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ボイストレーニングの問題点と難しい点

日本のボイストレーニングにはいろいろ問題点があります。近年はそれを分かってきた指導者が少しずつ増えてきているので、進化していると感じますが、レッスンを受けたい人、受けている人、トレーナーになりたい人、やっている人には読んで欲しい。考えて欲しい。

まず、日本のボイストレーニングは歴史的には戦時中のドイツの声楽指導を取り入れた事。当時の軍隊式の発声指導と相まって「腹で支えろ」式の腹式発声は、腹筋を固める事だと勘違いした間違った常識が定番レッスンになってしまった。2000年代前半までは、ボイトレと言えば「腹筋がちがち」みたいかナンセンスなレッスンが普通でした。答えから言うと腹直筋上部を固めると横隔膜が動かなくなりさらに声帯の柔軟性を失います。

それと、演劇系の発声指導でありがちな「声を前に飛ばせ!」という言葉。表現者としてイメージ的には間違ってないけど、それを聞いた生徒達の首は前に突き出て喉声で熱演熱唱。声が大きくても怒鳴り声では聴きづらいし、歌も歌えなくなるし、勿論そんなのプロの声ではない。

それらの間違った日本のボイトレの常識のせいで、むしろ指導をあまり真剣に聞かずに、気楽に楽しく歌っている子の方が歌が上手くなる事がしばしば見受けられた。そのせいで90年代の音楽プロデューサーなどは「歌は才能ないやつがいくら練習しても無駄だ」と言っている人も実際多かったです。僕がボイストレーニング研究をしていると言ったら、当初はそう言って否定された事もよくありました。

それと、もう一つの大きな問題は、日本人の日本語の作り方が、他のどの国の言語よりも声帯に近い場所の共鳴に頼っているという事実。
だから海外の発声トレーニング方法をそのまま持ってきても、日本人には合わない事も多く、結果が出ない事もよくあります。
この辺りを知らない人は、ハイウッド式とかブロードウェイ式とか、海外の有名ボイストレーナーの発声法とか、教える側もレッスンを受ける側も、さほど成果は上がらない。そのうちに段々と「なんとか式レッスン」だとかは言わなくなっていく。
これは、レッスン方法がよくなかったのでなく、日本人の発声癖や日本語の特徴を踏まえたベースになっている発声感覚や喉の位置の基本が日本語以外の国の言語と明らかに違う為です。だから、海外育ちのバイルンガルはそれだけで歌がうまかったり、音域が広かったりします。それらの事実を踏まえてレッスン方法を選択し改良していかないと、平均的な日本人の喉には成果を出すのは難しいと言えます。

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