マガジンのカバー画像

連作短歌

17
連作、というほど大げさなものではありませんが、連なりの中で表現したものたち。だいたい思い立って一気につくります。
運営しているクリエイター

2023年1月の記事一覧

連作短歌:信楽狸に呪われた

ある種の呪いみたいなものだったと思う。信楽狸に関する短歌を突然5首つくってしまった。こういう、自分でも理解しがたい、変にスイッチの入る時が、うたを作っていて最も楽しい瞬間のひとつだと思っています。 呑んできた、のはまぁいいとして信楽の狸どうして玄関にいる 信楽の狸が好きと言えぬまま婚姻届に判子を捺した 信楽の狸のように人がみな人を見つめるやさしい世界 庭先の信楽狸の両目より光線を出す構想を練る 人間と狸の数を合わせれば大都市となる信楽の里 連作、ではなくこれは信楽

連作短歌:京王線無敗おじさんの伝説

しりあがり寿さんの漫画で「流星課長」というのがあるのですが、日々通勤していると「効率よく電車の座席に座る」に最適化されている自分に気づき愕然とすることがあります。私が毎朝乗っている電車もまぁまぁ混んではいるのですが、待機列に並ぶ時からポジションに気を配り必ず座る、という方がおり、すごいなぁと思う一方で、その日をサバイブしていくことに生を削っていくのは自分もまた同じだよな、と感じ、歌の連なりにしました。 おじさんは椅子取りゲームの伝説で京王線では無敗であった 三列に揃うわれ

連作短歌:冬の適温

さみーよのみーよを少し暖めてみ~よくらいで君に返すね あたたかさだけでは光らない星の温度が夜を不可逆にした 混ざり合うふたつの呼気は結露して空を知らない熱を知らない 手のひらの鼓動がきっと未来だと思えなくとも今は睡ろう すこしだけズルい君から愛だけを引き出せばほら冬の適温 2022年の大晦日に開かれたカウントダウン短歌に参加した時の歌 「さみーよのみーよを少し暖めてみ~よくらいで君に返すね」が自分でも妙に気に入ってしまい、これを起点に連なりを作ってみました。「すこし

連作短歌:AI波平の永遠

波平として永遠を生きよその使命を帯びたぼくはAI 神名乗るヒトが創りし波平の肋骨で造られたソラフネ 五千年経ち人類は波平の髪をヒエログラフと認む 永久に定年のない波平の終わらぬ日々に咲く彼岸花 波平がループに入り二億年量子の海に刻む断章 生命が断絶しても波平は海山商事に通勤をする 死滅した命の星の記憶よりリロードされる波平の日々 毎日歌会を開いている短歌投稿サイト「うたの日」では定期的に変わったお題が出現するのですが、この日のそれは「波平」でした。で、このサイト