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【香川#1】 ヒッチハイクで大切な場所へ 

突然ですが質問です。皆さんには、人生の転機となった場所はありますか?

私にはあります。それは、香川県さぬき市「讃岐津田」という小さな海辺の町。

この土地で過ごした1ヶ月での経験が、私を花の世界へと誘ってくれたと言っても過言ではありません。

今回は、再びこの土地を訪れて私の身に起こっているドタバタ喜劇を読者の皆様に共有したく、ノートを書くことにしました。

・初めての一人ヒッチハイク
・公道で運転中の軽トラックを壊す
・香川県随一の花農家と仲良くなる
・花農家さんの鶴の一声で、仕入れルートが確立
・夜通し黒猫と畑を追いかけっこ

などなど、ネタがつきません。旅が好きな方、人との出会いが好きな方、クスッと笑えるエピソードに触れたい、読んでくれると嬉しいです。

※昨年この土地を訪れて書いた記事があるので、ぜひ読んでいたければとても嬉しいです。

さて、今回この町を再び訪れるきっかけになったのは、とあるイベントに招待していただいたから。讃岐津田に本拠地を構える藍染職人さんが、自らの工房をギャラリーにして、藍染だけでなく木工、保田織、漆職人が各々の作品を展示するイベント「成りの音」。外ではマルシェも開催され、私はそこに花屋として出店させていただくことになったのです。
※詳細は文末に添付しています。

一年越しに叶った「面白い人たち」とのコラボイベント。心が躍らないわけがありません。2023年4月8〜9日の二日間で行われるイベントの準備のために、開催から3週間ほど早い3月19日に現地入りすることを決めました。

前日に京都で用事を済ませ、いざ香川にバスで移動しようと考えていた時、一つ疑問が浮かびました。

「自分にとって大切な場所に、簡単に移動できて良いのだろうか」

運賃は約4000円。この金額さえ払えば、5時間後には確実に目的に着きます。その確実性に疑問を持つこと自体が変なのですが、「旅する花屋」を謳っている以上、移動手段にもこだわりたいという欲が出てきました。ご縁を繋ぎながら、大切な場所を目指す。なんだか物語性があって素敵です。

そして、人生で初めて一人でヒッチハイクをすることに決めました。

乗せてくれた人たちへ贈る花束

高速道路の特定のSAでは、ウェルカムゲートと呼ばれる一般人が公道から入場できる入り口があります。私は滞在していた京都から一番近い吹田SAを選びました。まずは自由帳に「神戸方面」と大きく文字を書き、道路沿いに立ってボードを掲げます。

吹田SAにて



もちろん、周囲の方々からは見られるし、「うわ、ヒッチハイクやってるよ」と小声も微かに聞こえてきます。羞恥心に押しつぶされないように、むしろその感情を楽しむように、顔を赤らめながら口角を上げて待つ。すると、目の前に真っ白な高級車が泊まり、「お兄さん乗ってく!?」とイケメンな男性が窓から身を乗り出して声をかけてくれました。

「ありがとうございます!!!!!」

嬉しさのあまり、大声を出してしまいましたが、そんなこと気にならないくらい嬉しかったです。ヒッチハイク開始10分後の出来事でした。

後部座席には、生まれたばかりの赤ん坊と、美人な奥さんが乗車していました。「人生で一回はヒッチハイクの人を乗せたかった」と考えていた旦那さんが、「乗せちゃいなよ!」と軽やかに言った奥さんの一言で乗せることを決意。神戸まで乗せてくれました。

今回、乗せてくれた人には花をプレゼントすると決めていたので、降車する際にピンクのチューリップとバラを渡しました。「ありがとう!旅を楽しんでね!」と笑う二人の顔がとても素敵でした。

ただ、ここで問題が浮上。
高速道路を降りてしまったのです。

ヒッチハイクをやったことがある人なら共感してもらえると思いますが、高速道路より公道でのヒッチハイクの方が難易度が増します。さらに、目的地である香川県には淡路島を経由しなければならないため、もう一度高速に戻ることは必須条件。

「ただでさえヒッチハイクが難しい公道で、これから高速に乗って淡路島方面へ向かう車に乗せてもらう」

結果を先にお伝えすると、ヒッチハイク成功まで1時間もかかってしまいました。

京橋インター前にて

神戸駅から徒歩20分ほど歩くと、高速道路への入り口がありました。入り口付近は停車できないので、少し離れた信号付近の路地でスタート。当然ですが、車は泊まってくれません。

「これは長期戦を覚悟しなければならないな・・・」

最悪、ヒッチハイクを諦めることも視野に入れながら制限時間を1時間に設定。一台、また一台と過ぎていく車を眺めながら、もうダメかと心が折れかかったとき、なんと一台の車が停まってくれました。

「おい、兄ちゃん乗ってくか!!!???」

見た目がヤンチャな男性3人組でした。

助かった・・・。
と思う一方で、大丈夫かな?という一抹の不安もありました。
実際特に問題はなかったのですが、爆音で車内に流れるEDMに耳を劈かれながら過ごした約30分の乗車時間は、正直いうとあまり記憶がありません。淡路SAで降車し、お礼を言ってその場を離れると、明石海峡大橋と瀬戸内海の絶景が広がっていました。穏やかな風を浴びながらベンチに座ると、15分ほど身動きが取れなくなりました。サウナ後に外気浴に当たって昇天するのと似た感覚です。音と空間の広さの落差が激し過ぎたのでしょう。「ああ・・・」と、親が我が子を見守るミニ幼稚園のベンチで声を漏らす私の姿は、まるで疲れ果てた親父です。しかし、淡路SAまで来れたのは事実。本当に乗せてくれてありがとうございました。ナンパ成功を願っています。

明石大橋と瀬戸内海

さて、一息ついたところでヒッチハイクを再開。
ざっと目視でも300台ほど車が停まっていたので、「これだけ多かったら誰か乗せてくれるだろう」と鷹を潜ってしまいました。しかし、10分、20分と過ぎても中々乗せてくれません。後で気づいたことですが、四国方面のSAではあったものの、車のナンバーを見ると大半が「神戸」「大阪」と書かれていました。SAで休憩していたのは、日帰りで淡路島に観光に来た人たちばかりでした。

淡路SAにて

「これは長期戦を覚悟しなければならないな・・・」

本日二度目の覚悟を決めようとした瞬間、目の前の車の窓が開き、手を振られました。突然のことだったので、その手が自分に向いているとは思えずに呆然としていると、「送ってあげるよー!」と老夫婦とそのお孫さんが声をかけてくれました。
車のナンバーを見ると「愛媛」と表記されているではありませんか。「香川まで行ける!!」心の中でガッツポーズをし、再び場に合わないほどの大声でお礼と言って、車に乗車しました。

「周り関西ナンバーばっかやけん、苦労するやろうなって思ったら乗せたくなっちゃった」

と温かい言葉をかけてくださり、感無量。加えて、行き先を訪ねられたので「讃岐津田」ですと答えると、「高速降りて最終目的地まで送ってあげるよ」と言ってもらいました。感謝感激雨霰。ちなみに讃岐津田は高松駅から電車でも1時間ほどかかる離れた場所にある小さな町なので、直接送ってくれるのは本当に助かりました。可能な限りの感謝を伝え、愛想が良い高校生のお孫さんと勉強や進路の話をしつつ、あっという間に2時間の時はすぎ、ヒッチハイクからわずか5時間半後に目的地に到着してしまいました。希望の大学に受かるようにと願掛けて、ラナンキュラスとチューリップを贈りました。

一年ぶりに訪れた土地。久々に会う方々からは、来るのが早過ぎてびっくりした」と声をかけられ、町をサイクリングする余裕さえ生まれました。「おかえり」と言ってもらい、「ただいまです!」と返す。また一つ、帰る場所ができたなと実感した瞬間でした。

ただいま!讃岐津田!

ヒッチハイクが成功したことや、再開を喜び過すぎる自分。
「初めからうまくいき過ぎてるから、後々怖いっすね」と声をかけられても、
「大丈夫でしょ〜!」と軽く受け流す浮かれっぷりです。

翌日、公道で運転中の軽トラックがバッテリー切れを起こして止まるという大事件に見舞われるなんて思うわけもなく。

次回
「軽トラが壊れれば、花農家に出会える」

続きをお楽しみに。

最後まで読んでくださりありがとうございました!
このコラムでは、2023年4月8〜9日に藍染工房で開催されるイベント「成りの音」に出店に向けて香川県にやってきた花屋が、開催日までの日々で起こった出来事を綴ります。
もし、面白いと思ってくださったら、いいねを押してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いいたします。

【イベント詳細はこちら】


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