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友達ができたんだ

モンスター(2003/アメリカ)
監督:パティ・ジェンキンス 
出演:シャーリーズ・セロン クリスティーナ・リッチ

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醜いシャーリーズ・セロンを見たくて、この映画を見た人が多いのではないか。美女が太ったブスに変身したところを見たいという見世物的な好奇心。

確かに評判通りの変貌ぶりである。外見だけでなく、体を揺らしながらそりかえって歩いたり、下品で投げやりなしゃべり方をしたり。しぐさや雰囲気も、きっとアイリーンらしいに違いない。

しかしこれが、見ているうちにだんだん息苦しくなってくるような醜さで、ここまで別人に変身してしまうと、着ぐるみを着ているのに近い。

なので、シャーリーズ・セロンが出てくるたびに「これがあのシャーリーズ・セロン?」「よくここまでやったなあ」などと思ってしまい、映画そのものにあまり集中できなかった私。

人体改造も鑑賞のジャマになる場合があるので、良し悪しである。

また、公開とほぼ同時に「モンスターと呼ばれた女」というドキュメンタリー映画が公開されたことにより、「やっぱり、本物のインパクトには叶わないよね」と思わないでもなかった。

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じゃあ、なんで私はこの映画を見たのか?

そりゃ、クリスティーナ・リッチを見たかったからに決まっている。

モンスターを愛して、一緒に暮らした女。

連続殺人を犯した娼婦アイリーンよりも、その女と恋人関係にあった普通の女の方が、ずっと興味をそそられるってものだ。またそれを、クリスティーナ・リッチが演じるとなれば、ますます期待大。

で、やっぱりうまいね。クリスティーナ・リッチは。シャーリー・セロンの話題性の陰に隠れてしまったけど、役割的には「静」の部分を担っているこの役は、一見地味なだけに難しいと思う。

黒髪のショートカットに童顔とちっこい体が、年齢不詳でやらしい~。「お腹が空いた」って、ご飯を飼い主にねだる猫みたい。純粋で弱くて残酷で、愛くるしい黒猫だ。

彼女は、今の生活から自分を救い出してくれる王子様を待っていた。それが、アイリーンだった。アイリーンにも、それがわかっていた。アイリーンが恋人(クリスティーナ・リッチ)の肩を抱きながら、いばって店に入っていくシーンが妙に忘れられない。

でも何が怖かったって、アイリーンが「娼婦をやめて獣医になるのはどう?だって私、動物が好きだし」と本気で言うところが、殺人やレイプシーンよりもゾッとした。

このトンチンカンなところが、哀れを通り越して泣けてくる。

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ところで、アイリーンのあの下着をどう解釈すればいいのだろう。今時の小学生でも着ていないような、上下お揃いのシンプルな白ブラとショーツ。

下着はその人となりを表す重要な小道具なので、いかにもなセクシー下着でもしらけるものの、ああいう人があんな下着を着るかなあ。もらったのかなあ。拾ったのかなあ。

でももし、あの下着で彼女の純真さを表現していたのなら、それはそれでまた複雑な問題が発生すると思う。

それとは別に、トイレで体を洗っておめかしするこのシーンが、とっても可笑しくて、とっても哀しかった。

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