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明日が嫌になったあなたへ

「帰ろう。」

と思った。もうこれ以上旅を続ける意味はなかった。財布と携帯と気に入っている服だけリュックに詰めて家を飛び出した私が抱えていた何かは、夜の空と一緒に綺麗に成仏した。


毎日同じことの繰り返しで、あ、わたしこのまま年老いて死ぬのかな。なんて考えたら、仕事帰りの電車で突然何もかも嫌になってしまったのだ。酔い潰れてホームのベンチとほぼ同化したサラリーマンをそこから引き剥がそうとしている駅員さんを横目に見ながら改札を通り抜け、いつもと同じ道を辿り、見慣れた家のドアを開けて中に入った瞬間、何かが弾けた。


勢いで訪れたその蒸し暑い国で、海から昇って来る朝日を眺めていた。名前も知らない少年に「どうしてここへ来たの?」と聞かれた。拙い英語で明日が来るのが嫌になった、と言ったら「でもあなたの国の人にはいくらでも明日に可能性があるじゃない。」と返された。だんだん明るくなっていく空が、私の言い訳を飲み込んだ。



◆この作品は#旅する日本語 コンテスト参加作品です。




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