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ガラパンを履いていたよね。

あれは中学二年生の春。
思春期猪突猛進中。


その日は身体検査の日。

いつもの制服とは違い、
全生徒学校指定のジャージを着ていました。


測定の際に、短パン着用のルールがあり、
待機の時間は短パンの上に長ズボンを履く、
二重のズボンで過ごす子がほとんどでした。



そんな中流行った遊びがありまして、

一方のズボンをばっと勢い良く下げて、
【長ズボン下の短パンを晒す】
という少しスリルのある遊びを楽しんでいました。




脱がせたり脱がせられたり、



私含め馬鹿な男子どもは
「うぇ~い」の掛け声とともに
きゃっきゃうふふしていました。



そんな盛り上がっている輪の中に、
屈強ボディのH君が、



何も知らない風な顔をして、
わざと輪を横切るように歩いてきました。



完全なフリだと勘づく我々




位置的に丁度良いポジションにいた私は、
H君のズボンに手をかけ、
通例通りズボンを下げ、
短パンを晒そうとしました。



H君はわざとらしく、
「えっ?えっ?」
と周りをキョロキョロしています。






私はどこか物足りなさを感じました。




H君とは小学校からの長い付き合い。

彼は特に陽気で面白いキャラクターだから、
ドッキリも兼ねて、長ズボンと短パン、
二枚掴んでパンツを出してみようかな。



H君普段からしょっちゅう脱いでるし。




H君にアイコンタクトを取り、

厚めにズボンを掴んでから、
一気にくるぶしまで下げます。




「えいっ!」






パサリ…






(…)





爆笑の渦。







してやったりの顔で見上げると、




ぷりぷりのおちんちんが
目の前にありました。





おちんちん越しにH君と私。




二人は永遠と思える宇宙の中で
見つめ合いました。






H君はゆっくりとした手つきで、
パンツを腰まで上げると、
なんとも言えない複雑な表情で、
窓の付近まで静かに歩いていきました。




静かに外を眺めるH君。




(あぁ…しまった…)


私は急いでH君に謝りに行きます。





「H君ごめん!」


「そんなつもりじゃなくって…」




皆の前におちんちんをさらした罪は
相当なものです。



H君の顔をよく見ると、
彼の目には涙が浮かんでました。



彼は

「うん。大丈夫。いいよ。」

そう言葉をつまらせながら
言ってくれました。




遠くの空を見ている二人。




しばらくして、
彼はこう教えてくれました。



「今日ポケモンだったんだよね。」


H君は私に上からカラフルなガラパンを
見せてくれました。




完。


あとがき

後に始めからガラパンを見せるつもりで、
長ズボン一枚しか履いていなかったことを
教えてくれたH君。

彼とはその後長い付き合いとなりましたが、
彼の涙を見たのは最初で最後でした。


瞼の裏に焼き付いたおちんちん。
一生忘れることはないです。



おしまい。

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