通る企画書ってどう書くの?その企画、自己満足になってませんか
ライターとして実績を重ねていくと、クライアント企業様からやわらかめの相談を受ける機会も多くなります。
「やわらかさ」の程度はまちまちですが、信頼関係ができている場合だと、
「なんかこう、〇〇分野でイケてる話とかないの」
なんてたずねられることもあります。暑い日のグミ並みのやわらかさですね。
何が言いたいかというと、どのメディアも、基本的にはネタ(話題)を求めているということ。良質な企画であれば、ライターからの提案は好意的に受け取られることが多いのです。
企画が通れば、基本的にそのライターが記事制作を担当することになります。「仕事を増やしたい」ライターなら、ぜひチャレンジしたいところ。
というわけで今回は、「通る企画書の書き方」について、あくまでも個人の体験からまとめたいと思います。
(前提の共有)この記事のテーマは、「主に収益化を目的とするメディア」へのご提案です
この記事では「通る企画書」をテーマに具体的なポイントをお伝えしますが、ひとくちにWebメディアといっても運営の目的はさまざま。
私の知る限りでは、大きく分けて以下の3つに分類される、と説明されることが多いように思います。
このうち、今回の記事で扱うのは「①アフィリエイトや記事広告などで収益を上げたいと考えているメディア」へのご提案です。
すなわち、ライター発案の企画には、「執筆した記事が、クライアント(=メディア)に対して何らかの金銭的価値を生み出す」ことが求められていると考えてよいでしょう。
ただし、「金銭的価値」の定義はさまざまです。
パッと思いつくのは「アフィリエイトや記事広告の受注などで収益が上がる」ですが、何かを直接売っていなくても、
など、大きな視点で「金銭的価値」が生まれていることもあります。
深入りすると複雑な話になってしまうのですが……
要するに、今回のテーマでは「発注主に何らかの金銭的メリットをもたらすかどうか?」という話を中心にしていく、という認識を共有できればと思います。
■ちょっと待って!メディアはあなたのブログじゃない
ではいよいよ本題!と行きたいところですが、もうひとつ、大前提を強調させてください。それは……
メディアは、個人ブログではありません。
自戒として書きますが、ライターが立てる企画は、油断すると自己満足に陥りがちです。
たとえば、私は自他ともに認める寝相の悪さで、枕が部屋の反対側に落ちていることもしばしば。
この前提のもと、「体に合った寝具は、寝相を改善してくれるのか?」という企画を立てたとしましょう。
で、この企画を、
どうでしょう。同じ企画でも、提案先によって、大きくリアクションが異なる可能性が考えられます。後者はいわば、クライアント不在、読者不在の自己満足企画になってしまっています。
駆け出しのライターって、ついつい自分の強み=提案チャンス!と考えてしまいがちです。
たとえば、「ラーメンが大好きだから、ラーメン屋にたくさん行きたいです!」とか。この切り口って、本人に相当のブランド力がないと、メディア側には原稿料を支払うメリットがないわけです(3年前の私!お前に言っているんだぞ!)。
「メディアはあなたのブログじゃない」。何度でも心に刻んだ上で、以降の話に移っていこうと思います。
■じゃあ、企画書に盛り込むべき内容って?
では、企画書にはどういった内容を盛り込めばいいのでしょうか。
私の場合は、以下の内容をまとめた資料をお送りすることが多いです。
それぞれについて見ていきましょう。
冒頭のごあいさつ
ビジネス文書ですから、冒頭のごあいさつは必要です。ggれば例文が出てくるので、適宜添えましょう。
クライアントによっては「次回から省略で。本題からでOKだよ」とおっしゃる場合もあります。
ライターの強み
お付き合いの長いクライアント様にお渡しする場合、省くことも多いですが、「なぜ自分がこの企画を担うに値するのか」のアピールは遠慮なく行います。
たとえば、私であれば
などをベースとして書きます。
それにプラスして、「ゲームが好きで、〇〇のプレイ経験が〇〇時間ほどあります。そのため、このタイトルについてもゲーマー視点で書けると思います」などもアピール。
クライアント様に「じゃあ、お願いしてみようかな」と思ってもらうため、謙遜しすぎず、かつ、誠実に書きましょう。
想定読者
「〇〇に関心を持ち、□□な情報を求めている、△△代の☆☆」
これを埋めましょう。解像度は高ければ高いほど良いです。
たとえば、私の場合は
のように書くことが多いです。
よく言われることですが、ここでの読者には、身近な人を想定すると書きやすいです。
「あの友達に記事を届けるとしたら」の視点を持っておくと……
のように、自然と記事の有用性も上がっていきます。もしも思い当たる友達がいれば、ぜひチャレンジしてみてください。
企画意図
「なぜ、そのメディアに、この企画記事があるべきなのか」。これを書きます。
先ほど、「ラーメンが好きだからラーメン屋に行きたい」例を出しましたが、ラーメンが悪いわけではなく(ラーメンは美味しいから正義だよ)、企画の根拠がはっきりしていないのが良くないわけです。
同じ企画でも、このような理由があれば、企画として意義があると判断され、通る可能性も高くなります。
「そのメディアが、原稿料を払って依頼する意義は何か」。その理由を簡潔に説明するつもりで書くと良いでしょう。
企画内容
「なぜ、私に依頼する必要があるのか」
「なぜ、この企画が必要なのか」
を説明したら、いよいよ企画内容に入ります。
といっても、上述の内容が詰められていれば、ここの内容がダメダメになる(ものすごくズレた提案になる)リスクはかなり下がっているはず。
その意味でも、どちらかというと上の項目のほうを真剣に考えた方がいいと思います。企画内容自体は、編集者と相談しているうちに変わったりしますしね。
さて、企画内容をラーメン店の例で説明すると、
このくらいにまとめることが多いです。あまり長くても、相手の時間を奪ってしまうことにつながるので。
想定スケジュール
媒体によりますが、「企画OKが出た場合、取材っていつ頃行けそうですか(直近は忙しいの)?」とたずねられることが多いので、大まかな目安を提案しておくことが多いです。
「◯月中に取材可能。以降の日程は随時相談可」などと簡単に添えるだけでも良いでしょう。
(あれば)ご相談事項
企画を立てる際、「どうしても、ここだけはデザイナーさんに図表を作って欲しいんだよな……」なんて完成形が思い浮かぶこともあります。
また、PR記事の場合、製品をお借りできるのか、こちらで購入し、ご請求する形になるのか、などもおたずねする必要があるでしょう。
そのあたりの、記事を執筆する際に不安になりそうな点をあらかじめ書いておきます。
オプションの内容(有償対応)
記事リード文/記事構成(見出しと、箇条書きレベルの内容)
すでに受注可能性が高い場合は、記事リード文も添えて送ることがあります。そこそこ時間がかかるので、受注可能性が高い場合に限っておいたほうがよいです。(ぽしゃったら切ないので)
「受注可能性が高い」というのは、
のような状況です。
私の場合、先方の求めに応じて、このレベルの企画書を作る際は有償での対応としています。
逆に、「ワンチャン通ってくれ……なぜなら私が書きたいから……!」という企画の場合は、通って欲しい一心で無償対応することもあります。そこは最終、自己判断していただければと思います。
■こんな企画・企画書は避けよう!よくあるNG例3つ
上記の内容をしっかり詰めた企画書でも、NGになるときはなります。それはもう、タイミングや予算、たまたま他のライターさんが先に提案していた……など、事情はさまざまですので、あきらめましょう。よくあることです。
逆に、以下のような難があると、企画自体はよくても「うーん……」と言われがちです。具体的に見ていきましょう。
1. 読者のほうを向いていない
お金をいただいて原稿を書くからには、読者の疑問や不安を解消し、求めている情報を提供するぞ!というつもりで執筆しなければいけません。
ラーメン屋の例でいえば、「私の家から近いし、取材がラクで最高!経費で飲み食い、イェーイ!」みたいな考え方は論外。特に後半の、「経費で〇〇できてラッキー」みたいな視点、クライアントは見抜いてますよ。
どのような企画でも自己満足に終わらず、
のように、読者へのメリットが提示できる切り口を、常に意識したいところです。
2. クライアントニーズとずれている
これも気にしたいところ。クライアントがどのような読者をターゲットにしているのかを正確に把握しないと、企画として採用されるのは難しいです。
たとえば、同じ「グルメ」であっても、「ちょっと値段は張るけど、食事を楽しめるお店」をメインにしているのか、「500円でガッツリ満腹!なお店」がメインなのか、といった違いがあります。
ここを大雑把にしか把握せず、「グルメサイトなんだったら、駄菓子とか良くないですか?私、駄菓子好きだし!」ってトーンで提案すると、当然断られます。提案先は大カテゴリではなく、小カテゴリで捉えるようにしましょう。
3. 実現可能性が低い
単刀直入に言うと「ケツ拭ける?」ってことです。
企画というのは、実現できないと意味がありません。ところが、経験が浅いと、「それはちょっと難しいんじゃ……」というレベルの企画を考えがちです。
たとえば、
みたいな。いや、確かに実現できたらすごいけど、その予算はどこから!?っていう……
ライターの企画書は、基本的に、自分ひとりで受託し、完成形まで持っていけることを前提に書くべきです。上述のように他のスタッフを巻き込む必要がある企画は、よほど価値があり、よほど予算を獲得できるアイディアでないと実現が難しいです。
「きちんと納品まで持っていけるか?」は常に慎重に。
取材に行くつもりだったお店に断られたらどうするのか。自分が体調を崩したら、別日でも企画実施可能なのか(イベントを撮る!とかだと無理です)。このくらいの経費がかかるが、その扱いは……など、何重にもシミュレーションしましょう。お仕事ですから、慎重になりすぎて困ることはありません。
■マガジンメンバーに聞いた!企画書、どんなの使ってる?
というわけで今回は、夏野個人が大切にしている、企画書作成のコツをまとめました。
この内容はあくまでも個人的なもので、ご経歴やクライアント様の業種、分野によって作法や求められる項目も変わってくるでしょう。しかし、「読者・クライアント・実現可能性を重視する」根本の部分に関して言えば、どの媒体でも大きく外れることはないはず。これから初めて企画提案をされる方は、ぜひこの視点をもって構成してみてください。
そして今回はスペシャルコンテンツということで、なんと、マガジンメンバーが実際に使っている企画書(取材依頼書)フォーマットを公開!ぜひ参考にされてくださいね。
お出かけフリーライター・小澤志穂さんの取材依頼書
ご紹介するのは、フリーライター・小澤さんの企画書(取材依頼書)。
小澤さんは趣味の旅行を収益化できないか?と考えたのがきっかけでライター業をスタートされ、現在ではICT教育やプログラミングスクールの卒業生インタビュー、医療系求人媒体など、専門性を求められるライティングも多数手がけるプロライターです。(そして、このマガジンのメンバーでもあります!)
そんな小澤さんが個人サイトで公開されている取材依頼書のフォーマットは、未経験ライターさんから非常に多く閲覧されているのだとか。お問合せの流れやアポイント時の注意点も含めてレクチャーされているので、ぜひ参考にされてくださいね!
(小澤さんの個人サイトのページ。未経験ライターの参考になる情報がたくさん!)
小澤さん注:
当時はWebサイト/メールアドレスのない店舗さま等にアポイントを取ることが多かったため、「まず電話」としていますが、現在はメールでアポイントを取ることも多いです。
(小澤さんのnote。もちろん、マガジン記事もありますよ〜)
とっても嬉しいです。サン宝石で豪遊します。