とある会社員の朝
最初のアラームは、朝5時30分に鳴る。そこから5分置きにアラームが鳴り、5時50分に彼女はやっと起床した。
トイレに行って、歯磨きをして、顔を洗う。先日買った、朝洗顔専用のフェイススクラブ。高かったけれど、使った日は肌がツルツルになり、メイクのりも良い。
フェイススクラブを顔にのせパックのようにしている間に(見た目はとても滑稽だけれど、一人暮らしの彼女はそんなこと気にしない)、彼女は朝食とお弁当の準備をする。どちらも、手順は至って簡単だ。まずケトルに水を入れお湯を沸かす。その間、シェイカーにプロテインと牛乳と水を入れ、蓋をおさえながら振る。昨夜作っておいたオーバーナイトオーツと一緒にテーブルに並べれば、たんぱく質と食物繊維たっぷりの朝食の完成。
お湯が沸いたら、スープジャーへ。スープジャーの中には、昨夜のうちに用意したオートミールと野菜と固形スープのもとが入っているから、それでもうお弁当はできあがりだ。
寝癖を直し、メイクをしながら時計がわりに朝のニュース番組を流し見る。フェイススクラブのおかげで肌の調子が良い。ファンデーション は最近伊勢丹で買ったもので、肌に密着してマスクに付きづらく、素肌が綺麗に見えるところが気に入っている。
けれど彼女の重大な悩みである毛穴を覆い隠してくれるほどのカバー力はないので、マスクをしているこの期間の間にどうにか毛穴が目立たない肌になりたいらしい。そのためのフェイススクラブなのだそうだ。
その日の気分でアイシャドウやチークをのせ、メイクは完了。そのまま朝食のプロテインとオーバーナイトオーツを食べる。オーバーナイトオーツは、オートミールにヨーグルトを混ぜて一晩寝かしたものだ。彼女は最近筋トレとダイエットに勤しんでいて、これもその一環。
さあ、家を出るまであと10分だ。
食器を水につけ置きし、着替えをする。彼女はメイクをしながら見ていた天気予報をもとに今日の服装を考えていたらしく、迷うことはない。社会人になりたての頃は、服装が決まらなくて遅刻しそうになることは珍しい景色ではなかっただけに、彼女の成長が見てとれる。
バッグに水筒とお弁当を入れて、冷房で寒くなったときためのカーディガンも忘れずに。腕には、プライベートでは着けないかしこまったデザインの小さな時計。
6時40分。彼女は家を出た。足取りは軽くない、けれど重くもない。彼女は自分のために働いているから。
今日も、いってらっしゃい。
世界はそれを愛と呼ぶんだぜ