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連作短歌:冬の適温


さみーよのみーよを少し暖めてみ~よくらいで君に返すね

あたたかさだけでは光らない星の温度が夜を不可逆にした

混ざり合うふたつの呼気は結露して空を知らない熱を知らない

手のひらの鼓動がきっと未来だと思えなくとも今は睡ろう

すこしだけズルい君から愛だけを引き出せばほら冬の適温


2022年の大晦日に開かれたカウントダウン短歌に参加した時の歌
「さみーよのみーよを少し暖めてみ~よくらいで君に返すね」が自分でも妙に気に入ってしまい、これを起点に連なりを作ってみました。「すこしだけズルい」のうたは以前つくったものに手を入れました。その2首に挟まれた3首はあたらしくつくったものです。

冬の温度、それは厳しい寒さだったり、あるいは寒さから身を守ってくれる温もりだったりするのだけど、可能なれば完璧に寒さを遮断するポカポカが良いに決まっていながらも、でも冬の、わずかな温もりをも持っていかれそうになるギリギリのところが、うん、やっぱり冬っぽいなと思う。

布団の外の酷寒も、ドアを開けた瞬間の寒風も、温もりの儚さを思い知るに余りあるわけで、わずかな温度を頼りに今を引き延ばすしかできない現状追認のやるせなさが、温もりの儚さと相まって、冬独特のあきらめを美しくさせているんじゃないだろうか。
そんな風に春になるまで今を引き延ばして、そうして別れちゃうんだろうな…(という趣旨の連作です)。

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