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2022年3月の振り返り

3月前半は久々の出張。昨年末からnoteの取材・執筆をやらせてもらっている神山まるごと高専の取材で、徳島県神山町を初めて訪れた。

宿泊した宿の温泉では、徳島県の別地域からやってきたという女子大生に話しかけられ、「看護師を目指しているが、本当はデザインをやりたい。どうしよう」という相談を受けた。

こういう相談を受ける歳になって、かつそれなりにちゃんと答えられるような大人になったんだなぁと感慨深い気持ち。そしてしっかりのぼせた。何か参考になっていればいいな。

そして3月後半は、祖母の旅立ち。別れの季節。お葬式翌日、一人カフェでサムネイル写真のレモンケーキ食べてたら「おばあちゃんに甘いものよく買っていったな」とふと思い出し、ボロ泣きしてしまった。

以下、3月に読んだ本の振り返り。3月頭に見た『劇場版 呪術廻戦0』がツボすぎて呪術廻戦の漫画とアニメに集中していたので読書量は少なめ。私は愛が重いロマンチスト。

『黒牢城』/米澤穂信 

戦国時代の風習や思考を踏まえたミステリー。当時の世界に入り込まなければ作れないであろうお話。作者の想像力がすごい。

「(乱世では)我が子を大切に思うこと自体が、世の習いに反し、悪因を生じる歪みであったのかもしれない」こんな悲しい一文があろうか。

体裁や見栄のくだらなさを感じると同時に、程度は違えど今の世の自分もそこから逃れられないわけで、これらが人間の根源的な悪癖なのだと痛感する。

『トリニティ』/窪 美澄

戦後の日本でフリーランスライター、フリーランスイラストレーター、専業主婦として生きた3人の女性のお話。ゴリゴリに仕事をし、能力も実績もあった二人でも代わりの人がいることにうちひしがれる。

実力以上に「一緒に働きたい人」であることがきっと大事で、でもがむしゃらに仕事をするうちにストレスから神経は張り詰め、ピリピリし、人は離れていく。いいようにベテラン扱いされた結果、人が近づきにくくなる。そうして仕事はなくなり、孤独になっていく。

 結婚、子ども、仕事の全てを手に入れて幸せに生きることがなんでこんなに難しいのか。幸せに生きるために家庭を選ぶ女がなんでこんなに負い目を感じなければいけないのか。

ラストのライター・登紀子の赤入れに泣いてしまった。こんなに頑張った人が報われない世界を許せない

『ワンダフル・ライフ』/丸山正樹    

障害者として生きることに向き合った小説。

重度の脳性麻痺の人でもネット上であれば健常者と変わらない、むしろ軽薄な健常者より知的な会話ができる。それでも「知的障害者に人格はあるのか」と心ないことを言われ、時に殺されることもある。

そんなことは許されないと思うし、許したくもない。ただ、もし自分が事故に遭って日常生活を送ることができない重度の障害を抱えたとしたら。そのときに安楽死が認められていたとしたら、自分はどうするのか。自分の心の矛盾の元にある醜悪さを突きつけられる。

タイトルの元になっている映画『素晴らしき哉、人生!』で「主人公は自分が存在しない世界で、自分がいないことで困っている人を見る」的な話があったけど、「自分が存在しないことでプラスに転じた人もいるのでは」と思ってしまう。自己肯定感が低いのか、ただ性格が悪いだけか。

『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』/阿佐ヶ谷姉妹 

タイトルの通りのほほんとした暮らしのエッセイ。ご近所付き合いやこたつとふとんの6畳一間の姉妹の生活など、本当に現代の都心の話?という雰囲気。

テレビで見るお二人そのままのイメージの文章で和む反面、生き方や幸せの在り方を考えさせられる。

『いのちの車窓から』/星野源

最初のエッセイ『そして生活はつづく』から読んでいくと、星野さんが孤独を受け入れ、成熟していく様子が見えて「よかったなぁ」と思うと同時に、自分も希望を抱く。

今の星野さんからは人柄の良さと多才さを感じるけれど、それは最初からあったわけではなく、文字通りがむしゃらに不器用にもがきながら体得していったもので、そう言う意味でも勇気づけられる。

新垣結衣さんについて結婚前に書かれたエッセイにニコニコしてしまった。

『その手をにぎりたい』/柚木麻子

タイトル通りのお話。すっごいエロティック。「ひとりで寿司屋のカウンターに座る」という今年の新しい目標ができた。


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