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必ず迎えにくるからね!

ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂想曲(2014/ハンガリーほか
監督:コーネル・ムンドルッツォ
出演:ジョーフィア・プソッタ

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犬たちの声が聞こえた。本当だよ。

雑種犬だけに重税が課されるようになったブタペストを舞台に、その悪法によって飼い主の少女と引き離された犬が、保護施設に囚われていた犬たちを従えて人間たちに反乱を起こすという物語。

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最初はかわいい少女と犬の心温まるストーリーかと思いきや、途中から予想もつかない怒涛の展開となり、落としどころがどうなるのかとハラハラし通し。ただでさえ珍しい東欧映画の中でも、これは異色のドラマだと言ってもよい。

とにかく犬たちの自然な演技?に目が釘付け。自分を捨てた主人を信じて待っている時の健気な姿。うなだれて街を歩き回り、やっと出会った人間に虐げられた時の哀しみ。その無念さ。

犬好きなら胸がつぶれる。

だからいいよ。やっちまえ!人間どもを噛み殺せ!

やがて彼らの抑圧された怒りが大きな塊となり、一気に爆発する終盤は恐怖というよりもカタルシスだ。

ちなみにCGは一切なし。だからこそ、人間たちが犬軍団に踏みつけられ、追いかけられ、恐怖におののく緊張感と迫力たるや、ああ久々に映画を見たという気分にさせられて心地よい。

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楽団でトランペットを吹いている少女が愛犬のそばでよく練習していたのは、リストの「ハンガリー狂詩曲第2番」だった。そして映画の中で繰り返し流れるこの曲が、物語の重要なカギとなる。

暴徒と化して疾走する犬と狂詩曲の切ないメロディが交差しながら、街は夜明けを迎える。権力に抑圧された者たちの救いはどこにあるのか。

静謐なラストシーンには身じろぎもできない。カンヌ国際映画祭でグランプリとパルムドッグ賞をダブル受賞した名作。



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