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外国ルーツの人にきく 【食べたら元気になるごはん】第1回(前半) 如遠(ルエン)さんの「鶏肉と生姜とネギのお粥」

どうにも疲れがたまっていて、このままだと体調崩しそう……。
ふと気づくと、すべり台のてっぺん。
あと一歩のバランスで、なんとか自分を保っているようなときがあります。
そういうときは、できればちょっと休んだほうがいいです。

そして、なんとか自分を励まさねば。

そんなとき、私はよく鍋焼きうどんが食べたくなります。

商店街にあるような、昔からある蕎麦屋さんの鍋焼きうどん。
年季の入った小さな土鍋の中に、おいしいつゆをふくんだコシのないうどんがやわらかく煮えていて、上にはネギとかまぼこ、エビの天ぷら。
蓋を開けると湯気とかつおぶしの香りがふわ〜っと立ちのぼり、全体はまだグツグツ煮えている。
そしてここが重要なんですけど、できればたまごもほしくて、それはまだ半熟で、黄身はかたまりきってないのがいいです。

ライターの青野棗(あおのなつめ)です。

「外国ルーツの人にきく〜食べたら元気になるごはん」という企画に取り組んでいます。

日本で働く外国ルーツの方々に、風邪をひいたときや、落ち込んだとき、ものすごく疲れたときに食べたくなる料理を教えてもらいながら、日本での暮らしについてインタビューするという企画です。

第1回目にお話を伺ったのは、香港出身の王如遠(ワン・ルエン)さん。
如遠さんにこの鍋焼きうどんの話をしたら、
「ええっ? 風邪ひきそうなときに、麺類を? ありえません〜」
と驚かれました。
「ええっ?」
私も驚きました。

もしかしたら、麺類の定義(?)が、香港と日本では違うのかもしれません。
香港の麺類はコシがあって、日本のやわらかいうどんとは違うのかも(あ、でも、日本でも地方によって違いますよね。特に私は関西出身なので、うどんはやわらかいものだったのです)。

如遠さんが体調を崩したとき、風邪をひきそうなときに食べたくなるのは、
「鶏肉と生姜とネギのお粥」。
これは彼女が香港で、子どもの頃からよく食べていたお粥だそうです。

第1回目はこのお粥の作り方を教わりながら、彼女の日本での暮らしについて、お話をうかがいました。

*この記事は2020年3月に品川区の隣町珈琲より創刊された地域文芸誌『mal"01』http://tonarimachicafe.jp/contents/books.htmlに掲載されたものに、加筆、修正しました。

*この取材とインタビューは、2019年12月に行いました。インタビューの内容は、その当時の話が中心となっています。

如遠(ルエン)さんの「鶏肉と生姜とネギのお粥」

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王 如遠(ワン ルエン)さん 
香港出身の30代。趣味は読書と旅行。東野圭吾の『新参者』は、中国語でも日本語でも読みました。日本で特に好きなものは、お鮨と温泉。
かなり苦手なものは、とろろ、納豆、満員電車。


香港出身の如遠さんは、2016年に来日後、神奈川県にある日本語学校で2年間学び、卒業後は東京のウェブメディアの会社に就職しました。
アジア向けに日本の魅力を紹介する仕事で、ライターと編集をしています。

同僚には、日本人のほかに、インド、ベトナム、インドネシア、タイ、中国、台湾、イギリス、などからの人たちがいて、共通語は日本語だそう。
どの国の人も日本語で取材をし、それを自分の国のことばに翻訳して、ネットで発信する、という職場だそうです。

以下は、如遠さんのお話です。
日本での食生活を中心に、お話をうかがいました。
(著者注:前半は、新型コロナのことがある前の話になります。現在の彼女の話は後半にありますので、長いですが最後まで読んでもらえるとうれしいです)

* * *

日本のコンビニは面白い

就職してからは、食事はほとんど外食になりました。
学生のときは、料理もよくしていたけれど。
朝は、時間がないときは、コンビニでパンを買って、コーヒー買って、会社で食べたりします。

日本のコンビニは面白いから、毎日行きますよ。
私からすると、不思議なものもいっぱいあって。

チャーハンのおにぎりを見つけたときは、驚きました。
私にとってチャーハンは、絶対、アツアツのもの。それが、冷めてて、ギュッと固めてあるなんて。

あと、焼きそばパンって、人気あるんでしょう?
あれもびっくりしました。だって、餃子をパンの中に入れるのと、同じことじゃない?(笑)

お昼は会社の近くのお店で定食を食べたり。
夜はお弁当を買って帰ったりもします。

日本に来て、めっちゃ太っちゃいました。
おいしいものがいっぱいあるから。
特に、おいしいお菓子がいっぱい。

風邪をひくとお母さんが作ってくれた「鶏肉と生姜とネギのお粥」

普段は外食だけど、体調が悪いときとか、風邪をひいたときには、この「鶏肉と生姜とネギのお粥」を作ります。

小さい頃から、風邪をひいたときには、お母さんがこのお粥を作ってくれました。

一緒に暮らしている台湾人の友だちが風邪をひいたときにも、これを作ってあげましたよ。

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「鶏肉と生姜とネギのお粥」 材料
(すべてお好みの量で良いのですが、一応の目安を書いておきます)
・鶏もも肉1枚
・生姜ひとかけ(大きめのもの。薄切りに)
・米(洗わずに、そのまま)半カップくらい
・水400ccくらい (具の全体が八分目ほど、かぶるくらいの量)
・ネギ1本か2本(刻んで器に先に入れておく)


鶏肉は、もも肉を使います。
切らないで、大きいまま、「がわ」を下にして焼きます。
あれ?「がわ」じゃなくて、「かわ」だっけ? 
そうだった。「そとがわ」って言うけど、「皮」は、「かわ」ですね。

油はひかずに、鶏肉「ご自身」の脂を出すようにして、焼きます。
え? 鶏肉には「ご自身」って言わない? 
そうか、「鶏肉さま」みたいになっちゃうのか。
じゃあ、鶏肉さまに、ご自身の脂を出していただいて、焼いてください(笑)。

へらでお肉をぎゅっと押さえつけるようにして、脂がいっぱい出るように。
これ、「鶏油」って、香港ではビン詰めにして売ってるくらい。体にいい、って言われています。

(注:取材時はフッ素樹脂加工の深めのフライパンを使いました。鉄の鍋で作る場合は、最初に煙が出るくらい熱してから鶏肉を入れると、脂もよく出てくっつきにくいようです。その際、鶏肉は皮の側から入れるのを忘れずに!)

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皮の方がいい色に焼けて、身の方はまだ赤い状態で、いったん取り出します。

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これを、切ります。
好きな大きさでいいです。
私はいつも、ちょっと大きめに。

この鶏から出た脂で、薄切りにした生姜を炒めます。
生姜からいい香りがしてきたら、切った鶏肉を戻して軽く炒め合わせます。

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そこに、お米を入れます。
お米は洗わずに、そのまま。
量は適当です。
今回は、半カップくらいかな?

そこに水を、全体がかぶるくらい入れます。
今、400ccくらい入れた? いつも計らないから。
様子見て、水が少なかったら、あとで足せばいいし。
多かったら、長めに煮るとか。

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蓋をして、基本は弱火で30分。
吹きこぼれやすいから、蓋は少しだけ空けておくようにしてください。

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刻んだネギを器に入れて、そこにアツアツのお粥を入れて、できあがりです。

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ネギは生のまま使うほうが風邪に効くと思うけど、苦くて嫌だったら、お鍋に入れて、ちょっと煮たらいいです。

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最後に味見したとき、もう味ができてると思ったから、今日は塩も入れなかったです。
でも、お好みで、最後に塩を足してください。
生姜はちょっと齧ったり。残してもいいですよ。

* * *

後半につづきます。




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