ピアノは私のものです
ピアノ・レッスン(1993/フランス・ニュージーランドほか)
監督:ジェーン・カンピオン
出演:ホリー・ハンター ハーヴェイ・カイテル サム・ニール アンナ・パキン
寄せては返す波の音。浜辺に置き去りにされたピアノ。言葉を発しないヒロイン。
「歌うようにピアノを弾く」という表現があるが、しゃべらないヒロインにとってピアノを弾くことは、感情表現そのもの。いや、ピアノは彼女そのもの。
だから、1本の鍵盤を恋人に贈るという行為がどれだけのことを意味するのか、その愛の深さがわかるからこそ夫は悲しみと怒りで逆上し、常軌を逸した行動に出てしまう。
自分の体の一部を削り取って渡すほどの愛。2人は言葉を交わしたこともないというのに。
写真による見合い結婚とはいえヒロインは既婚者なので、これはいわゆる“不倫モノ”になるが、そんな下世話なジャンルに入れたら失礼でしょと言いたくなる大恋愛ストーリー。公開当時の衝撃は大変なもので、その高い評価は今でも記憶に新しい。
レッスンといっても、男はピアノを弾く彼女の周りをウロウロしているだけ。それがいつのまにやら…少しずつ近づいていく2人の心。その動きがとても自然で、女性が求める愛と官能がここにあるわけですなあ。
監督が女性なだけに、そこらへんをよくわかっていらっしゃる。
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