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不思議と好奇心とことばで溢れた安野光雅さんの世界

私の手元には実家から持ってきた絵本が数点あります。なんとなく手放せず、いくつか持っているものですが、その中に安野光雅さんの本が2冊。「旅の絵本」と「歌の絵本」。その本をいつから持っているのかは定かではありませんが、素朴な日本の風景や歌に添えられた絵を時々見たくなり、手元に置いていたように思います。その後子供を通じて幾つかの作品に出会い、さらには昨年館林美術館で開かれた安野光雅展に足を運ぶ機会があり、大人になってもなお色々な発見を下さる安野さん作品に改めて魅了されていました。

そんな折、安野光雅さんが、昨年末に亡くなったとのこと。ご冥福をお祈りいたします。安野さんの世界の面白さに引き込まれていた矢先だったので大変残念ですが、ブクログ(読書記録に使っています)で安野さんの関わった作品を見るとなんと417作品!本当にたくさんの作品を残されたのだなと。

まだまだ触れられていない作品が多いのですが、ここに少しではあるけれど大事なメッセージをくださった幾つかの作品について書きたいと思います。

旅の絵本

不動の名作、私の中でも原点です。一切の文字はなく絵だけ。その中に果てしない遊び心が散りばめられており、童話の主人公なども出てきます。展覧会でお隣になったご婦人が、絵に散りばめられている仕掛けを色々教えてくださり、私もまだ知らないことがたくさんありそう。大人にもファンが多いのですね。日本、ヨーロッパ、アジアなどあるのですが、華々しい風景というよりは、人の日常、風習、素朴な景色が描かれているところが好きです。

歌の絵本

美しい景色と、日本の唱歌を合わせて掲載している本。小さい頃歌ってもらったなあとか。こう言った歌を私たちは子供たちに、ちゃんと伝えられていないなあと。。言葉もメロディも美しい本来の日本の歌を素朴に伝えてくれる作品だなあと大事にしてます。

ふしぎなえ

その名も「ふしぎなえ」。こちらも文字はなく、絵の中に描かれる小人の目線でふしぎな世界へ導かれていきます。いわゆる騙し絵ですが、絵だからこそできる矛盾の世界を発見することが楽しい作品。子供からみてもわかりやすい「矛盾」なので、字はなくとも会話が弾みます。

おおきなもののすきなおうさま

おうさまの話は子供の絵本に多い気がします。自分勝手なおうさまだったり、こだわりの強いおうさまだったり... ちょっと滑稽にも見えるおうさまが多いのは気のせいでしょうか。安野さんの描くおうさまはとにかく大きいものが好きなおうさま。もしもこんなおうさまがいたら、家来たちも大変でさぞかし困るでしょう。ひたすら空想の世界で心を豊かにしてくれる大好きな作品です。(が、手元に絵本がなく、結末がどうだったか思い出せなくて... 久々にみたい)

しりとり/なぞなぞ

月間の「こどものとも」(福音館書店)をもう何年か購読しており、子供と楽しんでいます。そこで刊行されていた「しりとり」と「なぞなぞ」。言葉遊びの代表であるしりとりやなぞなぞはいつの時代も言葉を豊かにしてくれる存在ですが、安野さんの作品ではこういった言葉を大事にした作品が多いと思います。しりとりはつい最近ハードカバーで刊行されました。なぞなぞは、2021年の3月号として発行されたものですが、今ネットで高値で売られていたり。。私は書店で見つけてかいましたが、なんだかちょっと悲しい。

にほんご

言葉を大事にされている、ということを感じるという観点でもう一つ素晴らしい本。大人になってから出会いましたが、にほんごって綺麗だなと。谷川俊太郎さんなどと共著で、安野さんの挿絵が多く含まれています。読み書きよりも話す聞くを意識して作られているとのことで、コミュニケーションの原点が言葉であることを改めて教えてくれる作品だなと思います。(メール、チャット、SNS時代だけど、ちゃんと面と向かって話せないとね)

はじめてであうすうがくの絵本

かず、けいさん、とかっていつから堅苦しいものとして記憶に刻まれる気がするのですが、きっと本来発見や創造が詰まった楽しいもので、それを教えてくれるきっかけとなる本だなと思います。シリーズで数冊あります。こんな教科書あったら楽しく算数が始められそう。この本がさんすうではなくすうがくと言っているのもすきです。発見に満ちた一つの学問として、子供たちに教えてくれているように感じます。

会いたかった画家

こちらは絵本ではなくエッセイですが、安野さんの考え方や語り口も面白くエッセイもつらつらとすきなことや想いを語られていてこれだけの作品を生み出した思考の原点をたくさん感じられます。物心ついた時から絵がすきで、画家ではクレーがすきとのこと。なんとなくわかる気が。ひとの展覧会にいくのは苦手で、理由は「感じすぎてしまうから」だとか。面白い。

以上、ほんの断片ですが。書いてて、また違う作品を読みたくなった今日です。

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