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#15 花の擬人化

風の丘ガーデンでの研修15日目。
今日の作業はまず、フレンチラベンダーを移動することから始まった。
全8つあるハウスは、それぞれが気温や湿度が違う。
それぞれの花の状況を鑑みて、移動させることもしばしば。

台車ギリギリまで鉢を詰め込み、丁寧に運んでいく。
この作業自体はさほど苦ではないのだが、フレンチラベンダーを運んでいるうちにあることに気づいた。

この花、よく見ると非常に不気味なのである。

不自然なまでに整列された花弁。
沢山の目が、一斉にこっちを見ているようだ。
若干、地球外生命体なのか疑うようなフォルムをしている。
ビームとか発射しそう。とにかく不気味。
ラベンダーの良い香りすら、こちらを油断させる武器なのかもしれない。
そんなことを考えながら移動させていた。

「そう言えば、好きな花は見つかった??」

恐怖心を出さぬよう努めながらフレンチラベンダーを運んでいる最中、同じ作業をしていたパートの女性から話しかけられた。私は一呼吸置いてから答えた。

「ラナンキュラスですね!」

ラナンキュラスとはこんな花である。

艶やかで、光沢のある花びらが特徴のこの花は、初めて見たときから私の心を奪った。
細くて華奢な茎も魅力的。
一言で表せば「エロい」。
とにかく、エロい花なのである。

推しの美少女を答えるかの如く勢い良く言い放った私にたいきて、パートの女性はこう言った。

「可愛いけど、この花の擬人化を想像すると、私は絶対に仲良くなれないと思う!」

花の擬人化…。
考えたこともなかった。
面白い試みだと思い、ラナンキュラスの擬人化を想像する。

おそらく白とピンクのワンピースを着ているだろう。
化粧品は全てデパコスで固められ、高そうなパンプスを履いてそうだ。きっと日傘も似合うだろう。
お昼ご飯はホテルのレストランかアフタヌーンティー。
好きな音楽家はショパン。性格は箱入りのお嬢様。

うん、だいぶキツい。
実は厳格な両親に隠れてパンクロック聴いてます!とか言い出すなら仲良くなれそうだが、現実問題として会話の接点すら発見できなさそうである。

自分で好きな花と言ったものの、いざ人間で例えるとあまり優美すぎない花の方が良いのかなーなんて思ったりもした。

ちなみに、どんな花なら仲良くなれそうですか?という質問に対して「パンジーかな」と答えたこの方は性格が純朴なのだろう。(勝手な偏見)

この後、色んな花を擬人化して妄想するという遊びを勝手に行っていたのだが、奴だけは想像できなかった。

フレンチラベンダーである。

何をどのように想像しても、頭の中に浮かぶのはバケモノなのである。目がたくさんあって、こっちを凝視する生き物。
鬼滅の刃に出てくる上弦の壱・黒死牟さんのようだ。

うん。怖くなるからもうやめよう。

ただ、花とか植物を擬人化するのは結構楽しかったのでおススメです。

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