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人間国宝

 佐村太吉は人間国宝と呼ばれていた。とは言っても彼が国から人間国宝の認定をされたわけではない。というより彼には人間国宝になるだけの業績など一つもない。そんな彼がなぜ人から人間国宝と言われているのか。その理由は一つしかない。それは彼の普通の男性なら二つある玉が金どころかプラチナだからだ。

 太吉は赤ん坊の頃からこのプラチナの玉と共に生きてきた。彼はこの玉のせいでいぢめられ、そのせいで玉が憎くなりいっそ包丁で玉を取ってしまえと思ったことさえあったが、ある日ヤケクソで風俗に行ったら風俗嬢が太吉のプラチナの玉を見るなり急にキラキラした表情で彼の玉を褒め上げてサービスしまくってくれた。

 この風俗嬢だけでなく他の風俗嬢も同じようにプラチナの玉をほめていろいろサービスしてくれたので彼はひょっとしたらこの玉を女に見せつければ簡単にエッチが出来るのではないかと思い、それから道ゆく人を捕まえて自分の玉を見せつけまくったのだった。

 それから太吉の人生は激動の連続だった。彼はプラチナの玉のために幸福も味わったし不幸も味わった。玉を見せつけすぎたため彼は公然猥褻罪で逮捕されたこともある。玉に釣られた美女としばらく幸福な時を過ごした時もある。しかしその美女とは長く続かなかった。美女が包丁で寝ている彼のプラチナの玉をちょんぎろうとしたためである。太吉はほうほうの体で逃げてどうにか自分のプラチナの玉を守ったが、このせいで彼はインポになってしまいついに結婚する事はなかった。

 そうして時が過ぎて太吉は重い病気にかかり病院に入院していたがどこからか太吉がプラチナの玉を持っているという噂が広まった。恐らく病院の看護師あたりが流したのだろうが、その噂は全国に広まり、太吉の入院する病院には婚姻届を片手に女たちが押し寄せた。

 彼女たちは太吉のプラチナの玉が欲しかったのである。結婚して太吉の妻になって彼が死んだら、その玉を体から切りとって売れば大金持ちになれるはず。彼女たちはそう考えたのである。しかし太吉は誰とも結婚しなかった。彼は女というものにうんざりしたのだ。女は自分じゃなくてこのプラチナの玉と結婚したがっているのだ。彼は幼年時代に自分の玉を包丁で取ってしまおうとした日々を思い出した。ええい!今すぐ切ってしまえと彼は夜中に医務室に忍び込みメスで自分の玉を切ろうとした時だった。

 看護師が前から玉とメスを掴んで、玉を切ろうとした彼を止めたのである。看護師は彼に向かって叫んだ。

「あなたなんて事するんですか!こんな貴重な玉を傷つけるようなことをするなんて!このプラチナの玉はあなただけの玉じゃないんだ!この病院の経営だってだってあなたの玉がいるから成り立っているんだ!今もあなたの玉を求めてたくさんの人がこの病院にやって来る。今じゃ全国の人たちにもあなたの玉は知れ渡っているんだ!いわばあなたは人間国宝なんですよ!あなたはその宝の管理者なんですよ!だから玉を切り離すなんて事は許されないんだ!それは管理放棄であり国家的な犯罪だ!我々病院はあなたの玉を守るために懸命の努力をしてるんだ!だからあなたも玉を守るために最善の注意を払って下さい!」



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