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謎の生物と対話した9日間【Unity1週間ゲームジャム】

こんにちは、nattuhanです。

先日開催されたUnity1週間ゲームジャム(お題「ふる」)に参加し、
無事(2日遅れで)投稿することができたので備忘録を記したいと思います。

そしてこのnoteはゲームの内容のネタバレを含むため、
ぜひ先に遊んでいただければと思います。

むじ先生への声かけ in Team Up

上記noteに記されているTeamUpという企画に(実は)第0回から入っていたのですが、前回は(色々あって)企画内で組むことはありませんでした。

「今回こそTeamUpで組むぞ・・・!」と思っていたのですが、なかなか声をかけたりかけられたりということができず…
しかしむじさんという既に別コミュニティで交流のあった方が募集されているのを見かけ、「自分なんかが声をかけてええのか・・・?」という心の声を黙らせ、むじさんにお声がけさせていただき、無事チームアップすることができました。


u1wでナラティブを!?

さて、今回のu1wにあたり、そしてむじさんにお声がけするにあたり、
今回の自分が取り組むテーマってなんだろう?と考えてみました。

自分は毎回、何かしらのテーマを定めて参加することにしているのですが(かわいいキャラを動かしたい!登山ゲーをつくりたい!などおよそ短絡的なものですが)、
今回は「ストーリー / シナリオ / 世界観でプレイヤーを引き込むゲームをつくりたい」というテーマに定めました。

これは、いままで「ゲーム?絵がよければ・気持ち良ければいいじゃん」と半ばナラティブに相対して考えることから逃げていた自分が特に苦手とするテーマであり、
同時に開発中でもあるNOA's PROJECTというゲームでもなかなか進捗の出ていなかった箇所になります。

むじさんという様々な感じ入るゲームを作ってきた方と組ませていただくということもあって、あらためて「自分のナラティブ力(ぢから)を高めたい」という気持ちで臨みました。


”終わり”の見えない7日間

体調不良から始まった製作期間

そしていつものように月曜の0時…
お題が発表され、さあゲームを考えるぞ!というときに、自分は38度台の熱を出して寝込んでいました。
何とも間の悪い・・・季節の変わり目とエアコン、そして寝食を削って遊んでいたDiablo4が原因かとは思うのですが、結果的にお題発表後、すぐには全く動くことができませんでした。


月曜日

夜にむじさんとお話し合いの場を設けていただき、どうしましょうか…と話をしました。
色々と話す中で「なっつはん主体でナラティブ考えていきましょう」という方針を共有しつつ、
さらに「自分の妄想で・・・こんな感じのキャラが出てきたんですよ・・・」と、マウスで以下の絵を描きながら話していました。

初期ビトリさん

最初は瓶を持っていないただの溶けてる黒いタコみたいな感じだったのですが、むじさんの「(右側の人間くさいという)吹き出しがなんか一升瓶にみえる」という言葉からなんとなく手を生やして一升瓶を持たせてみました。
思いもよらないところからキャラづくりって発展するのかもしれないですね。

「宇宙、よくて・・・」「金星、なんかすごい過酷らしくて・・・」という話のタネのようなものは話していましたが、ストーリーが全然固まっていない状態で見切り発車し・・・とりあえずこのキャラと対話するゲーム・・・なのか?という漠然とした方針が立つのみに終わりました。

健康がもっともだいじ


火曜日

この日はとりあえず形におこしてみようと、
モデルとシェーダーを作ってみようというところまでやりました。

Blenderでこねて
Unityでシェーダーづくり

ここでおおよそのキャラクターの見た目を作り、
「こいつが人間くさいことを喋る・・・のか?」というところまでをぼんやり妄想を始めました。

どれ?


水曜日

ライティングのテスト

焚火もしたい・・・という思いからライトの影響を受けつつも、ディザを活用したざらりとした質感をつくりたいなあとシェーダの試行錯誤をしつつ、

タイトルイメージ  タイトルの”金星には”は説明的すぎるかなぁと除きました

タイトルに使うことになる金星は、NASAが配布してる金星のモデルデータを引っ張ってきて、視差Parallaxマッピングシェーダを書き、少し立体感があるような見た目に仕立てました。


木曜日

ディザを活かした絵作りをするにあたって、Return of the Obra Dinnを軽く遊びなおしてみました。

そして上の記事を参照し、画面全体をディザで何段階かに分けてしきい値を取りつつ、色で塗り分けるといったポスプロを実装しました。

アニメーションのテスト

なのでエディタ上でポスプロを切るとこんな感じの見た目になっています。

鮎や焚火のモデルはBOOTHで購入しました


金曜日

ボーンを入れ、モーションを仮付けしてみました。
以下のGifでは体を持ち上げるときに手がガクガクと震えていますが、のちに色々試行錯誤してBlender上のIKアニメーションUnity上の表示が一致するようなリグを組むことになります。

体を持ち上げるときに手が震えてる・・・飲み過ぎ?

そして皆さんお気づきでしょうか。
ここまでストーリーを(ほぼ)考えられていないのです!!!!!

ということを赤裸々にむじさんに相談する会を設けさせていただきましたが、この会でもあまりまとめることができず・・・
ここらへんは、「今まで苦手としてきたナラティブに向き合っている」ことが割と辛かった時間でした。

ですが、この時にむじさんにアドバイスいただいた、
「終わったときプレイヤーの内心の形がどうなっていてほしいかを考える」といった言葉は自分の中にあまりなかった視点で、ここを主軸に考えようと思えたのは今思うととても有意義でした。

・・・とはいえ、時間の取りづらい平日は乗り越えました。土日にしっかり進捗を出していきたいところです。ちなみに、この時の僕はまだ日曜日に完成させるぞ・・・という気持ちでいます。


土曜日

とりあえず対話はするだろうということで、

  • 会話のデータを再生

  • 吹き出し周りの演出

  • 選択肢

あたりの機能実装を進めつつ、シナリオの一部を書き進めました。

適当なことを喋らせてる

あとタイトルから金星地表に降り立つTimelineも作りましたが、Timelineを中途半端に使ったことが後々小さめの不具合を多く出してしまい、その修正に時間をかなり使ったため結果的にはあまりよくなかったなと思っています・・・(1回再生して終わり、ならとても楽なのですが)


日曜日

SE・環境音選び、アニメーションなどを頑張っていましたが、

ほんとはプレイヤーにも飲んでもらいたかったけど見せ方の難易度的に断念
唐突に飛び出てきて組みあがる焚火

〆切当日であるにもかかわらず、
やはりシナリオが定まっていませんでした・・・

そして再度シナリオについてお話を聞いていただく場を設け、
この会でむじさんといろいろ対話したり連想ゲームをしていただく中で、
やっとのことではありますが「こういうことを言えたらいいんじゃないか・・・?」という部分が見えてきました。

しかし20時までには当然間に合わず・・・ここからは延長戦になります。

光明が差した延長2日間

(延長)月曜日

とはいえ、何となく着地点は見えたものの、このままだと本当に一本道になりそうだったため、一応マルチEDという体を装うために簡易的な好感度システムの実装をしました。

塩対応し続けると、そそくさと寝だします

とはいえ「ゲームならではの表現ができた」とは言えない仕上がりになったので、ノベルゲームもなかなか奥が深く難しい・・・と感じます。

加えて、不足していたアニメーションを作ったり、
全体の4分の3くらいのセリフを打ち込んでこの日は終了になります。


(延長)火曜日 … 提出!

この日は仕事も半休を頂戴し、絶対に終わらせるぞ!!!と意気込みつつ昼から作業しました。
そして夜にはついにセリフを打ち込み終わり、「短編映画を観た後の読後感(観後感?)、余韻があるといいなあ」と、映画っぽいスタッフロールをつけました。
ライセンスもついでにここに載せたところ、英語の長文がなんかいい感じに見えて、こういう使い方も面白いのかも・・・と思いました。

UniRx

そしてビルドしてアップロード、バグを潰しつつアイコンを作って・・・
公開!

お疲れさまでした・・・


公開してから・・・

まだ公開してから数日ですが・・・

仕掛けとして作っていた「不気味なタイトル、謎の場所の謎の生物、でもなんとなく会話していると愛らしく見えてくる」といった部分は、意図通りに多くの人に感じていただけていたようで嬉しかったです。

加えて、ウンウン唸ってこさえたシナリオやセリフに「引き込まれた」「雰囲気がよかった」といった旨の感想コメントを多くいただきました。
これは今までの自分のゲームジャム作品ではありえなかったことで、やはり強く嬉しく感じました。今までにない種類の嬉しさです。

嬉しすぎる~

短く拙いながらも自分なりのナラティブが・・・できたんじゃないかな・・・という成功体験も得られつつ、次以降の作品でも何かしらの形でナラティブデザインに挑戦してみたくなりました。

まとめ

というわけで今回のunity1weekも楽しくも学びの量がすごいものでした。
実装面での弱さも反省点として得られましたし、次以降に繋げられるとてもよいゲームジャム体験となりました。

そして他の方の作品も遊んでいますが、急にやりこみまくりたくなるゲームに出会えたり、面白さの原石がゴロッゴロ転がっていてそれらを作者さんや他のプレイヤーと交流しつつ遊べるというなんとも素晴らしいイベントです。

次も参加・・・するぞッ!!



裏話:考えていたゲーム内設定など

名前について

”ビトリ”という名前は、硫酸H2SO4の別名であるところの「ビトリオール油(vitriol oil)」からきています。とはいえ自分は化学に明るくなく、Wikiで読んで初めて知って、これを何とか名前にできないかなとこじつけたものです。マサカリを投げ込むならここです。

初日の夜は「ビトリンだ・・・ビトリンでいこう・・・!」と考えていたのですが、翌日起きたら「なんか可愛すぎない・・・?」と冷静に思い返し、””はとられることになりました。

"ここ"はどこなのか?という話

さてビトリの名前以上にゲーム内に情報がないのは、
「ビトリやプレイヤーがいる場所は結局どこなのか?」という話です。

これはビトリに、「実はな・・・」と語らせることも考えたのですが、
陳腐かつ説教臭くなってしまう気がしたので語らないことにしました。

ですが、せっかくですので以下に自分の考えていた内容を記しておきます。

「金星には硫酸の雨が降るらしい・・・」という漠然とした知識を持っているプレイヤーは、夢の中で、金星に住む変な生き物ビトリと会話します。
漠然とした知識をもとに夢を見ているので、硫酸は地表に届きますし、硫酸溜まりには変な生物も住んでいます。
宇宙に対して漠然とした畏怖や憧れを抱えた人間の夢の中なので、根拠はともあれなんでもアリな妄想の世界です。

ビトリは硫酸で精製された酒のようなものを愛飲し、なぜか地球上の鮎のような魚の塩焼きを食べながら、その体に硫酸の雨を受けながら金星の曇り空を見上げつつ、宇宙について思いを馳せる人間くさい生き物です。


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