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ビヨンセの戦略と問いたいこと

今回のビヨンセのカントリーかそうじゃないか騒動は、彼女にしてみたらしてやったりというところではないでしょうか。「人種」、「BLM」、「音楽ジャンル」という、今誰もが話題にして一つ間違えると炎上になりそうなことにあえて挑むという。それを思うと、スーパーボウルでの告知と間髪入れず新曲発表、それもカントリーというのは大きなインパクトになりました。2016年からのリベンジで発表したカントリーナンバー。彼女の音楽のジャンルを人種でくくることなく表現していきたいという強い意志があるように思いました。

いきなりの新曲発表で、その日はカントリー系のラジオ局が「これはカントリーじゃないから放送できないと発表」という記事。そして次の日に訂正。これは単にビルボードチャートの申請がまだなされていなかったからと記事にあり、また、ビルボードはそれぞれチャートマネージャーという人たちが存在して、彼らが楽曲をチェックした上で判断するそうなのでそこが間に合ってなかったということでしょう。その時差を逆手にとってわざと話題にさせたというのが正解なんじゃないかと、思っています。

音楽チャートは、"アルバムの売上やダウンロード、楽曲のダウンロード、ラジオでのオンエアやツアー、そしてFacebook、Twitter、Vevo、Youtube、Spotify、その他音楽に関する人気のあるオンライン・デスティネーションでのストリーミングやソーシャル・インタラクションなど、音楽とファンとの主要なインタラクション "に基づいているそうで、すでに彼女の今までの楽曲のジャンル分けから今回は違うジャンルに、、というのがすぐにできなかっただけ、、と見てもいいでしょう。


挑発的な衣装のミュージックビデオ

そして新曲の「テキサス・ホールデム」は、途中でダンスを入れ多くのカントリーダンスファンがするように、今回はTikTokで若い世代がこぞってダンスをアップして、数日の間は「テキサス・ホールデム」祭りになっていた様子。計画的なTikTokへの誘導の具合も時系列を追ってみると宣伝がしっかりなされている感じがあります。Youtubeも最初の挑発的なミュージックビデオ(カントリーっぽい割にはかなり衣服の生地面積が最少すぎるくらいな露出の映像)、文字(歌詞)だけのミュージックビデオ、もう少し一般的なミュージックビデオと3種類続けざまにアップ。最初に十分印象付けてきた感じがします。

おりしも、ファッション界で、この冬のヴィトンはアメリカ西部がテーマ、ウエスタンシャツのかっこいいデザインが溢れてます。ミュージシャンでもあるファレル・ウィリアムスのプロデュースなのでミュージシャンの間でもこのファッションに注目する人が多いようです。元々は多分友達でもあるリル・ナズ・X(Lil Nas X)がキュレーションしたCOACHのカプセルコレクションを始め、自身がカントリースタイルをしてたり、この数年はヒップホップやラッパーがカントリーミュージックを歌う(カントリー界に参入)ことが多いこともありウエスタンスタイルをおしゃれに着こなすことに注目が集まったのかもしれません。ファッションとしてもアメリカで多くの人が取り入れ、ビヨンセがこのタイミングで2曲入れてきたこと、いい戦略だなと思ってしまいます。

アルバムの中では今後さらにカントリー色のある曲があるのか期待したいところですが、ドリー・パートンが、ビヨンセの8thスタジオ・アルバムでコラボしたという記事もあり、その曲は「ジョリーン」ではと言われています。「ジョリーン」は私もアルバム収録し、スロベニアで1位を取ったのですが、全世界的にドリーの大ヒット曲として有名、印象的なメロディラインと歌詞で多くの女性シンガーがカバーしてきました。アルバム全体でどのくらいのカントリー楽曲があるのか今から楽しみです。
ビヨンセ新譜は『カウボーイ・カーター』3月29日にリリースです。以前、カントリーアルバムをリリースしたシンディー・ローパーはクラッシックナンバーをカバーしたものでしたが、ビヨンセはオリジナルで挑戦してくると思うので3月末にまた記事にしたいと思います。

追記:
歌手によるジャンル分けはずっと疑問に思っていることの一つです。この曲はカントリーじゃない、この曲はジャズじゃない、と歌手で分けてしまうとアルバムの中で違うジャンルにチャレンジした歌手の思いとは違う市場にアプローチする羽目になり、結果、曖昧な楽曲扱いで売れなくなることだってあります。今回は1枚全てカントリー系にしたビヨンセですが、彼女自身はすでに多くの楽曲リリースと実績があります。もうビヨンセというジャンルを確立してもいいくらいじゃないでしょうか。同じようなことがテイラー・スウィフトにも言えると思います。カントリーからポップへ、ロックへと言われますが、カントリーテイスト溢れる曲も現在もあったりします。ジャンル分けの意味、、、ネットで聞く世代が多い今後は、見直しが必要かもしれませんね。


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