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彼女は親友じゃない、わたしの人生を変えた人

今日は友だちの結婚式だった。


彼女とは高校生のころからの付き合いで、高校時代は部活が一緒で、いちばん仲が良かった。共に上京して、大学は違ったけれど、家が近かったからよく遊んだ。変なプリクラを撮ったり、280円均一の居酒屋で塩キャベツをひたすら食べたり、お互いの恋愛話に花を咲かせ、ときには怒ったり怒られたりもした。

社会人になっても「明日会える?」という突拍子もない連絡ができる、数少ない友だちのひとり。
そして何より彼女は、わたしの人生を変えるきっかけを作ってくれた人なんだ。



「え、一人で海外に行ってきたの?」

驚くわたしに、彼女はあっけからんとした表情でビールを飲んだ。

「なんで一人で行ったの?」
「彼氏と別れて一緒にいく人がいなかったから」
「英語喋れたっけ?」
「全然できないよー」
「えっそんなんで海外って行けるの?大丈夫だったの?怖くないの?」
「うーん、案外なんとかなるし、気をつけてれば大丈夫だったよ」

さも当たり前のように笑う彼女に、わたしは開いた口が塞がらなかった。たしかに彼女が海外旅行好きだとは知っていたけれど、まさか一人で行くだなんて。危なくないのだろうか?
大人しくて末っ子気質の彼女のどこに、そんなパワーがあったのだろう。


「みどりも行けばいいよ、海外」

海外、か。たしかに前にインドに行ったのは楽しかったなあ。それっきり全然行っていないけれど。英語なんて全然できないし、飛行機の乗り方もわからないけれど、わたしでも一人で行けるのかな。

その日彼女はわたしに、安い航空券の探し方とと宿の取り方を教えてくれた。
スカイキャナー、ブッキングドットコム。今まで旅行会社というとHISやJTBしか知らなかったわたしには、どちらも初めて耳にするものだった。

スカイキャナー、ブッキングドットコム。
教えてもらったのはたったそれだけなのに、なんだかタケコプターを手にしたような気分になった。検索すると無限に出てくる航空券とホテル。これからわたしは、どこにだって行けるのかもしれない。胸が高鳴った。スマホをぎゅっと握りしめて、帰り道を歩いた。



それから見事に海外旅行、そしてひとり旅にハマり、年に一度はどこかに旅行にいくようになった。

旅美女会に入り、記事を書いた。文章を書くことの楽しさを思い出し、今はnoteの連続更新をしている。
SNSもはじめた。フォロワーはたくさんいるわけではないけれど、SNSを通じて今までじゃ絶対に会えなかったような人たちと出会い、かけがえのない友だちもできた。その繋がりから英語とITを学びたい、という夢を見つけ、12月には語学留学に行く。



一度ひとりで海外旅行にいっただけ。
それなのにわたしは、つまらない仕事と恋愛だけにまみれた人生の、大きな舵を切ることとなったのだ。

「みどりも行けばいいよ、海外」

彼女の何気ない一言は、わたしの今を、人生をたしかに確実に変えた。普段は絶対にこんなこと言えないけれど、たぶんもう二度と言わないけれど。本当に、ありがとう。




わたしたちの関係はもしかしたら「親友」に近いのかもしれない。でも、どうもしっくりこない。照れくさいとかではなく、なんだかそういう、お互いのすべてを知ってて、なんでも話せて泣いて怒って笑いあえるピュアでまっすぐな関係、というとちょっと違う気がして。

だってわたしたち、仲は良いしなんでも話せるけれど、別にお互いのすべてを知っているわけではないし、お互いにちょうどいい一定のテンポでずっと付き合ってきた友だち、それが彼女だ。

そしてわたしにはそのテンポがとても心地よくて。何をするわけでもない、美味しいものを食べたり、海外旅行の話をしたり、くだらなくて山もオチもない話をひたすら話したり。そんなことが、たまらなく楽しいんだ。


だからさ、どんなテンポでもリズムでもいいよ、これからもずっと、友だちでいようよ。

結婚おめでとう。





世界はそれを愛と呼ぶんだぜ