超短編シナリオ「新刊」

更新が滞ってしまいました……。駄目ですねー。ですので3つのシナリオを一気にアップします。長いのが続いてたので、超短いやつを3つ。この「新刊」はミュージックビデオのシナリオをイメージしました。何かノスタルジックな曲を実際に聞きながらでも脳内再生でもいいのでイメージしながら読んでくださるとうれしいです。

〇中都市の駅
松田君久(25)が、改札から出てく
る。手には大量の漫画本が入っている
紙袋。
松田N「久しぶりに、子供の時住んでいた街
にやってきた」

〇そこそこ大きい本屋
店員に追いすがって営業をしている松
田、何度も頭を下げている。
店員、首をふってどこかへ。松田の残
念そうな顔。

〇商店街
トボトボ歩いてくる松田。あるシャッ
ターが閉まった店舗の前で立ち止まる。

〇商店街(回想)
同じ場所。そこは古い小さな本屋。
小学生の松田が新刊コーナで目を皿にしてお目当ての漫画を探している。
初老の店長が来る。
松田「あの……、「宝さがし」の新刊ありま
すか」
店長「それは明日発売だね」
松田「そうですか……」
松田、残念そうにトボトボ帰る。
その姿を見ている店長。
店長「ちょっと待って」
店の奥から「宝さがし」の新刊を持っ
てくる。
店長、人差し指を唇に立て「シー」の
ポーズ。
割れんばかりの松田の笑顔。
   ×   ×   ×
雨の日。松田が店の入り口から店長を
覗き込む。
店長、小学生の孫と話していたが、松
田に気付き「宝さがし」を手に持ち笑
顔で手招きする。

孫、松田を見て複雑な表情。
×   ×   ×
レジで「宝さがし」のレジを打ちなが
ら楽しそうに話をする中学生の制服を 着た松田と店長。
×   ×   ×
夜。
ちらちらと店の入り口を見ている店長。
今日の日付に〇が付けられたカレンダ ーを時折見ながら心配そうな目。
机の引き出しには「宝さがし」の新刊。
×   ×   ×
車に乗っている松田。膝には遺骨。悲しそうな表情の松田。

〇商店街
シャッターを見つめる松田。帰ろうと
する。
孫「あの……」
振り返る松田。

青年になった店長の孫がいる。
小学生時代の孫の顔のフラッシュバッ
ク。

〇店長の家・リビング
店長の位牌に手を合わせる松田。
孫が何か気づき、奥の引き出しに向か
う。
大きな紙袋を持ってくる。
中に入っていたのは、数十冊の「宝さ
がし」。どれも透明の袋に入れられ、
保存状態が良好。

孫「ずっと発売日の前日に用意してて、これ
だけは売るなよって。取りに来るのをずっ
と待ってました……」
「宝さがし」を手に取る松田。
涙が表紙に落ちる。

〇商店街
シャッターがおりた本屋の前に来る松
田。
深々と頭を下げる。
清々しい顔。松田は両手に紙袋をもち
ながらその場所を後にする。

完 

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