半径30㎝で伝わる香りと仄かな好意

身体の匂いとうまく調和する香りを見つけると、嬉しくなります。

誰かがつけこなしていた良い香りでも、自分には合わなかったことがありませんか? そんな時は、香りだけが肌の上で浮いたような違和感を感じちゃう。

自分の匂いであることを装ってくれるような、等身大の自分に寄り添ってくれるようなフレグランスが好きです。

つけた瞬間から肌に馴染み、スイッチを切り替えてくれる。

DIPTYQUEの練り香水は、その願いを期待以上に実現してくれる良き相棒です。

いつか、夕方に約束をした女友達とパウダールームに寄った時のこと。
「ちょっと、気分転換」と言って練り香水を使う彼女の姿に、グッと来たことがあります。

長身でショートヘアの彼女が、小さなケースをポーチから取り出し、指先でくるくると香水を取り、手首や首筋に香りを纏っている。

「香水=液体」の固定観念を崩された瞬間でした。

パウダーのような感触で肌に馴染みやすく、量を調節しやすいので重宝するのだそう。
曰く、「首筋とかひざ裏とか、内ももとか。身体の内側につけるとちょうど良いよ」と。

メイクを直すように、さらっと香水をつける姿がとても魅力的だったんです。

「よしっ、行こ!」と笑う彼女から、「思わず振り返るほど」の距離では感じることができないくらい、ふわっと控えめに、甘い香りがしていました。

半径30㎝の距離まで近づかないと分からない、上品で大人っぽい良い香り。

彼女、あざといな! と思いつつ、その日の帰路には「練り香水 おすすめ」と検索していた自分がいます。

その香水どこの? と訊いたものの、彼女の返答は「内緒。」と一言。はぐらかされると余計に気になって、もう嗅ぎ当てるしかないじゃないですか。

後から聞いたら、海外のお土産だったので自分もどこのものか分からなかったのを、ミステリアスに誤魔化したとのこと。やられた!

その頃DIPTYQUEの香水に憧れていたこともあり、運命の練り香水と出会うのにそう長くはかかりませんでした。

DIPTYQUEのソリッドパフューム。

高級感のあるケースに一目惚れ。アンティークの小物入れのようなデザインは、目に入るたび凛とした気持ちになります。ポケットに入るサイズで、気軽に持ち歩けるのもうれしい。

DIPTYQUEの香りは男女共用で使えるものが多いところも気に入っています。それってきっと、万人受けしやすい香りということ。

実際に共有してみたことは無いけれど、香りをシェアできるっていいじゃないですか。シャンプーやボディーソープがおそろいだと、急に身内感が出るのと一緒です。知らんけど。

私は、ボディクリームをせっせと塗りこみ保湿をした肌に、ちょこんと練り香水を仕込むのが好きです。彼女の教えのとおり、ひざ裏や内もも、首筋など、体温でふんわり香ってくれそうな場所を選びます。先輩の教えは一通り実践してみなければなりません。

イラストレーターのたなかみさきさんが好きなのですが、彼女が描く女の子って、ひじとかひざとか、節々がピンクに塗られているじゃないですか。

あのピンク部分の内側に、練り香水をつけるイメージです。上気した肌の体温で、ようやく香りが伝わってくる。けしからんあざとさです。

気温が高くなるこれからの時期は、できるだけ香水を避けている私ですが、夕涼みのソリッドパフュームはアリだと思っています。ただし、胸より下、香りの出発点が顔から遠くなるような場所で。

宇多田ヒカルと椎名林檎の「二時間だけのバカンス」をBGMに、一人で過ごす日曜の午後。

そういえば最近香水使っていないな、と思い、書くことで初心に帰ろうとしている嫁でした。


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