わたしは自分の力で、そこへ行く。
週末になると、我が家の玄関には靴が一足増える。
わたしより遥かに大きいその靴を見るたび、わたしの足もこのくらい大きかったらもっと色んな場所へ歩いていけるのかもしれないなあ、と羨ましく思う。
わたしの背がもっと高ければ、違う景色を見ることができるのに。
わたしの手のひらがもっと大きければ、たくさんの物を掴むことができるのに。
わたしだって身長は163㎝あるけれど、男性はそれより優に大きな身体をしている。
ずるいなあと、思ってしまう。
女性であることは楽しいけれど、少し悔しい。
世間的にも立場が弱くて、物理的に言えばもっと非力で。男性には、到底敵わないことが多い。わたしと同じ腕の細さで、どうしてあんなに力が違うのだろう?
別に、男性になりたいわけでも、力が欲しいわけでもない。
ただ、わたしが背伸びしてもジャンプしても届かない世界を簡単に覗けてしまうとか、わたしよりずっと早く遠くへ走っていけるとか、そんなことが途方もなく羨ましいだけなんだ。
だってわたしよりも早く、前に進めてしまうじゃない。
***
わたしは自他共に認める恋愛体質なのは、もしかしたらそれが理由だったりするのかなあ?
先に進まれるのが悔しくて。絶対に追いついて、追い越したくて。でもそれに男性の力は借りたくなくて。
自分の足で、進みたい。
同じ世界でも、自分で努力して手にするのとそうでないとでは、見えるものは違うはずだから。
そんなふうに思ってるのかも、しれないな。
世界はそれを愛と呼ぶんだぜ