ロミオとジュリエット

 とんでもなく昔の話である。アフリカのサバンナに愛し合う恋人たちがいた。雄は毛だらけで全身真っ黒で、雌は毛が薄く至る所から地肌が剥き出しになっていた。今夜もウキー!と秘密の逢瀬を楽しんでいたが、何故かメスの方がウキーと泣き出したのだ。しかしオスにはメスが流す妙な液体の意味が全くわからなかったので、今日もメスの尻目がけてウキー!と腰を突き立てたのだった。

 その翌朝メスがフラフラと群れに戻ると、ボスと家族が並んでいて彼女が近づくといきなり殴った。メスはウキー!何故なのとボスと両親を見た。彼らは再び彼女を殴ってウキーとこう言ったのだ。
 「あんな猿とはあってはいけない!私たちはもう猿じゃないんだ!」

 猿じゃない?彼女はウキーと考えた。たしかに毛だらけで全身真っ黒な雄は私の涙を理解しないし、すぐにやりたがるし、直立歩行で歩けない。だからといって今まで問題なく付き合ってたのに、いきなり別れるなんて出来ない。彼女は群れの仕打ちに頭にきて群れから逃げだしたのだった。

 雄のところまで行った彼女は大変な物を見てしまった。なんと雄が毛だらけで全身真っ黒な猿の雌とガッツリ性交していたのである。ショックを受けた彼女は群れに戻り、群の中のナイスガイと夫婦になった。

 それから長い時がたった。あの原始人の彼女の子孫は今彼氏と一緒に動物園のチンパンジーコーナーで人気のチンパンジーのバターを見ている。このチンパンジーは彼女の遠い先祖が唯一愛したチンパンジーの末裔であった。彼も群れのチンパンジーとツガイになり子供をたくさん産んだのである。その末裔のバターは三年ほど前にこの動物園に連れてこられて芸を仕込まれた。今日も餌のバナナに釣られて必死に芸をしていた。それを見てチンパンジーを愛した原始人の末裔は爆笑しながらこう言った。
「うわぁ〜!チンパンジーって猿のくせに賢いわぁ〜!」

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