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何度でも荒野へ旅立つのだ


ゆるす】
日本語のユルスには「許す」以外にもう一つ、「赦す」があります。
これら二つの言葉は、時間の向かう先が違います。
「許す」はこれから行う行為を認めること、「赦す」はすでに行った行為の失敗を責めないことです。
(中略)
私たちはもう少し赦しあうべきです。
「赦し」のない中で育った子どもは、「許し」がないと何もできない子どもに育つことでしょう。
創造性は「許し」ではなく「赦し」から生まれると思います。

もりのこどもえんだより1月号より抜粋



とんかつ供養

前回バタバタしながら大阪へ帰って行ったテオ君。

その後、呆気に取られる展開となったのだ。
バカバカしすぎてnoteに書く気にもなれないので割愛するが、結論として彼とは終了した。
彼の取った行動に対して私が抱いた感情は怒りでも悲しみでもなく、憐憫だった。

「撃っていいのは撃たれる覚悟があるやつだけだ」という名言がある。
いつか彼は、自分の放った銃弾に撃たれる時が来るのだ。
気の毒だけれど、人生とはそういう風に出来ている。

最後に会った日、「夜にとんかつを食べよう」と約束していた。
でもそれは叶わなくなった。
だから私はとんかつを弔うことにしたのだ。

以前スタエフの配信「思うと夏木凛の角打ち」でも話したが、私は千切りキャベツが大の苦手である。

そこで今回は千切りキャベツ消費マシーンとして執事のマサキを連れて行った。



かつよし

人形町駅から徒歩3分の場所にひっそりと佇むお店。
看板が出ていないので初見では見逃す人も多いかもしれないひっそり具合。
食べログ百名店に選出されている名店である。

私はヒレカツ、マサキはロースカツをそれぞれ注文。

ヒレカツ150g 2,365円


ロースカツ200g 3,025円

ソース・梅塩・わさび醤油が用意されており、味変しながら楽しむことが出来る。

ヒレカツはアッサリしているのにパサつきが全く無いしっとり具合で、いくらでも食べられるんじゃないかと思うほど。
無限ヒレカツに認定したい。

一方、マサキから一切れもらったロースカツの脂は信じられないほどに甘くサラッとしている。
飲める脂。

+600円でご飯・味噌汁・お漬物が付く。
なおご飯とキャベツはお代わり自由なのでモリモリ食べよう。
私とマサキはそれぞれご飯を1杯ずつお代わりした。

ご主人と女将さんの笑顔が素敵で、何度でも通いたくなるとんかつの名店
ご馳走様でした。



OASIS BAR 人形町店

まだ時間も早かったので、人形町唯一のダーツ&ビリヤードバー「OASIS BAR」へ。
ビリヤード台とダーツの筐体がひとつずつの、小規模で騒がしすぎない大きさが心地良いお店

シンガポール・スリング


ビリヤードで9番ボールを狙いながらマサキが言う。

「これ入れたらチューしてくれる?」
「もしその穴に入れたら私の穴にも入れていいよ」
「うおおおおお」

結果、外した。
膝から崩れ落ちるマサキと爆笑する私。
そういうとこやぞ。



人を赦すということ

冒頭で「許す」と「赦す」の違いについて紹介した。
人に対して何かを許可するのは簡単だけれど、罪や過ちを犯した者を赦すのは容易ではない。

私にはたったひとりだけ、赦さないと決めている人間がいる。
その人のことを憎んだり恨んだりもしたが、今はそうした感情は一切ない。

ただ、罰を与えているのだ。

実の娘から一生赦してもらえない、という業を背負ったまま死んでもらう。
それだけのことをしてきた人間だから。

けれどそれ以外の人については、何をされても時が過ぎれば赦すことにしている。
一時的に感情が高ぶることはあっても、冷静になれば大したことはないからだ。

薄っぺらい悪意を持って接してきた人にも、きっと大切な家族がいたりするのだろう。
そして人は過ちを犯す生き物だ。
たった一度の失敗を責めて死に追いやる権限など、少なくとも私は持っていない。

だから君のことも赦す。



そしてまた荒野へ

帰り道、マサキが「手繋いでもいい?」と訊いてきた。
「いいよ」と返すと嬉しそうに笑う。

彼は得難い人材だ。
友達でも恋人でも家族でもないけれど、多分私のことを誰よりも理解している。

真夜中に連日電話を掛けても出てくれるし、逆に何週間放置していても「きっと凛ちゃんはいま幸せなんだなぁ」とそっとしておいてくれるのだ。
そして絶対に私のことを否定しない。

だから彼を執事と称している。
おふざけで言っているのではなく(勿論そうした側面もあるけど)これ以上に最適な言葉が見つからないのだ。

「凛ちゃんまたマッチングアプリ始めるの?」
「んー。ちょこっとやるかもだけど、今月下旬からオリンピック始まるし、その後パラリンピックもあるからなぁ」
「あー!一番忙しい時期だもんねw」

彼がいるからこそ、私はまた安心して荒野に旅立てる。
毒の沼にダメージを食らったり蟻地獄に引きずり込まれそうになりながら冒険を続けるのだろう。
あるかどうかも分からないお宝を探して。

そうしてボロボロになって酒場へ辿り着き、浴びるように酒を飲んでわんわん泣く私に、彼はこう言うのだ。

「大丈夫だよ。きっといい人が見つかるよ!」

何度でも、私は旅立つ。


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