香川のうどんと空海
宿近くの人気店で朝うどん。休日の昼に通りがかった時は絶望的な行列ができていたが、平日の朝ならすぐ入れる。
その足で散歩がてら香川県立ミュージアムへ。香川はとにかく空海推しで、1フロアの半分が空海の常設展示だった。
空海は瞑想をしたまま亡くなったが、数日後に髭が伸びていることが判明し、「大師は永遠の瞑想に入った」と考えられているそうな。
去年の秋に高野山で「お大師さまファンクラブ」なるものを見かけてなんじゃそりゃと思ったが、今はもう少しファンクラブが成り立つ気がしている。
今の香川に人類が初めて訪れたのは2万年前。瀬戸内はその昔盆地で、氷河期が終わり海水がくぼみに流れ込んだことで約7500年前に今の瀬戸内海ができたらしい。
香川の起源は、律令制が導入された700年ごろに誕生した讃岐国。明治に入り廃藩置県がなされ、当初3府302県もあった頃は高松県と丸亀県に分かれる。その後今の徳島や愛媛に編入されたりしながら、廃藩置県がスタートした約20年後に香川県として落ち着き、全国で香川県が最後の置県となったそう。
香川でなぜこんなうどんが食べられるようになったのか知りたかったけど、それは謎のまま。
ひとまず宿に戻ろうと歩いていたらお雑煮を出している甘味屋さんを見つける。祖父母が香川県にいるいとこ妻が「香川のお雑煮は白味噌の汁の中にあんこ餅が入ってる。うちは好きちゃう」と言っていたなと思い、食べてみる。
白味噌がしょっぱ甘く、あんこ餅は甘いので、甘いが強めのあまじょっぱい味という感じ。おいしいけれども、これはおやつ。
わたしは両親が東北出身かつ酒飲み一家の出なので、甘いよりしょっぱいものが好き。去年秋から西日本を中心に放浪する中で西に行くほど食事の甘みが強くなる実感があり、その度に自分の食事のルーツは東日本にあるのだなとしみじみ感じる。
九州にいたっては焼きおにぎりがみたらし団子みたいだった。それはそれでおいしいけど、わたしはしょっぱい焼きおにぎりが好きなのである。
昨日寒くて断念した栗林公園のライトアップをリベンジ。紅葉のライトアップはあまり好みではないけど、11日間限定の催しだそうなので行ってみる。
公園内には展示もあり、鬼瓦が並んでいた。厄除けとして鬼の形をした鬼瓦を屋根に並べるようになったが、隣の家を睨んでいるように見えるという理由で敬遠されるようになり、七福神や火を避ける意味で水を連想させるシャチホコなどが飾られるようになっていったらしい。
「あの鬼が我が家を睨んでいる気がする」とクレームが相次いだことで本来の鬼瓦の文化は廃れていったわけで、似たようなことは現代にもたくさんあるよなと考える。昔も今も、同じ人間だもの。
念願の香川とうどんについての展示もあった。雨の日が少ない香川では稲作が難しく、代わりに小麦栽培が盛んになり、さらにうどん作りに必要な塩やいりこ、醤油の名産地でもあったことがうどん普及のベースとなったとのこと。
香川で小麦の栽培が始まったのは弥生時代。そして800年ごろに空海が唐からうどんの元となる料理を讃岐に持ち込んだことがうどんの起源という説があるそう。
うどん屋は1700年ごろからあると考えられており、2002年にセルフ式讃岐うどん店が首都圏に進出したことを機に讃岐うどんブームが到来。2011年に香川県が「うどん県」を打ち出し、「香川=うどん」を不動のものにした。
そうして香川県は全国平均のおよそ2倍ものうどん消費量を誇り、20年間うどん生産量でも全国1位、全国のうどん生産量の23%を誇る地域となったとな。
たしかにはなまるうどんって小学生の頃はなかった気がする。最初に食べた時にめちゃくちゃおいしいと思ったような気もする。
ただ、新しい食習慣として讃岐うどん業界が提唱する「年明けうどん」が広まっているという説明はピンと来なかった。なんなら初めて聞いた。
「純白で清楚なうどんに紅を添えたもの」が年明けうどんだそうで、なんとなくうどんは純朴でピュアというイメージはあったが、清楚というのは解釈違いかもしれない。
県立ミュージアムで解決しなかった香川でうどんが食べられるようになった理由がわかって大満足。今日見た展示の中で一番おもしろかった。
紅葉のライトアップに色付きのライトを使う必要はあるのだろうか。紅葉を楽しむというのは植物の色の美しさを愛でるものであり、その色味を変えてしまうライトアップはいかがなものか。
そんなことを思いながら写真を撮ったら実物より写真の方がきれいで、なるほど映える写真を求める人たちにはウケるのかもしれないと納得してしまった。体験せねばわからぬことはある。
緑のライトは補色の効果があるのかもしれないと思ったけど、実際のところはどうなんだろう。
香川県は空海の産まれた地であり、さらにうどんの起源にも空海がからむときたら、そりゃあ香川県にとって空海は重要人物であり大切な偉人である。そんなことを考えながら「空海の道」という香川の米焼酎を飲む夜。
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