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別府で温泉とビールと残りの地獄
ベッドでだらだらしていたら「なんとか公園で町内の運動会がありまーす」という車からのアナウンスが聞こえてくる。
この地域の皆さんはこの土地に根ざして生きているんだなと実感し、自分がもし移住することがあったとして馴染めるだろうかと想像する。
わたしは運動会には参加したくないし、お祭りもあまり好きじゃない。片隅でお酒でも飲んで座っているだけでいいならいけるような気もするが、「あの人は何もしない」と陰で文句を言われてしまいそう。
わたしは毎年夏が終わり涼しくなる頃に調子を崩す傾向にある。別府は昼こそ半袖の気候だが、夜は結構冷えるので、そのせいで少し気持ちが落ちているのかもしれない。そういえばここ数日は寝つきも悪い。
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Googleマップに「飲み屋の人推薦」というメモとともにブックマークされた温泉があり、どこの飲み屋の人にいつ勧められたのか全く覚えていないが、とりあえず行ってみる。おそらく前回、2〜3月に九州をうろうろしていたときのブックマークと思われる。
バスを待っていたら「どこに行くの?」と話しかけられ、そのまま立ち話。6年前に75歳で横浜から移住してきて、現在81歳の女性。
空気清浄機がおうちに3つあって、今日は電源コードをどうにかするための何かを買いにデパートへ行くとのこと。「この辺にはデパートもおしゃれなものもないから」と言っており、ときどきたくさん人やお店が集まるところに行きたくなるそう。おしゃれで若々しいチャーミングなおばあちゃま。
バスを降りる時、「目的地はあっちにありますよ」とさきほどのおばあちゃまが声をかけてくださった。マップを見たら反対側だったけど、おばあちゃまの優しさに比べたら数分の遠回りなんてどうってことはない。
一方、温泉には口うるさいババアがいた。「股を洗え」「ちゃんと股を広げろ、笑い事じゃないぞ」「肩まで浸かれ」などとにかくうるさいが、言われた通りにしたら「みんな熱い熱いうるさいのに、あなたは黙って肩まで浸かれるのね」と認められた。実家の44℃風呂育ちの賜物。
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「ここの温泉が一番だ」「とにかく素晴らしい」とババアは絶賛していたが、よくよく聞いたらこのあたりの人ではなく、そう頻繁に来るわけではないことが判明した。この風呂の主と違うんかい。
「風呂から上がったら体を擦れ」「毛穴から汚れが出るぞ」「椅子はそっちのピンクを使え」とババアは風呂を上がってからもうるさい。「ほら、さっき擦ったのにまた汚れが出てきた」と続き、「へ〜汚いんですね」と思わず口をついて出そうになり危なかった。
再びお湯に浸かっていると、「昆布の出し汁に浸かってるみたいだよね」とババアは急にかわいげのあることを言い出した。「おいしくなっちゃいますね」と軽口を叩いたら「おしりとかね」と返され、下ネタかなと頭をよぎったがニコニコしてやりすごす。
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クラフトビール屋さんでビールを飲む。湯上がり定番ビール3種。湯上がりの爽快さをイメージしたビールゆえにいまひとつ物足りない。わたしはどっしり飲みにくいビールが好き!と次に「ONI IPA」なるビールを頼んだらなかなか鬼でガツンとキいた。アルコール度数は9%もある。
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とり天と唐揚げのどちらにするか。熟考の末後者を選んだ結果、とり天は胸肉だから揚げ物とはいえさっぱり食べられるのだと身をもって知る。唐揚げは重い。
欲望のままに飲み食いしたが、胃がついてこない。これが中年の悲しみか……としょんぼりして店を出たが、少ししたら元気になったのでまだまだいける。
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昨日の地獄めぐりの残りの地獄に向かうバスに「Benefit for you Mae」という停留所があり、日本名はいったい……とドキドキして確認したら「ベネフィットフォーユー前」だった。なんじゃい。
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龍巻地獄は30〜40分に一度間欠泉が吹き上がる。水飛沫がすごいから石でフタをしているが、本来は30メートル吹き上がるらしい。
ドバイの噴水くらいの高さかなと思い調べたら、ドバイの噴水は150メートルもあった。全然違った。
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最後の血の池地獄は思ったより赤くない。昨日の海地獄で見た赤い温泉の方が鮮やかだったが、水に流れた血を想像したらこちらの方がリアルかもしれない。そういえばドラクエ6でアモールの水が血に染まった時もこんな色をしていた。
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こうして地獄めぐりを全てまわり終えた。
スタートの海地獄に最も華があり、堂々たるセンター。かまど地獄が善戦しており、その明るさから人気が出そう。センターの横にあり地味だが光るものがあるのが鬼石坊主地獄、その渋さで独特の地位を築くのが龍巻地獄、クセの強さから根強いファンがつきそうなのが白池地獄、キャッチーな名称からライト層の受けが良さそうなのが血の池地獄、もっと頑張れそうなのがワニ地獄こと鬼山地獄。
この感想にはアイドルのオーディション番組を見ている影響がたぶんに反映されている。
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その足で近くの温泉へ行きさっぱりしたのち帰宅。新しい宿泊者が来ていた。白人男性と日本人女性のカップルで、別府スタートで九州を回るそう。屋久島にはウミガメがいると伝えたら「Crush!」と男性はニコニコしていた。ウミガメといえばクラッシュなのは世界共通。
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