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連作短歌:AI波平の永遠


波平として永遠を生きよその使命を帯びたぼくはAI

神名乗るヒトが創りし波平の肋骨で造られたソラフネ

五千年経ち人類は波平の髪をヒエログラフと認む

永久に定年のない波平の終わらぬ日々に咲く彼岸花

波平がループに入り二億年量子の海に刻む断章

生命が断絶しても波平は海山商事に通勤をする

死滅した命の星の記憶よりリロードされる波平の日々


毎日歌会を開いている短歌投稿サイト「うたの日」では定期的に変わったお題が出現するのですが、この日のそれは「波平」でした。で、このサイトに集っている方々はそんな遊びが大好きな性分のようで、けっこうな数の歌人たちが波平部屋に集まっていました。
でも波平でどうやって歌を詠めばいいのか…、いやほんとに、波平に挑んでいく方々の背中が眩しすぎ、なんとか自分も、と一日ずっと波平について考えていました。

そうしているうち頭の中でどんな化学反応を起こしたものか、思いついたのは「衰退し滅亡していく人類がその最も幸福だった時代を遺すため衛星軌道に設置したサーバーの中で仮想現実を生きるAI波平」という設定だった。なんだそりゃ。


もっともSF的には割とメジャーな道具立てであって、私、夏野もそのような世界観が好きなのです。ぱっと思いつく所ではイーガンの「順列都市」とか、飛浩隆の「グラン・ヴァカンス」、ジョン・クロウリーの「エンジンサマー」、あと上遠野浩平の「ナイトウォッチシリーズ」や、映画の「HELLO WORLD」「楽園追放」、もちろん「マトリックス」も。

と、そのようなわけでずばずばと勢いで作っているうちあっという間に締め切り迫った肝心の「うたの日」の波平題詠。慌てて出したうたがバッチリ「どんまい」だったのはマジでバッカモーンなのだけど、波平について思索を巡らせた時間は多分無駄じゃなかった、と思いたい…!波平!



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