トレンドラインは幻想、水平線は事実
トレンドラインは信じるな
MT5では、チャート上に任意で様々なオブジェクトを描くことができる。代表的なものでは水平線やトレンドラインがある。
この記事は、「トレンドラインより水平線(ホライゾン)の方が優れている」ということを主張することが目的である。
プロら初心者までみんなトレンドラインが大好きだ。おそらくあなたも一度はトレンドラインを引いたことがあるだろう。みんながトレンドラインを引いている。
トレンドラインに沿って(支えられて)チャートが動いたり、折り返したりした経験があるため、この任意で引いただけの線が値動きに意味を与えると信じている。だがここに重大な誤りがある。
トレンドラインには本来サポート機能やレジスタンスとしての機能はない。結果的にトレンドラインによってトレンドが推移しているように見えることもあるが、それは偶然に過ぎない。
トレンドラインが示すのは、「時間的な調整幅と価格的な調整幅の一定のリズム(規則性)が崩れた」ということだけである。
当然ながら、トレンドラインを割った後、深押しを経て大きくブレイクアウトすることもあるし、トレンドラインを割ったのにそのまま横ばいに突入することもある。
必ずしも「ローソクがトレンドラインを割ったらトレンドが終了する」ということを意味するものではない。チャートがトレンドラインを基に推移しているように感じるのは単なる幻想に過ぎない。
「そんなことはない!」
…と思う人もいるだろう。しかし、少なくとも私は、トレンドラインに水平線ほどの抵抗線や支持線としての機能はないと考えている。そして当然ながら水平線ほどの信頼性を見出していない。
信頼度でいうと「フィボナッチによる値幅予測と同じくらい」の精度なので、トレードにおいては「論理的根拠はないんだけど、それを信じている人が一定数いるからたまに当たる」というオカルトの一種だと思っている。
チャート上に引くのは水平線だけ
MT5のチャート上に引くオブジェクトは、水平線(ホライゾン)だけにするべきである。なぜかといえば、水平線にはサポレジの機能があるからである。
なお、この記事では改めて水平線の引き方についてのレクチャーはしない。水平線とはサポレジのことなので、当然レンジの下限または上限、そして大底や天井に引くだけである。
言わずもがなではあるが、サポレジ機能があるということは、「水平線は利食い目処や損切り目処として即有効なラインの役割を果たす」ということを意味する。
少し考えてみれば当然で、過去の安値や高値に引いた水平線は、過去の価格を示す。つまり、水平線は値動きの”事実”を示している。これは信頼に足る情報である。
これは、株価でも為替でも同じだが、「一度その価格をつけた」ということは、「その価格に至るまでの予約注文を一掃している」ことを意味する。
価格優先原則
あなたは、株価や為替の価格がどのように決定されているかきちんと説明できるだろうか?マーケットで価格が決まる際には「価格優先原則」が適用されている。
為替についても価格優先原則は妥当する。
例えば、ドル円が150円の値をつけた場合、既に148円の売り注文も149円の売り注文も約定させた上で150円に至ったということを意味する。(特定の価格に到達したのに、それより安い(高い)注文が残っていることはない)
重要なことは、価格が動いた時点でどんなに大口の注文であっても必ず決済されているということだ。つまり、短期的にはその価格帯には指値注文や逆指値注文がまったく存在しない状態(個人的に「一掃」と呼んでいる。)が生まれている。
裏を返せば、特定の価格でサポートされて反転するとか、抵抗に会って突き抜けられずに落とされたというのは、買い注文と売り注文の総和(売買の結果)であって、特定のラインで価格が止まった(サポレジ)なら、その価格にはまだ注文が残っているということである。
為替が「サポートされる」とか「抵抗(レジスタンス)に会う」という現象は、このように予約注文の数の違いによって論理的に説明できる。(成行を含め、市場参加者の注文を可視化したものがチャートであるとも言える)
為替滞留
明確な定義がある訳ではないが、為替において、同じような価格帯で何度か揉み合いを繰り返す箇所を「為替滞留」と呼んでいる。
これは、過去に頻繁に売買がなされた価格帯であることを意味し、予約注文が溜まっている価格帯でもある。一方でサポレジにもなるし、何らかのきっかけでここを抜ければブレイクに繋がる為替の淀みのようなものである。
レンジについて
以上のことを踏まえると、為替においてレンジが構成される理由がよく分かる。レンジとは、為替が特定の支持線や抵抗線の間でゆらゆらと漂っている相場ということになる。
まず重要なサポレジが存在し、その節目を超えられない期間が結果的にレンジに見えるのだ。なぜ節目となるサポレジを超えられないかというと、そこには新規成行注文の数より圧倒的多数の予約注文が残っているからである。
決済注文とIFD
為替取引では、ロングであろうとショートであろうと一度ポジションを持ったら、いつかは決済をしなければならない。新規注文には決済注文が必要である。つまり、損切りであれ利食いであれ、一つのポジションには必ず一つまたは二つの決済注文(損切りor利食い)が約束されている。
FXではレバレッジをきかせているため、いつまでも含み損を放置している訳にはいかない。含み損ならまだ実現損失はないが、為替にはスワップがあるため、流動ポジションをオーバーナイトして保有すると、金利差によってはスワップを支払わなければならない場合がある。
また不意の相場の高騰急落から証拠金を守るため、損失を限定する目的で通常はロスカット(決済逆指値)注文を入れておくものである。
このような理由から、FXにおいては、基本的にポジションを持ったと同時に決済逆指値を入れておくのが普通である。
MT4やMT5が使える証券会社では、予約注文と同時に決済注文を入れることができる「IFD注文」が可能である。つまり市場に新たに流動ポジションが生まれると同時に損切り注文と利食い注文の2つのオーダーが出されているようなものである。
では、決済注文や決済逆指値注文はどこに入れられるだろうか?
それは、当然サポレジとなる価格帯の周辺である。
直近の安値に損切り注文を入れる人もいれば、安値から少し距離をおいて損切りを置く人もいる。故に節目となるラインの付近ではスラストが抵抗に会ったり下落がサポートされたりするのだ。為替滞留が生まれる原因もレンジが構成される理由も、すべてはFXをはじめとする為替取引の予約注文に由来するという訳だ。
ブレイクについて
ブレイクとは新高値や新安値を「更新する動き」を指す。材料発表や大口の新規成行注文によって相場の均衡が崩れると、レンジブレイクが起こる。
一度ブレイクダウンやブレイクアウトが起こると、新たな価格帯に仕込まれていた予約注文が決済されるため、さらにバランスが崩れて価格が進行し、連鎖反応的に次々と予約注文が決済されていく。これが高騰波やスラストの正体である。
stop注文とIFD
MT4やMT5における注文には「成行」以外に2つの発注方法がある。stop注文とlimit注文である。
いみじくも自分のお金でFXをやっている人なら当然知っているだろうが、記事を書くにあたってこういう基本的なことを省略するべきではないので、あえて記載する。
①と②が株式取引などでもお馴染みの指値注文。現在値より有利な価格まで安くなったら買うという注文方法である。有利な価格でポジションを保有できるが、「下がったら買う」とか「上がったら売る」という注文なので、本質的には逆張りのエントリーである。
それに対して③と④がstop注文である。決済逆指値注文とも言われる。
不利な価格でしか約定しないため、通常は損切りに用いるが、戦術的にブレイクアウトに備えて節目に予約注文を入れて次なるトレンドを狙う場合などに使われる。「高いものを買う」「安いものを売る」注文なので、本質的には順張りエントリーである。
楽天証券をはじめとする国内証券会社では使えない発注方法なので、馴染みが薄いかもしれないが、MT4およびMT5では新規注文にも使える。
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以下有料とした理由は、個人的に「これを言語化できたことで飛躍的に相場と値動きの理解が進んだ」という私のトレードの中核的な部分だからである。別にこれを知ったからといって勝てる保証はない(手法ではない)が、無料で公開するにはもったいない情報なので、一見さんお断りの価格に設定している。
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