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女になるって楽しい?

トランスアメリカ(2006/アメリカ)
監督:ダンカン・タッカー 
出演:フェリシティ・ハフマン ケヴィン・ゼガーズ

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すまん。タイトルを「トランクスアメリカ」だと思っていました。おまけに、主人公を演じているのが男だと思っていました。「体は男で中身は女」という方がヒロイン(?)だってことしか知らなかったので、こういう勘違いをしたものと思われます。

ま、映画を見る前の私の予備知識なんて、しょせんこの程度。なるべく先入観なしで映画を見たくて意図的に情報をシャットアウトしているせいか、キャストさえよく知らない時がある。もし映画館で、これから見たい映画の予告編がかかったら、目をつぶるもん。

でもこの映画に関して言えば、「主人公を演じているのは本物の男」だと思われたのは大成功では?

ちなみに実際に演じているのは、れっきとした女優です。その点が画期的だ。

また、美しいドラッグクイーンやミスターレディではなく、なんというか、こういう外見が地味なオバサンタイプのトランスジェンダーが主役の映画は、今までなかった。そういう点でも画期的。

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ところで、彼女がオバサンに見えるのは、恥ずかしがり屋で自意識過剰なので、店で女性の服を買うことができず、通販で流行おくれの服を購入しているからだそうで、そうか、それでか、と納得したのだけれど、でもそんなこと、映画を見ている限りではわからんよ。少なくとも私には、わからなかった。

通販でしか服を買えないほど、人目を気にして生きている主人公。これって、彼女を理解する上でけっこう重要なポイントだと思う。でもそういうことかパンフレットで監督のインタビューを読まないとわからないなんて、まあよくあることだけど、ちょっとヘンだよね。

突然息子の存在を知らされた彼女が、自分の素性を隠してその子に会う。隠しているのは、自分が男であることと父親であること。

つまりウソが二重になっているという複雑さが、物語をより深くしている。

もちろん、ウソはいつかバレる。問題はそのバレ方だ。

その事実を息子がどう受け止め、この親子はどうなっていくのか。何しろ主人公は、もうすぐ手術をして身も心も女になろうとしているのだから、ハラハラするわあ。

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ところがこの映画は、予定調和的な展開をしていかないのよ。途中で主人公の実家に2人で身を寄せるあたりから、別の意味でドキドキ。最後の最後まで、彼らが現実とどう折り合いをつけていくのか、落としどころがわからない。

でも見終わった後、「いい話じゃないの」と思う。そして、この親子がちょっぴりうらやましくもなる。

男でも女でも、親は親。きれいごとはなし。

またもう一方で、主人公と両親の関係にも触れているのがいい。

注目すべきは、トランスジェンダーを息子にもった母親だ。子を想う気持ちは同じだろうに、その苦悩と葛藤が、なんでこんな滑稽なことになるのかなあと思ったりもして、しょせんはその人の器次第ですかね。

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でもまあとにかく、「男」であることがバレたシーンが、わたしゃ今でも頭から離れません。

このシーンを撮るにあたり、「そんなこと、できないわっ!」って主演女優が泣いたらしいじゃないの。映画史上こんなにショッキングな映像があっていいのか!笑えたけど(映画館でも笑いが起きました)。

そういうところも、必見!

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