見出し画像

少し前に牛乳をやめた、でも「買いかた」で応援にもつながるんだ~未来への手がかり『しあわせの牛乳』

「しあわせの牛乳」を読んで、改めて自分の「買いかた」を考えた話。

「未来への手がかり」は、社会のこと、会社のこと、自分のこと、未来を考えるヒントになった本を記録するマガジンです。

少し前から家でのミルクに牛乳を買うのをやめた

家ではもっぱらアーモンドミルク。味はオーツミルクの方が好きだけれど、栄養面を考えてアーモンドミルク派に。
(ミルクだけでは飲まないので、基本的にコーヒーのお供。どちらもコーヒーにはぴったりです。ちなみに豆乳はコーヒーに合わないと思っている。)

きっかけは夫に「もう牛乳やめようよ」と言われこと。夫はさらにその少し前から"ほぼほぼ"ヴィーガンになっている。背景には家畜の飼育環境による動物たちへの負荷と地球環境への負荷を考えるようになったことがあった。

「アニマルウェルフェア」という言葉を聞いたことがあるとおもう。苦痛の少ない環境で健康的な生活ができるよう家畜を育てる概念だ。

アニマルウェルフェアの基本原則に5つの自由というものがある。

「飢え、渇き及び栄養不良からの自由」
「恐怖及び苦悩からの自由」
「物理的、熱の不快さからの自由」
「苦痛、傷害及び疾病からの自由」
「通常の行動様式を発現する自由」

 一見、当たり前の項目のように見える。でも日本はアニマルウェルフェアの後進国だ。

たとえば養鶏。養鶏には4つの飼い方があるそうだ。上から順にアニマルウェルフェア度が高い。「放牧」はその名の通り放し飼い。草地に家畜放ち、自由に牧草を食べ、家畜の糞が土壌を豊かにする。

「平飼い」は囲いをつけた範囲内で、家畜を平らな地面の上で放し飼いの状態で飼育すること。放牧のように自由に動き回れます。「エンリッチドゲージ」「バタリーゲージ」はゲージの広さなど条件が異なりますが、いずれもゲージで家畜を飼育する。

養鶏の育て方

そしてなんと驚くことに、日本の採卵養鶏場では92%が、バタリーゲージというすし詰め状態のカゴの中で飼育する手法がとられているそうです。

牛の幸せを考え抜いた酪農家がいた

そんな中で出会ったのが冒頭の本。「しあわせの牛乳」は、岩手県岩泉町の酪農家中洞正さんの半生のお話です。周りに無理だ、もうやめとけ、と言われながらも、自分の理想の牧場・放牧酪農を実現した中洞さん。

初めて効率性を求める近代酪農に出会ったのは大学生の頃だったそう。都会の酪農を見るためにわくわくした思いで埼玉県の牧場にきたときのこと。100頭以上もの牛が、1日中牛舎を出ることなく育てられている様子に圧倒されました。

牛は自由に歩くこともできず、毎日決まった時間に人間から与えられるえさを食べる。牛は運動もできず、本来のえさである草も十分に食べられないため、人工的に栄養を加えた配合飼料や成長を早めるホルモン剤、病気を防ぐための抗生物質まで含まれるえさを食べていた。

どんどん太らせて牛乳をしぼり、牛乳が出なくなったら肉牛として売り払う。中洞さんは「おかしな牛」も多くいたといいます。目が見えなかったり、立てなかったり、すぐに体を壊したり。

中洞さんはさらに近代酪農を学びながらも、「大好きな牛たちがまるで機会のようにあつかわれている。これが本当におれがやりたい酪農なんだろうか…」と考えるようになりました。

その後、中洞さんは、「山地酪農」という放牧手法に出会い、7000万円という大きな借金をしながら、何年もかけて自分の理想の牧場「なかほら牧場」をつくりあげていきました。

消費者として「選ぶ人」でありたい


よし、この調子ならやっていける、と牧場経営が軌道に乗り始めたとき、農協の牛乳の買取基準が変わるというできごとがありました。乳脂肪分の基準が3.0%から3.5%に変わり、その基準を満たさない牛乳は半額で変われてしまうようになりました。

自然の草には穀物のえさよりも水分が多く含まれているため、これをもとにした牛乳は、乳脂肪分が低くなってしまいます。

どうしても基準を満たせず、これを機に、全国で200ほどいた山地酪農の酪農家はほとんどが姿を消してしまったそうです。

中洞さんも随分苦しみましたが、あることがきっかけで、「価値のわかる人に直接届ける」仕組みを何とかつくりあげました。
(今でこそオンライン販売はもちろん、東京では銀座・松屋や日本橋・タカシマヤでも買えるようになりました)

山地酪農は、動物が自由に健康的に生きられるだけではなく、糞尿の処理やえさやりが不要となるため人間の肉体労働が減り、また糞が土壌を自然に豊かにするため、人・動物・山がともに生きる環境につながります。

中洞さんの牛乳を選ぶ人がいなければ、中洞さんも酪農を諦めざるをえませんでした。

スーパーのものより少し高いので、いつも買うというわけにはもちろんいかない。私の場合、普段はアーモンドミルクで、でもやっぱりたまには牛乳が飲みたいと思ったら放牧されている牛の牛乳を飲む。

牛乳にしろ、野菜にしろ、洋服にしろ、10回に1回は地球や動物や人間のことを考えて買う。そんな消費者でありたいし、地域に中洞さんのような方がいたら、全力で応援できる自分でいたい。

そんなことを考えた一冊でした。

(家畜による環境負荷にはその他にも様々な要因がありますが長くなるのでその話はまたの機会に)

この記事が参加している募集

推薦図書

買ってよかったもの

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?