局のところ目的は…と思うと、力が抜ける。

「悲夢」でもちょっと予感がしたのだけど、大丈夫だろうかキム・ギドク。

でも、ハッとするような映像センスはまだ健在。

新作待ってます。

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