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なぜ、名もなき非営利団体職員が副市長に内定したのか

さて、前回、安芸高田市の副市長に内定したけれど議会に否決され実現しなかったという話を書きました。

内定報道時には商社の経歴ばかり取り上げられましたが、面接時に聞かれたのは現職・RCF(※)での経験でした。今回は面接やその後の議員との意見交換会などを通じて感じた、コーディネーターへの期待を紐解きたいと思います。
(※)一般社団法人RCFは、地域や社会の課題に対し、行政や企業・NPOと連携し、事業を企画・推進する団体です。団体HP:https://rcf311.com/

副市長は市における事務方のトップにあたります。市長のビジョンの具現化のため、事業の企画・推進・調整を担っていく立場です。そのような中、RCFでのコーディネーターという経験・知見に対し、主に3つの期待があったように感じています。

1. 課題の設定と事業化

今回の公募では、副市長二名体制における「攻めの要」として、改革・未来への投資を牽引する役割を期待されていました。

市長が就任して10カ月、ある程度注力の必要がある分野は見えているものの、改革の加速にあたりどこから攻めていくべきかは判断が必要なところとなります。

例えば今回の副市長ポジションの募集要項では、下記が注力分野の例として挙げられていました。

▼攻めるべきポイント
・観光分野(『ひろしま安芸高田神楽』や『サンフレッチェ広島』との連携など)
・教育分野(教育カリキュラムの特色づくりなど)
・医療福祉分野(各種支援の最適化、地域医療の充実など)

一方で市長は、まちのビジョンとして「世界で一番住みたいと思えるまち」を掲げています。

ビジョンを考えたときにどこから攻めるべきか

住民のQOLの向上を優先するか、歳入源となる移住人口の確保を優先するか。短期的に効果のでるものからやるか、中長期的な成長に資するものからやるか。インパクトの観点から優先度を考えることも必要です。

一方で、施策の実現には地域の人材の協力が不可欠です。地域の事情や人間関係を見極め、インパクトとの兼ね合いから、優先課題を設定し、関係者との合意形成をはかる。ここが非常に重要になります。

事業化にあたりここを見誤ると、その後が立ち行かなくなってしまいます。
コーディネーターが最も力をいれなければいけないプロセスの一つです。

市政における重要度・優先度と関係者の状況を見極めながら課題を設定する力や課題をふまえて関係者を巻き込みながら事業を組み立てる力が求められていたのだと思います。

2. 外部リソースの調達

人口減少下の地域においては、ヒト・モノ・カネとあらゆるリソースが不足します。事業の組み立てにあたっては、外部からのリソース調達が必須となります。

・企業と連携して、地域の核となる事業者の人材採用を支援する。
・NPOと連携して、新たなこども支援の枠組みをつくる。
・国の制度を活用し、プロジェクトマネジャーを企業から派遣してもらう。
・企業版ふるさと納税など国の制度や、クラウドファンディング等民間のプラットフォームを活用して資金を調達する。

一例ですが、いずれも、RCFが取り組んでいることです。
改革のために必要なものを地域内で揃えてくれ、というのは当然難しく、外部から必要な人材や資金を調達するノウハウやネットワークが求められることとなります。

これまで、副市長はその市でキャリアや実績を積み重ねた方や、中央省庁から派遣された方がその役割を担ってきました。これらの方々は外部のリソース調達のノウハウを有しています。一方で、中央省庁でも人員削減が進み、地方自治体に派遣できる人材は減少傾向にあります。

そのような中、民間人材の公募、という新たな手法が注目を浴びつつあります。今回の安芸高田市の公募もエン・ジャパンさんが実施する全国で3番目の公募事例でした。

(ちなみに公募第一号で選ばれた四条畷市(大阪府)の林有里副市長は同世代であり、同じく子育てをする母親でもあります。)

公募という手法が広がるにはもう少し実績の積み重ねが必要ですが、民間人材の登用は今後も進んでいくと思われます。その中でも、外部のリソースを調達するノウハウを有するか、は重要な観点の一つとなるでしょう

3. 地域内外をつなぐハブの形成

地域内で課題が設定され、外部リソースが調達できたとしても、地域内にその推進体制がなければ、目標の達成は困難です。

・地域内で課題を設定し、担い手となる人材をサポートする。
・地域内で核となる人材を発掘し、外部のリソースとつないでいく。
・情勢を見極め、動かすべきものを動かすべきときに動かす。

中と外のいずれも把握し、それらをつなぐ役目もまた必要となります。

実際に、その名称は様々ですが、面白い取り組みを行っている地域には必ずと言っていいほどこういった役割を担う人材が存在します。

例えば、島根県益田市では市の社会教育課長が仕掛けたIターン者からなる中間支援組織がその役割を担い、「生き方のマッチング」を行っています。

全国10の地域で地域資源をプロデュースし、人と人をつなぐプラットフォームを展開するNext Commons Lab。事務局にコーディネーター人材が在籍し、地域資源の発掘と外部人材のマッチングを行っています。

日本社会が持続可能であるには、地域分散型を目指す必要があると、様々な研究で明らかになっています。今後ますますその傾向が強まっていく中、地域のハブを形成するコーディネーターという役割は、今後ますます全国各地に求められていくと思います。

最後にひとこと

うーん、書いているとやはり、副市長という役割を担ってみたかったなと思い起こされます(笑)。一方で、繰り返しになりますが、これらスキル・ノウハウは今回の件に限らず、あらゆる地域やあらゆる社会課題の現場で求められているものです。

コーディネーターに完成形はありません。どのようなコーディネーターになるかは人それぞれです。得意なところをのばし、苦手なところは多少補強し、自分らしいコーディネーターを引き続き目指していきたいと思います。

ちなみにRCFでは絶賛メンバーを募集中です!地域や社会分野でキャリアを築きたい方には力をつける機会になるかと思います。よろしければぜひ下記もご覧ください!


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