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私のDNAは、信越トレイルのブナの森に呼ばれた

てっぺんを目指すことが楽しかった40代。
高速代を惜しむことなく、毎週山に登っていた。

そんな時、信越トレイルの情報が目に留まる。
へぇーーーーー。
ロングトレイルのことを始めて知った。
てっぺん、すなわちピークを目指すのではなく、長く歩くことを目指す。
その間には、森があり、里があり、道路を横切ることもある

その頃、信越トレイルはまだ80キロ
(今は延伸して110キロ)
4泊5日あればゆっくりスルーで完歩できる計画。

歩いてみたい!
とはいえ、常勤で有給もとれない身では、時間がない。

たまたま移住を考えていたこともあり、
仕事をやめて、信越トレイルのお膝元、長野県飯山市に移住を決めた。

紅葉の頃が一番よいのだが、フライングで紅葉前にスルーで歩く。
たまたまなのか、他に歩く人はおらず、4泊のテント場はずっと一人だった。

一人もくもくと、イヤ、時には歌いながら、
ぐにゃりと曲がったブナに感心したり、頭をぶつけたり、
空を見上げたりしながら、とにかく歩いた。

孤独。

その孤独は、都会の雑踏で誰も知らない人ごみの中とは雲泥の差。

森の中の孤独は心地が良い。

森の中は動植物の命があふれている。
そして、私という個体もそのひとつ、仲間にいれてもらった感じが嬉しくて。わくわくしながら歩いた。

歩き切った達成感は、
富士山のてっぺんに登った時の征服感でもなく、
北アルプスの山々を縦走した時の自分を認めた満足感でもなく、

信越トレイルのスルーハイクはありのままの自分が、
地球の一部になれた気がした。

以来、信越トレイルにはちょこょこ部分的に楽しんでいる。
最近では、事務局のある森の家でもバイトを始め、
なんちゃってオフィシャルな気分も味わっている。

私のDNAに刻み込まれた森は、信越トレイルのブナの森だったのかもしれない。

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