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戦えメロス! 第4話

 HPが半分になったのを見て、メロスは少し調子に乗りすぎたと反省した。そしてもうスライムをボコすのはやめて、とりあえず薬草を買おうと橋の近くにある街へ向かったのであった。橋の近くの村まで歩きながらメロスは時たま振り返り、今さっき旅たった城とそのそばにある行くのをすっかり忘れていた街を眺め、さっきまであそこにいたのに随分離れてしまったと感慨深く眺めたのだった。

 さて、橋の近くにある村、リバーサイド村とかいうありきたりの名前の村についたメロスは道具屋に行って薬草を買おうと思ったが、村の門の前に兵士が立っていたので村に入れてくれるように頼んだのだった。兵士はメロスを見てこう答えた。

「まさかレベル2でここまでくるとは!」

 兵士の感嘆に気を良くしたメロスは何故か胸を張り、ジェスチャーをしながらスライムをバッタバッタと倒しまくったことを自慢し、薬草を買いたいから早く村に入れてくれと再び頼んだ。しかし兵士は急に厳しい顔になりメロスにこう言ったのである。

「だからレベル2なのにここまで来れたのか!ここは本来レベル5以上でなければ来れぬところ。あなたはあの恐ろしいゴーストやいっかくうさぎやバブルスライムと戦ってませんな。それと、あなたはぎんのたてごとを持っていますかな?」

 メロスはいきなり見知らぬ名前を聞かされどう反応していいのかわからなかった。それでどう言っていいかわからないで黙っていると兵士が厳しい表情で、

「あなたは旅立つ時、王から何を聞いていたんですか?とにかくぎんのたてごとを持っていなければこの村の中には入れることはできません」

 と言ってきたのである。メロスはそのぎんのたてごとってなんですか?と問うたら兵士は呆れ顔で「あなた!城下の街で聞き込みしなかったんですか?」と逆に問い返してきた。メロスは何も答える事が出来ず、その場に立ち尽くしていたがパールの顔が浮かんできて、早く助けねばとこの兵士をボコして無理やり村に入ろうとしたが、何故か急に金縛りにあったように動けなくなりメロスは大人しく村から出ざるを得なかった。


 そうして再び草原に出て村の兵士の言う通り城下町に戻って聞き込みをしようときた道を戻っていったメロスであったが、もうHPが半分だったのでなるべく戦闘は避けようと気をつけて歩いていた。すると突然彼の前に見知らぬ敵が現れたのである。

「私、ゴースト今回は私から攻撃するアルヨ!」と言っていきなり攻撃してきたのだ。メロスの体をゴーストの鋭い爪が引き裂いた。メロスはいきなりこんな事するなんてひどいじゃないかと怒り、反撃する。すると怒りのおかげか奇跡的に会心の一撃が出て、ゴーストはメロスの攻撃に耐えられずその場に倒れてしまったのである。メロスはゴーストの死骸を見つめながら胸を手を当ててみた。胸から血が滲んでいる。なんだか世界が黄色くなったと思って確認したらHPが3/1間で減って閉まっているではないか。これでは城下町に戻れるかどうかさえ怪しい。もう戦闘なんてやってる暇ないと一目散にかけたらまた見知らぬ敵が現れたのである。そいつはいっかくうさぎと言った。彼はすぐさまにげるを選んで即逃げた。メロスはああ!パールを救いたいあまり自分はいろいろ手順を抜かしてしまったようだと一瞬物思いにふけりながら歩いていたが、また敵が現れたのだ。今度は最初に出会ったスライムのようにポヨヨンとしているが、頭に突起がなく、全体に緑色をしたすごく気持ちの悪い魔物であった。魔物はメロスに出会すなり叫んだ。

「いとこのスライムのかたきとるスラ!お前なんかこのバブルスライムの毒にかかってしまえスラ!」

 そしてバブルスライムは間髪入れず毒を吹きかけてきたのである。バスっとダメージが入る。もはや3/1しかHPがないのに。彼はどくろガラスの時のように逃げようとするが、魔物は一人しかいないのに『しかし魔物に囲まれてしまった』とメッセージが出て逃げられない!そして魔物が強烈な攻撃をしてきた。世界が赤くなっていく。彼は諦めず二度目のにげるを選んだ。逃げれなかったら全ては終わると思った。奇跡が起こった。彼は全力を出し切ってバブルスライムを振り切った。結構な時間が経ったのに未だ日が照ったままのこの草原の中メロスは城下町を目指してひたすら歩いていた。さっきバブルスライムにかけられた毒は容赦なく彼にダメージを与える。もう世界は真っ赤でHPは1桁だ。そしてとうとう死ぬ寸前だった。メロスはようやく城下町にたどり着いたのである。

 城下町に着くと毒のダメージは急になくなった。恐らく街や城を歩いている時だけは毒のダメージは受けないことになっているらしい。しかしメロスの頭には毒のマークが貼られ、それが彼に死の忠告を与えている。とりあえずどくけしそうをと道具屋で買おうとしたが80ゴールドもしたので買えないと諦めたが、道具屋はどくを治療するんだったら教会がありまっせと言ってきた。そしてついでにやくそうを進めてきたが、メロスは手持ちの金を心配して宿屋で体力を回復させることにした。

 教会で20ゴールド払って毒の治療を済ませ、宿屋に泊まろうとしたのだが、宿屋の主人は彼に宿泊代として5ゴールド請求してきた。
 
 メロスは二階の寝室のベッドで、下宿屋の主人が「昨夜はおたのしみでしたね」と客に言っているのを聞いた。恐らくパールとの新婚旅行はこの宿屋にも来ただろう。そして初めて二人で互いの愛を確かめ合った翌朝、宿屋の主人に「昨夜はおたのしみでしたね」と冷やかされ二人で照れながらいそいそと宿屋を去ったであろう。ああ!パールよ今どこにいるのか!暗い牢獄で僕の助けを求めて泣いているのだろうか……。


 昼に始まったパールと魔王の情交はまだ続いていた。魔王は何度もパールを激しく求め、パールも魔王の激しさに振り回されいやいやながらも叫び声を上げてしまう。魔王はその間何度もパールに同じ言葉を囁いた。

「魔呂の子供を、魔呂の子供を産んでくれ!」

 悔しいことに魔王に突かれるたびにパールの泉は溢れ、そして大きないやらしい音を立てる。パールは魔王へのせめてもの抵抗として、目の前の魔王の顔にメロスの顔を重ねた。そしてメロスとなった魔王の激しい突きにたまらず城中に響くような大声で叫んだ。

「アアーッ!イっちゃう!あなたイっちゃうーッ!」

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