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先達はあらまほしきものなり

尊敬する先輩が本を上梓されまして、当時を懐かしく思い出しながらも仕事をするにおいてとても大切なことを再確認し、背筋が伸びる思いです。

40歳でGAFAの部長に転職した僕が20代で学んだ仕事に対する考え方 /
寺澤 伸洋

いつ誰に出会うかは、人生でとても大切な要素だなと最近ますますそう思います。今まで私を導いて下さった方々に心からの感謝をこめて、思い出話です。

「ゴールはなんですか?」

社会人になって最初の上司、部長のNさんとの出会いの幸運は筆舌に尽くし難く、いつも、いつまでも私の背中を押し続けてくれています。

Nさんは根本的な課題解決ができる方でした。仕事の仕方、物事の捉え方を相当な時間を割いて徹底的に教えてくださいました。話が抽象的で置き換えられる経験が少なかった新入社員の私に、その話を実務経験へとつなげて下さったのは3つ年上の先輩のTさん、そしてのちに上司になるOnさんでした。

配属部署へのピカピカの初出社、Nさんに初めてお会いした時にうかがったお話を今でも鮮明に覚えています。

「ゴールはなんですか?いつもそのことを考えて仕事をしなさい。」

新入社員が経営企画部でスタートというのはそのメーカー販社では異例で、何をどうやって売って利益を上げているのかもよくわからない状態で、搬入設置にかかる物流改善や基幹システムの入替など、会社の基盤、根幹にかかる大規模な改善活動から社会人経験がスタートしました。最初はもう何を聞いても肚落ちしないことばかり。さっきの会議の内容と自分がやるべき作業が頭の中で繋がらない、そうして内容もあんまりわかってなかったことに後から気づく。しまいにはわかるってどういうことだかわからなくなって呂律が回らなくなるくらい頭がショートしてしまうんだけど、めちゃくちゃ賢くて怖い先輩にビビって三度同じことを聞けない。とにかく頭に浮かんだことを鉛筆で紙に書きなぐってはまとめてみて、NさんやTさんにアドバイスをいただいて、さらに考えて…の2年間、腐ってる暇がないくらい苦しくて、苦しいんだけどワクワクが止まらない、今でも信じられないような充実した日々でした。後々Onさんのチームに入れていただいたときに自分の可能性の間口がガバッと広がったのは、確実にこの2年の土台があったからでした。

Nさんは理路整然、マイペース、そして穏やかな方でした。メールを読まず、いつも歩き回って色んな部署でたくさんの人と話をして情報収集するスタイルだったので席を空けがちで、稟議書を溜め込むしメールでの問い合わせに無反応なので、起案送信元、総務部からは毎日のように催促が来ていたけれど、先輩と私には根気強く時間を割いて考え方を惜しみなく与え、自分で考える力と考えたことを実現する力を育ててくださいました。ご自身の時間の使い方を徹底的に選択・集中されていたのが印象深かったです。また、いざという時には真っ先に一番下のメンバーから守ってくださいました。大きな台風が来る時は絶対に何時には帰りなさいと真っ先に私達のところに飛んできて指示してくださいました。無鉄砲で不出来な部下だったのに怒鳴られたことが一度もありませんでした。飲み会の鍋奉行を買って出てくださった時、鍋の中の具材を菜箸でとても優しく扱っておられた姿が忘れられません。私も鍋の具材のように大事に育てていただきました。最初の上司だから強烈な刷り込みもあったのでしょうけれど、そういうのがリーダーだと思っていたし、今もあの人が一番のリーダーなのは変わりません。

ある日、ストレスでいつも苦しそうに咳込んでいたNさんに、どうして他の部署に首突っ込んでまで、そんな苦しそうに咳するまで仕事するんですか?と聞いたことがありました。その時の答えは「うーん…プライドかなぁ…」と。

プライド…?解決した問題の数でお給料が増えるわけでもないのに、それだけのためにこんなに身を粉にして働くなんてどういう種類のプライドですかと当時は思ってました。でもNさんの考え方と、TさんとOnさんの How Toのおかげで業務が回り始める喜びを知り、悪い例も経験した今だから少しわかったことがあります。山があるから登りたい登山家、病気があるから治したい医師、目の前で起きていることをどこまで「自分ごと」として関わっていけるのかが醍醐味で、職業人としてのプライドという意味だったのではないかと不惑を迎えてようやく思い至りました。

(勤め先のこと書いてたので一部編集)

今も頭の中のNさんとお話します。「ゴールはなんですか?」「目的、目標、範囲、体制、スケジュール」「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」ほんとにそれでいいの?漏れはない?もっと考えて。

事務所のコピー機の給紙ボックスを開けて、A3の紙を2、3枚くすね、唸りながら鉛筆を動かす、どこに行っても何をやっててもやっぱりそんな毎日です。

あの時、Nさんに出会っていなかったら、Tさんに噛み砕いて解説してもらってなかったら、Onさんのチームに配属されてなかったら、作業を反復して満足して居たのかもしれません。それも一つの幸せだったのでしょうけれど、私にとってはこっちの方が性に合った人生だったと思います。

目的・目標があればそちらへ向かっていけるし、良くも悪くも必要な時に必要なものは実は目の前にあるのだと、そしてそこに起こる出会いの化学反応で先の道が拓けていく。仕事だけでなく、生活でも応用できるとても大切な考え方を教わることができたこと、感謝の念に絶えません。

Nさんと、Nさんの教えを約束通り本にして出版されたTさんに心からの感謝を込めて。多くの方に愛読され、道標となることを心からお祈りします。

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