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チャート分類大全②~トレンドその1~



「トレンド」のチャート形状の分類

 今後何回かに分けてまとめようと思っているチャート分類シリーズだが、これは個人的な理念型のまとめである。
 したがって巷で語られているチャートパターンとも違うし、当然ながら古典的なダウ理論、クランビルの法則、エリオット波動論などとも異なるということをまず断っておく。

 また、ここで示すのは「理念型」なので、ある程度の普遍性があり、どこでも応用がきくものでなければならない。そのため一見よくわからない分類をしていることもあるだろう。

 今回は、トレンドの形状についてのまとめである。


エリオット波動とは正方形のような複数条件を満たす優等生

 そこで思い浮かべてほしいのが、小学校の算数で習った幾何学分野、図形の分類の仕方である。

 正方形
 菱形
 長方形
 平行四辺形
 台形
 四角形

 これらのいくつかの「四角形」の中で最も厳しい条件を満たす図形はどれだろう?

 無論、答えは「正方形」である。


 正方形とは、「4つの辺の長さが等しく、隣り合う辺が直交する四角形」のことであるが、別の言い方をすることもできる。

 「4辺の長さが等しい長方形」
 「対角線の長さが等しい菱形」
 「対角線の長さが等しくかつ対角線が直角に交わる平行四辺形」

 このような考え方がチャートの形状分類にも当てはまる。例えばトレードの書籍に頻繁に登場する「エリオット波動」というのはまさにここでいう「正方形」のような非常に厳格な要件を備えた形状だ。

エリオット波動


 言い換えると、完全なエリオット波動はめったに登場するものではない。それなのに多くのトレーダーは、この非常に珍しい形状を探そうとする。そしてしきりに「エリオット第3波を確認したら押し目で入って、エリオット第5波を取ろう!」みたいな曲芸級のトレードをやろうとする。そんなウルトラCが成功するはずがない。


 もっと卑近な、条件の緩い形状こそ探すべきなのだ。上の図形の例なら、まずは歪な四角形を探すこと。そうすれば、割りと頻繁にお目当ての形状に出会えるはずだ。



トレンドの形状

 以下、トレンドの形状について列挙していく。便宜的に上昇トレンドだけで説明するが、下落においてもまったく同じことが当てはまる。(為替において上昇トレンドと下落トレンドは鏡写しに過ぎないから。)

 繰り返すが、以下の名称や分類の方法は私が勝手に決めて勝手に使っているだけの個人的なものなので、ネットの情報や書籍の表現とは大きく異なっていると思われるので、注意されたし。



単純N波動

 私が「単純N波動」と呼ぶものがトレンドの基本形となる。あらゆるトレンドの基本形は単純N波動の形を形成し、この形こそが利益の源泉となることは間違いない。

 定義は「高値が切り上がり下値が切り上がっている波形」であること。

 これが最も基本的な上昇トレンドの形。上昇トレンドは、上昇→調整→上昇(高値更新)する様子が「N」を描いているように見えるので、N波動と呼ばれる。
この特性を最も端的に表現したのが「高値の切り上げ」かつ「下値の切り上げ」という要素である。この要素を含むチャート形状は非常に多く、ありとあらゆる上昇トレンドの波形が単純N波動に含まれる。

どこまでも伸びる単純N波動

 定義が非常に緩いので、当然エリオット推進波も単純N波動の一種と言える。包含関係で言えば、最も包括的な括りがこの単純N波動という類型である。



N1回3波動

 「上昇→調整→上昇」のようにN波動が1回現れてトレンドが終了した形。非常に短期的に終わったトレンドを指す。

 エリオット推進波(上昇5波動)はこのN1回3波動の後に、ネックライン(節目の価格)を割らずに、もう1回N波動が続いた形ということになる。つまり、エリオット推進波の出来損ないがこのN1回3波動である。

N1回3波動


ジリ上げ

一応「高値の切り上げ」と「下値の切り上げ」は継続しているものの、調整の幅が深く、ほとんど高値更新が見られない上昇の形
 ローソクが頻繁にMAに絡み、一応上昇の体裁は保っているがクソ相場の一種である。順張りなのに利益が伸びず、かといって途転しても勝てる訳ではない。非常に利益が出しにくい嫌な相場になることが多い。

典型的なジリ上げ相場

 ジリ上げの特徴として、トレンド方向への波動の伸びに対して、調整が大きく(上昇を打ち消してしまう)、それ故に高値更新幅が狭い。つまり、実際にポジションを持っていると、含み益が出たと思ったらすぐその含み益が消え、含み損に転じてしまうような非常にストレスの多い取引を体験することになる。

高値の更新幅がほとんどないジリ上げ



完全N波動

 単純N波動のうち、N1回3波動の最初の高値水準を次のN波動の安値が割らずに高値を更新する波形。

エリオット推進波に近いパターン

 単純N波動には、ジリ上げのようなクソ微妙な波動が存在する。これに対し、高値をどんどん更新していくイケてるトレンドを完全N波動と呼び、区別している。(ちなみに「完全N波動」という呼称は、麻雀における理想的な牌姿である「完全イーシャンテン」からパクっている。)


 大切なのは、規定天井(最初のI波動の高値)を次のN波動の安値(調整の下限)が下回らないということである。この条件を満たす波動は、非常に調子がよく、圧倒的に強い上昇トレンドである。



N2回5波動

 N1回3波動にさらにもう1回高値更新が続いた形状。

N2回5波動

 通常、高値更新をするたびに上昇の傾きがなだらかになり、更新幅も小さくなる。




エリオット推進波

 みなさんご存知のエリオット波動の前半部分を「エリオット推進波」と呼ぶ。当たり前だが、エリオット推進波はN2回5波動の一種である。

典型的なエリオット推進波
上昇5波にブレイクアウトを伴う

 エリオット推進波の良いところは、上昇第5波が大きく伸びる点である。
通常のトレンドは、高値更新をするたびに高値更新幅が小さくなっていくため、N2回5波動だと認識した時にはエントリーの機会がないか、期待がかなり低くなっているが、エリオット推進波は第4波からでも利益が出せるのだ。





不完全N波動

 完全N波動が「単純N波動のうち、N1回3波動の最初の高値水準を次のN波動の安値が割らずに高値を更新する波形」と定義されるなら、完全N波動の構成条件のひとつを欠くが、ほぼ完全N波動に近い形状を「不完全N波動」と呼んでも良いだろう。

 具体的には、「最初の高値水準を次のN波動の安値が割らず」の部分が欠けた完全N波動が不完全N波動である。
 第1波、第3波、第5波と継続的に高値更新するものの、調整波が規定下値を一時的に下回ってしまった完全N波動の亜種が不完全N波動なのだ。

実際には高値更新は継続しているため、十分な利益機会となるため、類型化しておく必要がある。

調整2波が125%戻したので厳密にはエリオット波動ではない




コンティニュエーションを挟む不完全N波動

 この形状は、途中にコンティニュエーション(=中段保ち合い)を挟むせいで、エリオット推進波の条件のいずれかを満たさなくなったために完全ではない完全N波動の亜種を指す。
 ゆえに、ほぼ完全N波動であったりほぼエリオット推進波と同じ形状である。

不完全N波動

 上図の場合、ほぼエリオット推進波のような形状であるが、中段に上昇フラッグが介在しているせいで、調整第4波が第1波の高値を割り込んでいるため、厳密には完全N波動ではない
 しかし、その一点に目を瞑れば、十分な上昇5波動であって、これをみすみす見逃すにはもったいない立派な上昇トレンドである。

 コンテニュエーションには、中段二点底や三角保ち合いなどが多い。



非エリオット型不完全N波動

 エリオット型ではない不完全N波動も存在する。

 例えば、以下で紹介する「nMA波動」の類型の中で、中段でひとつ前の高値の水準を次の深押しが下回ってしまうような場合が非エリオット型不完全N波動に相当する。

 無論これも、深押しが一時的にNの連続を崩したとしても、プライマリーでトレンドの勢いが優勢であれば、十分高値更新をしていくため、トレンドフォローを継続すべきである。
 そして完全なエリオット波動が現れる頻度が少ないということは、リアルな相場では、こういった典型的な類型以外の波形の方がよく現れるということを意味する。「非エリオット型不完全N波動」などというややこしい類型を想定する理由がここにある。(実際にめちゃくちゃよく出る。)





高騰波

 高騰を伴うトレンドを高騰波と呼ぶ。

 前回の相場の分類で「トレンド」、「調整波」、「不明」、「ショック」と分けたが、ここでいう「高騰波」は「ショック」に似ている。

 だが、ここでいう高騰波はトレンドの一種である。
 別に経済指標の影響によって、瞬間的に高騰や急落が現れるわけではなく、通常の相場のバイオリズムの中で出現する高騰をきっかけとする上昇トレンドが確かに存在する。

 形状の具体例を見てもらえば分かる通り、ブレイクアウトによって相場の均衡が崩れて、一方向的に動き始めた値動きを特に高騰波と呼んでいるに過ぎない。

典型的な高騰波
ブレイクアウトによる高騰波
高騰波自体よりその後の上昇が大きい場合



エリオット型

高騰→深押し→高値更新のような形状。エリオット推進波の第3波がブレイクアウトを伴って高騰波になった時に現れる。

エリオット型高騰波


 え?「わからない?」

そういう声が聞こえたような気がしたので、説明の画像を追加した。

エリオット波動の一種と捉える場合

 第4波が価格調整のみでどちらかというと第2波の調整の方が深い。第5波がエキスパンションになっていると評価してもよい。そして第5波まで到達したが、取引時間終了に近づいたことで、高値圏に張り付いたまま落ちて来ない。




逆L波動

高騰後、価格的な調整をほとんどせず、小さなレンジを作って滞留するような動きをL波動と呼んでいる。
時間経過とともに移動平均線を割るが、価格水準はほぼ同じでそのままトレンドに回帰していく上昇。
 アルファベットのLを逆向きにしたような形状が現れるため個人的に「逆L波動」と呼んでいる。(下落トレンドではL波動)

高騰→滞留→上昇





nMA波動

移動平均線に支えられるように推移する波動。非常に強いトレンドであり、高騰波でもエリオット波動的な動きでもない別個のカテゴリーに属する波形である。

 nには任意の期間パラメーターが入るが、代表的なものとして以下の3つを提示する。



3DMA波動

3DMAにサポートされながら推移する波動

 急激なI波動(スラスト)で調整がまったくない。3DMAを割るとトレンドが終了する。
 超短期的なトレンドながら利益率が非常に高い。

3DMA波動
下落の場合も同じ


 MAが「DMA」になっているので注意されたい。(DMAの解説は省略するが、MT5なら誰でも表示できるので、自分で調べてほしい。)




13SMA波動

 13SMAにサポートされながら推移する波動

 移動平均線までのバッファが広いので、小さな調整やヒゲなどの相場の揺らぎを吸収できる。そのため、長いトレンドになりやすい。

13SMA波動
下落の場合




25SMA波動

 25SMA、いわゆる中期移動平均線に支えられる波動。
 n=25というのがミソで、ボリンジャーバンドやエンベロープのMAの初期値がn=25であることが多く、他のインジケータとの相性が良い。

 移動平均線までのバッファがより広いため、深めの調整も捨象してトレンドとみなすことができる。
 時間的にも比較的規模の大きなトレンドになりがち。

25SMA波動
下落の場合





余談

 手前味噌になるが、無料noteでここまで体系的なチャート分類を見たことがない。(理解している人もいるだろうが公開している人は少ない。)

 「チャートの形状を分類すること自体には意味がない」、「チャートパターンを知ってもトレードでは勝てない」という面もあるだろうし、「自己流のパターン理解こそがトレード手法の真髄(だから隠す)」という面もあると思う。

 ただ、勝っている人の中に、あえて巷で流通しているエリオット波動のコピペのような役に立たない知識を流布して、初心者を混乱に陥れている者が何人もいること(そして泥沼にハマった情報弱者を別の課金システムに誘導している場合が非常に多いこと)に最近ようやく気づいた。

今回の記事も割りと本気で書いたので、誰かの役に立つことを願うぜ。



以上

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