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田園を描く人たち、バルビゾン派の絵を見てきた [日記と短歌]23,5,7


黒々と畑に土に生命をよぶ霧雨は豊かなる白/夏野ネコ


この五月連休を利用して山梨県立美術館に行きました。ミレーを中心にしたバルビゾン派の作品収集で有名な美術館です。

バルビゾン派。
いわゆる印象派のルーツになった自然主義の絵画集団で、フランスでも郊外のバルビゾン村で活動していたからその名がついたそうです。サロンを中心とした古典的価値観が支配的だった当時のフランス絵画界ではかなりロックな事をしていたわけですが、農村と田園、光ある豊かな自然、そこに暮らす人々、といったモチーフは日本の風景にもとても親和性が高く、おそらく日本の自然主義文学とかも無関係ではないはず(って美術史文学史は疎いでの印象ですが!)。

そんな田園志向の作品を地方の美術館が収集しているのはすごく納得できるし、なんていうか、マッチしているんですよ。いい感じの必然性があって、周辺にある自然とか空のやたらな青さとかも含めて「見にいったぜ!」の満足度が高かった。

一番有名なのは岩波書店のシンボルにもなっているミレーの「種をまく人」で、世界的にも有名な作品なので「あの絵はだいたいこんな感じよね」のイメージは頭にあるわけですが、実物はかなり暗い。というかミレーの農村風俗絵画は総じて黒々としていて、重いんですよね。

バルビゾン派の風景の捉え方がそうなのか、全体的に、光を表現するために影の部分を実は重視しているようにも見えました。黒々とした雲に覆われた夕方に、一瞬、雲の切れ間に夕日が差すみたいな、そんな感じ。そして本来の人間の営みは暗い方にあるんじゃないだろうか、的な。ルソーのこの作品とか…
https://www.art-museum.pref.yamanashi.jp/collection/barbizon/126.html

見たまま、そのまんま、を志向する自然主義ですが、人間が描く以上、そこに一定のディフォルメはあるはずで、だからこの、バルビゾン派の描く風景の、影の部分にやたら惹かれてしまった。黒々とした方に何かいる、とそっちの方に目を凝らしていました。
だからでしょうか、仄暗い美術館を出た時の五月のまばゆい光と鮮やな緑がひどく感動的で、ここまで含めて高度に完成された作品かもしれない、と、そう思った美術鑑賞でした。




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