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見えにくいその暗闇で

 こういうことが、女性特有のがん(または女性に多いがん)を抱えたサバイバー以外にもどの程度起こっているのか、わたしは知らない。
 でも、いい加減書き留めておくべきかと思い、スマホに文字をぽつりぽつり落としている。

 SNSが普及して、互いの距離を保ちながら同病の人々と交流することは、かなり容易になったのではないかと思う。
 患者同士のみならず、医療従事者のアカウントから情報を得たり、やりとりをすることも出来るようになった。

 やりとりをすれば、それまで病院とは縁遠くて、さらに医療従事者が身近にいなかった人でも、多分安心感を得られたりするのではないかと思う。
 そう、それは多分良い側面をたくさん含む。
 立場の違いはあれど、同じ人間だという温度のようなものが伝わり、治療に前向きになれる人もいるのではないか。

 しかし、残念ながら、医療従事者を騙って近付いてくる、よろしくない人もいるのだ。

 Twitterでの話。
 いつの間にかフォローされていて、DMが届く。お勧めの医師だの病院だの、それらしい内容で。
 アカウント名は診療科であったり、医師らしい名前だったり様々だ。
 声を掛けられて相手のアカウントを見に行くと、医師では有り得ないような画像がたくさん。所謂、肌色の多い、プライバシー保護の欠片もないような。
 または、医療案内にかこつけて、恥辱を伴うような話をするなど。

 怪しげな健康食品や健康法をすすめるだとか、宗教に誘導するだとか、不安を煽るような言説をゴリゴリ押し付けてくるだとか、そういうものは目につきやすい。その分、対処法も色々と得やすいだろう。
 だが、目につきにくいところで、女性サバイバーは度々ハラスメントに直面している。

 そんな話は何度も繰り返し目にした。わたし自身、幾つものそうした悪質なアカウントからフォローされてきた。
 見つけ次第サヨウナラをするけれど、雨後の筍の如く復活してきりがない。
 今はもう、それらしいアカウントを先回りしてブロックするようになった。ミュートワードも、悲しいかな充実している。

 病気と向き合うだけでなく、ハラスメントまで。

 患者は常にもっと寛容であれ、賢くあれ、明るくあれ。
 それは確かに理想的ではあると思う。そうありたいし、そうつとめているつもりだ。
 だがそんなキラキラした言葉の裏側、その陰で、何でこんなことまでされにゃならんのかと肩を落としている現実があるのだ。

 怒りは良くないなどと耳にするけれど、尊厳を傷つける相手に怒りを感じるなというのは冷酷だ。
 怒っていい。悲しんでいい。それは自然な感情だから、押し込める方が不自然だ。

 もっと病状がつらい人や、告知されて日の浅い人には、あまりに酷なことだ。外出や相談もままならない中で気軽に交流したいのに、余計なことに煩わされてしまう。
 それを思うと、本当に悲しい。

 もしも被害にあったら、すぐに逃げて欲しい。目に付かないようにブロックして、周りに知らせて欲しい。
 ひとりで立ち向かうのは、きっと重いから。
 
 

なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」