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2022年8月の振り返り。コロナ感染で読書三昧

ついにコロナ感染。1日半で熱は引きおおむね元気だったが、寝落ちする直前にむせるという現象に1週間ほど悩まされた。ただでさえ寝付き悪いのに。

10日間の自宅待機期間、とにかく時間があったのでひたすら本を読んだ。もう少し仕事をしていれば8月後半〜現在にかけてこんなに忙しく過ごすことはなかったろうに……。

ということで読んだ本をいくつか振り返る。

十角館の殺人/綾辻 行人

私が通っていた高校には「3年間で100冊を読む」という課題図書の制度があり、1学期に5冊×2回の課題図書が発表され、その内容の正誤を問う問題が現国の中間・期末テストに出題されていた。

その最初の5冊のうちの1冊が、この本。

普段本を読まない同級生たちがこぞって面白いと盛り上がっていたミステリー。やっぱり面白い。ある一文にゾクゾクする。内容を全く覚えておらず、新鮮に楽しんだ。

読書履歴を見る感じ、だいたい10年に一度読んでいるらしい。次は2032年ごろに再読か。その時までに犯人を忘れたい。

告白/湊 かなえ

こちらも再読。本当に本当に本当〜〜〜〜に嫌な話。

悪意からは悪意しか生まれず、善意のつもりの行動も悪意になり、最後は自業自得でバッドエンド。

冷静な森口から滲み出る嫌悪感の独白に一周回って笑ってしまった。何の救いもない最悪なストーリーだけど、めっちゃくちゃおもしろい。

ある晴れた夏の朝/小手鞠 るい

8月なので戦争テーマの本も読んだ。広島・長崎に落とされた原爆の是非をアメリカの高校生がディベートする話。

異なる考え方や文化を正しく理解するのは本当に難しい。付け焼き刃の知識では誤解を生むし、異なる言語を正しく翻訳しなければ意味合いは180度変わってしまう。

理解してもらうための説明もまた困難で、はなから諦めてしまいそうになるけれど、対話を諦めず、お互いを理解し合おうとすることが平和への第一歩。

でも、話がまるで通じない人との対話は諦めるが吉だったりもする。

この地獄を生きるのだ うつ病、生活保護。死ねなかった私が「再生」するまで。/小林エリコ

日本社会の闇。働く意志があって、自立を願っていて、それでもクリニックや生活保護から抜け出せない飼い殺しのようなシステム。

一方で、精神障害者の雇用を敬遠する企業の気持ちもよくわかる。派遣事業部で仕事をしていたころに何名かサポートをしたことがあるが、就業初日に来ないなどトラブルはたしかに多かった。

生活保護を受けながらボランティアで働き、徐々に社会に慣れていく作者の道のりはモデルケースのようにも思うけど(もっと期間を短縮できたとは思うが)、現実はこううまくいかない気もする。

ボトルネックは何だろう、人手不足と偏見か……?と思いつつ、まず個人が考えるべきは精神を壊さないこと。皆さまもご自愛ください。

重力ピエロ/伊坂 幸太郎

大学生の頃好きだった伊坂幸太郎作品の中でも、特に好きだった作品。

春がいてよかったけど、強姦魔の子どもを産むべきなのか。主人公の答えは矛盾だらけだけど、理屈が通ることが全てではなく、何にでも意味があるわけでもない。目の前の人や出来事に対して自分がどう思うかが大事なのであり、そこに説明は不要。まさに「矛盾なんて犬に食わせろ。」

アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂 幸太郎

これもとても好きだった伊坂幸太郎作品。エンタメ小説としてめちゃくちゃ面白いと思う。万人におすすめできる。

河崎が手紙の裏に書いた「さっさと生まれ変わって、また女を抱くよ」がとても良い。「溺れてもカッコつけて沈んでいく」と琴美に言われた河崎の生き様。

悲しい話だけど、「本当に生まれ変わるんだろうな、ドルジ?」があるから爽やか。この本がきっかけでボブ・ディランを聴くようになった。

未来をつくる権利/荻上チキ

星野源のラジオのゲストにチキさんが出てた時、話に上がった本。テレビがなかった頃に荻上チキさんのラジオをよく聞いていて好きだったので購入。

さまざまな権利について考える本。「寝不足が多い日本人には睡眠権が必要なのでは」とか、安心安全なトイレで排泄をする権利とか、縁を切る権利とか、ふだん考えない切り口で面白かった。

身近で関心を持ちやすく、それでいて大事な話。中高生でも読みやすいんじゃなかろうか。

暇と退屈の倫理学/國分 功一郎

退屈に困っているので再読。20代で読んだ時とは退屈への切実さが違って、より面白かった。

定住が退屈を生んだわけで、マンション購入はやはり悪手だったか……と、ひとまずこの秋は旅に出ようと決意。

何かにどハマりして夢中になる瞬間、環世界にとらわれてるとも言えるのか。わたしは3年前、たしかにSexy Zoneに囚われ、退屈とは程遠い生活を送っていた。当時の様子、今読み返すとやばい。

急に具合が悪くなる/宮野 真生子, 磯野 真穂

数年前に飲んだ時、先輩がおすすめしてくれた本。買ったまま積読されていたのをようやく読んだのだが、今読んでめちゃくちゃよかった。

死が迫っている人に対して、どう言葉をかけ、接すればいいのか。時折ふと思い出しては答えがわからずにいた問いに、答えを提示してくれるような本だった。

わたしに足りなかったのはラインを描きながらお互いの関係を深める覚悟。遠慮と配慮は別物であり、「病気だから」と遠慮に逃げることが相手にとっては不快なこともある。

傷つけたり傷ついたりすることを恐れながらも、人と関わり合おうとする勇気がわたしには足りない。

デッドエンドの思い出/よしもとばなな

これまた再読。事故や死、別れなど、マイナスな出来事を主軸にした短編集。

つらいときにその出来事とどう向き合うか、どう立ち直っていくか。しんどい感じで始まって、最後には救いがあるから読後はさわやか。朝井リョウの「どうしても生きてる」の前向きなバージョン。

カミーノ! 女ひとりスペイン巡礼、900キロ徒歩の旅/森 知子

部屋で一人で孤独に過ごしても苦境から立ち直ることはできなくて、動物たる人間は自然の中で体を動かして、人と交わることで回復していく。やはり自分には人との関わりが足りないのだと再確認。

カンガルー日和/村上春樹

久々の再読。昔は「4月のある晴れた朝に100%の女の子に出会うことについて」がわかりやすくロマンチックで好きだった。

今回は「あしか祭り」のあしかのセリフの難解さが印象的。何度読んでもさっぱりわからない。

そういえば村上春樹の作品には動物がよく登場する。この本だけでもカンガルー、羊、あしか、むくどり、かいつぶり、犬、とんがり鴉。


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