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Book
わたしは数年前までまったくと言っていいほど本を読まなかった。というか読めなかった。なぜか読み始めると活字で眠くなってしまう体質だった。だから夏休みの宿題の定番である読書感想文は、本の冒頭と後書きしか読まず最終日に切羽詰まって書いていた。
でもあるときうまく眠れない時期があった。薬を使う手段もあったが、もっと自然な感じで眠れる方法はないかと思っていた。そこで思いついたのが読書だった。
最初はそんな動機から本を読むという行為がスタートした。
しかし徐々に読み進めていくと本の中にある言葉の世界に救われて、本を読むことが楽しくなっていた。まったく本を読まなかった世界から、寝る前に本を読む世界が徐々に広がった。
その世界を手に入れたことで生活にゆとりが生まれ、自分のメンタルの指針にもなった。身体がひどく疲れていると、わたしはまったく本が読めなかった。だから本を読みたいために、頑張りすぎることをやめた。これはわたしにとっては大きかった。
生きていくとこうやって、今までは無縁だと思っていたことが気づいたら自分の一部になったりする。それは何気ないきっかけからにすぎない。でもきっとそれは来るべくして来たタイミングなのだと思う。
わたしは今再び読書への熱が加速している。でもそれは、これから訪れるであろう計り知れない悲しみに向けて、それを少しでも軽減できる方法がないか、そんな言葉はないか探しているからだと思う。けどやっぱりしっくり来るものがなくその時を迎えることはなんとなく想像がついている。それでも今日も本を読もう。
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