カウンセリング体験記

56年前のことになるので、記憶もだいぶ曖昧だが思い出せる限りで書いていく。

当時、組織を離れて10年あまり、生活自体は徐々に落ち着いてきていたものの、主に恋愛において幼少期の体験が影響を及ぼしていることに気づき、いい加減根治させたいと思ったため、人に勧められたこともありカウンセリングを受けることにした。

とある脱会者の方が出版された書籍に載っていた、エホバの証人の問題にも理解のある先生にお願いすることに決めていたので、特にネットなどで探すことはしていない。

場所は23区内で、料金は一回90分一万円。
オンラインと対面どちらも選べたが、私は初回はオンラインを選択した。

最初のカウンセリングでは自身の生育歴を順を追って話していく。
その時までは人に宗教二世であることを明かさず、過去にも蓋をして生きていたので、これは自分の傷をえぐる感覚でとても辛い作業だった。

話し終えてすっきりしたというよりは、フラッシュバックがすごくてヘトヘトという感じ。

この時点でカウンセリングを受ける前よりかなり精神状態が悪化したと感じた。

この時、次のカウンセリングまでに毒になる親という本を読んでから、家族に手紙を書くという宿題が出る。

まず本を読もうとするのだが、これが一向に進まない。
内容が自分にとって辛いのも勿論あるけど、そもそも蓋を開けたことで精神状態が悪化しているので、何を読んでも文章が頭に入ってこない感じ。

電子書籍で購入したので、入浴中や寝る前などに少しずつ読んだと思う。

それから家族への手紙。
これは書くにあたって手順を指定されたのだけど、その詳細はここに書いていいのかわからないので割愛。

手紙を書くこともすごく辛い作業だった。
うまく表現できないけど、子供の時に戻って親に語りかけてるような感覚。

愛されたかったとか、なんで一番じゃないのか?とか、どうして鞭で叩いたのかとか、そういう感情がぐるぐる巡って、書きながら沢山泣いた。

どうにか宿題を済ませて、次のカウンセリングは対面を選択した。

本を読んだ感想と、書いた手紙を見せて親や家族への気持ちなどをメインに話した。

手紙の内容にOKをもらったので、それを家族に音読する宿題が出る。

しかし、これがハードルが高くて一向に取りかかれない。

「なるべく感情を入れずに淡々と読むように」と言われたのだが、ずっと封じ込めてきた家族への気持ちを冷静に伝えることは不可能だった。

取り組もうとすると体が重く感じて、書いた手紙を見ると手足が冷えて、口が渇いて動悸がする。

なので次回のカウンセリングでそれを伝えて、「これをやるのはちょっと無理です」と言うと、とりあえず今は無理してやらなくてもいいけど、最終段階で必要だと思ったらやってほしいと言われた。

しかし、私はこのあたりから少しずつカウンセリングの内容に違和感を覚え始める。

例えば前回話した事を先生が全然覚えていなかったり、否定的なニュアンスを感じたり、一般的な話題(仕事の話など)が増えたり。

今振り返ってみれば、おそらくそこには原因があって、カウンセリングは基本的に段階を踏んで行われるもので、なおかつベクトルとして前にしか進まないけど、私の精神状態は過去の封印を解いたことで一時的にかなり悪くなっていて、でも私に表面を取り繕う癖があるため、先生にそれを上手く伝えられず、先生も気づけなかったのだと思う。

否定的なニュアンスを感じたのも、私がナーバスになっていただけかもしれない。

せっかくのカウンセリングなので、もっと本当の気持ちを話せばよかったのだけど、過去のトラウマで相手の求める正解を探してしまう癖が抜けず、私には上手く活用できなかった(まだこの時には早かったのかもしれない)

最後に少し間を空けてもう一度受けたのだけど、資格を取るといいとか社会人でも学校に通えるなどの一方的な話が続き、「それは知ってるけど、何かを始める元気がないからカウンセリング受けてるんだ!そもそも心理的な問題を解決したくて通ってるのに、一般的なアドバイスなら一万円払ってまで聞きたくない!」と思ってしまい、それっきり通うのを辞めた。

誤解のないように今一度書いておくと、それは私が本心をさらけ出さなかったせいで、決して先生が悪い訳では無い。

先生もエスパーではないので、私の受け答えや表情を見て、これができる段階だろうと推察されたのだと思う。

宗教二世は育ってきた環境のせいで本心を上手く出せない傾向が強い方も多いので、これを読んでくださった方がもしカウンセリングを受けられる際には、思いっきり自分の内面を打ち明けてほしいと思う。

またもし支援者の方がこれを読んでくださっているのなら、粘り強く本音を引き出してあげてほしいと思う。

痛みを隠して平気なフリをするのが生き方になっている人も多くいると思うので。

さて、肝心の効果なのだが、まずカウンセリングを受けていた時期ははっきり言ってかなり精神状態が悪くなっていた。

しかし、意外に思われるかもしれないが、私はカウンセリングを受けてよかったと思っている。

魔法のようにすぐに精神状態が良くなったという訳では無いが、自分の過去を話す、気持ちを書き出すなどの作業を一度した事で、それらを客観的に見ることが出来るようになった。

そうすると、辛い時に親しい人に自分の気持ちを打ち明けたりすることへの抵抗感が減り、徐々に適切なタイミングで人に頼ることが出来るようになっていった(それまでは誰かに頼ることがすごく苦手だった)

また、幼少期に起きたことは自分に責任があるものではなく、親を含む家族の未熟さが招いたことなのだという認識もできるようになった。

手紙の宿題を出された時に、「これによって過去がちゃんと過去になります」と言われて、正直その時はその意味がまったく分からなかったのだけど、それは後になって実感した。

のちに国対ヒアリングの準備でレジュメを作成した際も、実際にあの場でそれを読み上げた際も、これは過去なのだという意識がしっかりあったので、淡々とやり遂げることができた。

もちろん、受けている最中は辛い思いも沢山あったし、良いカウンセラーに巡り会えるかどうかの問題もあるので、万人におすすめ出来るかは正直に言うと微妙なのだが、私の場合は効果があったと言える。

それから受ける時期にも注意が必要だと思う。

例えば今希死念慮がある、自傷行為をしているなどであれば、病院で適切な治療を受けた方が良いと思うし、逆に過去いろいろあったけど今それなりに幸せだという場合も、無理に掘り起こす必要はないように思う。

実際、私も過去の傷がカウンセリングによって100%根治したかと言うとそんなことは無いので。

まとめとして、カウンセリングは効果があるが、費用もそれなりにかかるものなので、カウンセラーの選び方や自分の心の状態などには十分注意した上で、上手く活用していただけるといいなと思う。

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