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コロンビア人男性のアプローチ

※2017年1月19日、オーストラリアにワーホリ中の日記の転載

オーストラリアにきた最初の1カ月、語学学校に通っていた。休み時間に同じクラスのコロンビア人男性と雑談をしていたら、突然"Can I say something?"と聞かれた。

彼の意図はさっぱりわからなかったけど、断る理由もないのでイエスと答えた。すると彼はこう言った。

"You are beautiful."

あまりの脈絡のなさに爆笑してしまった。「これがウワサに聞く女性に積極的な外国人か!」という新鮮なワクワク感。こんなにシンプルかつストレートに褒められたのも初めて。気恥ずかしくはあったけど、うれしかったから、素直にセンキューと答えた。

すると、"You are......"と彼は何か言葉を続けようとしている。単語が思い出せない様子で、目をつむり、指を鳴らす仕草をしながら考えていた彼が、パチンと弾いた指をわたしに向けながら言った。

"Exotic!!"(エキゾチック!)

指をパチンとしながら褒め言葉。日本人がやったら絶対寒いこの仕草が、しっかり様になっている。エキゾチックジャパン……!これが、外国人……!!

そしてその日以来、彼からの積極的なアプローチを受けるようになった。

ペアやグループで課題をやるときには必ず誘われるようになり、クラスメイト全員に同じ質問をして回るアクティビティでは「彼氏はいる?いない?オッケー。じゃあ本当の質問だけど……」とわたしにだけスペシャルクエスチョンが用意され、授業で習った表現を使った褒め言葉や口説き文句のメッセージが頻繁に届くようになった。

単純なもので、こうしてアプローチを受けるうちに、ちょっと彼のことが気になり始めている自分がいた。なかなか予定が合わなかったけど、デートしてみてもいいな、くらいには思っていた。

そんなある日、課外授業としてクラス全員でバーべキューに行くことになった。

みんなでテーブルを囲んで食事をしながら楽しく話をしていたけど、彼は隙あらば「結婚するなら日本人がいいな」といった風に、わたしへの好意をむき出しにしてくる。クラスに日本人はわたし一人だから、彼の発言の真意はバレバレだ。

「○○くんがあなたのこと好きらしいよ」なんて噂を聞いた日には「○○くんと話したらみんなにからかわれてしまうかもしれない」と○○くんを避けて通りたくなってしまうタイプの人間なので、みんなの前でこういうあからさまなアプローチをされると困ってしまう。端的に言えば、けっこう嫌だった。

そんなわたしの気持ちに気づくわけもなく、彼の調子は変わらない。それどころかだんだんエスカレートし、「ベッドで一人で寝るのが寂しいんだよ。素敵な女性をぎゅーっと抱きしめながら寝たいんだ。わかるだろう?」とわたしに視線を送ってきた。

ドン引きしてしまった。会社員時代はセクハラ発言の受け流し方に定評があったわたしだが、好意が込められている分、リアルさに気持ちが悪くなってしまった。

翌日わたしが学校を卒業して距離が遠くなり、そっけない返信から汲み取ってくれたのか、ほどなくメッセージがくることもなくなった。

こうして恋の予感はあっけなく終わりを迎えたが、あのバーベキューがなかったらどうなっていたんだろう。「恋はタイミング」なんて言うけれど、ひょっとしたらひょっとしていたんだろうか。

※2017年1月19日、オーストラリアにワーホリ中の日記の転載

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