見出し画像

本物倶楽部

「お願いします!僕を本物倶楽部に入れてください。でないと僕はいずれニセモノ達と同じように扱われてしまいます。信じてください。僕は正真正銘の本物なんです。僕は安いお涙頂戴物や安い恐怖などと違う心に迫る物を持っています。奴らは安いインクでできていますが、僕は血と涙でできています。お願いします!本物の僕を本物倶楽部に入れてください!」
「ハッハッハ!今時本物倶楽部に入りたいなんて殊勝な若者だね。だけどね。君がどんなに苦労して作られても、君自身が本物であるかどうか決めるのは他人なんだよ。ふむふむ君は確かに多少見どころはあるかもしれないね。しかし!君みたいなのはもう多すぎてすでに指定席は埋まってしまったんだよ。今更君みたいなものは誰も相手にしないんだよ。君がいくら本物でも他の本物で事足りてしまうんだ。まぁ残酷なことを言えば君はそこら辺のニセモノと同じようにどうでもいいものだ。いや、ニセモノの方がその安い輝きで人を惹きつけるかもしれない。そしてもしかしたらそのニセモノが本物にとって変わるかもしれないんだ。まぁハッキリ言ってしまえば本物のニセモノも永遠の価値によって決められてわけでなく時代によって、というより人の気分によって変わっていくものでしかないよ」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?