短歌「地下鉄(メトロ)で海へ」
こんにちは、秋月祐一です。
今日は、ぼくが短歌を書きはじめた頃の夏の連作、
「地下鉄で海へ」をお届けいたします。
地下鉄はメトロとお読みいただければ幸いです。
地下鉄で海へ 秋月祐一
スクリャービンのソナタみたいな夜だからちよつと酸つぱいきみの青梨
ぼくのなかで微睡んでゐた合歓の木をよびさますやうに夕立がくる
梅雨寒のホット・バタード・ラム熱しやけどの舌をちろつと見せて
「このあひだサラダに入れたアボカドの種に芽がでたから見にこない?」
ずつと海を見てゐるきみと溶けてゆく冷凍みかんが気になつてゐる
あまりにも脆弱なきみを守れずにぼくは葡萄でありつづけてる
ジンベイザメの夢をみてゐるやうな顔しながらぼくにもたれて眠る
言へずじまひに終つたことば捨てにゆく水曜の午後、地下鉄で海へ
( 地下鉄/メトロ 微睡んで/まどろんで )
この連作は、ぼくの歌集『迷子のカピバラ』(風媒社)にも
収録されています。そちらもよろしくお願いいたします。
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